No.115
カテゴリ:2巻完結
オススメ度9 ★★★★★★★★★☆
著者:うめざわしゅん
出版社: 小学館
発売日:2011/4/28
巻数:2巻完結
「人は善を為さなければならない、でなければ悪を」
心に刺さる漫画に出会うことはある。
ただ心を「えぐる」漫画にはそうそう会えない。
その数少ない漫画の一つだと思う。
それがこの「一匹と九十九匹と」です。
概 要
全2巻となっていますが、1話完結のオムニバス作品です。
収録作品は以下の6編。
「海の夜明けから真昼まで」
「オーバードーズ」
「ポップロンド」
「ガッコーの巣の上で」
「HOW TO GO(前後編)」
「機械に対する憤怒」
珠玉の短編集「ユートピアズ」から5年。
やっと刊行されたのがこの作品です。
「一匹と九十九匹と」と何か思わせぶりなタイトルでストーリー漫画かな?と思ってしまいますが、違います。
これは聖書の言葉からの引用。
「ユートピアズ」ではその発想の多彩さが目立ちましたが、本作では”人間”の本質を描いていきます。
前作にあったようなユーモアやシニカルな表現はなくなり、苦く、切なく、息苦しく。
この社会で「生きづらい」、そんな人たちが主人公となっています。
「ユートピアズ」の時にも触れましたが、きっと作者である、うめざわ先生もおそらく「生きづらい」人なのだと思います。
じゃないとこんな作品が描けるはずがない。
1巻は。
よくも悪くも、うめざわ作品集。
1巻に収録が「海の夜明けから真昼まで」から「HOW TO GO(前後編)」の5話。
2話目の「OVER DOSE」に出てくる小さなヤクザ、リトルピンキー。
リトルピンキーはその後シリーズ化して、この5年後(2016)「ピンキーは二度ベルを鳴らす」として刊行されます。
2巻はまるっと「機械に対する憤怒」の連作。
そして問題の2巻。
僕的には1巻と2巻はまるっきり評価が違います。
1巻は鬱テーマのオムニバス短編集。
この手の切り口の漫画も増えました。
今から読む人は「ふ〜ん、で?」となってしまうかもしれません。
なので!
2巻から読んでみてください。
もしくは2巻だけでもいいです。
もうこの1冊だけ別作品としてもいいんじゃないか?と思うほど。
これが!
こいつが心をえぐる。
この作品を読んで何も感じない人がいるはずない。
それほど訴える力のある話です。
感動、嫌悪、憤怒、焦燥、何でもいい。
きっと、何らかの感情を刺激するはず。
さて、評価は?
インパクトと、話の重さも考え【星9つ】。
あらすじは何も書きません。
読んでみてください。
ひょっとしたら…。
嫌な気持ちになるかもしれません。
その時はごめんなさい。
でも、こんな作品にはそうそう出会えない。
それは確信を持って言えます。
【その他のうめざわしゅん作品】
ピンキーは二度ベルを鳴らす
(2016)
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(2006)
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