No.192
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン/2巻完結
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆著者:榎本由美
出版社: ぶんか社
発売日:2015/12/3
巻数:2巻完結
「私は生まれちゃいけなかったの?」
最近、よくバナー広告で目にします。
「児童虐待」をテーマにした作品の数々。
その中でいくつか気になった作品をご紹介していきます。
まずはこの「児童養護施設の子どもたち」です。
あらすじ
お母さんに「いらない子」として扱われていた恵子ちゃん。
小学校に上がった日も御馳走などない。
それどころか、流しの生ごみをそっと口に入れるほど。
虐待の発覚を恐れた母は、恵子ちゃんを学校に行かせず、ついには自宅で監禁してしまう。
ある日、心配した担任の先生が家庭訪問に訪れる。
身体を縛られ、口をガムテープでふさがれた恵子ちゃん。
千載一遇のチャンスに、恵子ちゃんは母が縛り忘れた足を使って2階の窓を突き破って飛び降りる…。
この作品はフィクションです。
巻末のこの言葉に救われる。
じゃないとやってられない。
出てくる大人、親たち。
揃いも揃って糞すぎる。
とにかく腹が立ってしょうがない作品です。
この作品がどれほど実話ベースで描かれているのかわかりません。
著者の「あとがき」もなく、どれほどの取材が行われたのか不明。
これがリアルだとすると救いがなさすぎる。
これほど我が子に酷い仕打ちをできるものなのか?
否。
陳腐な言葉だけど、そうとしかコメントができない。
自分も子供持つ親として、どうしても共感ができない。
目を背けたくなるほどのシーンの連続。
物語は虐待されていて保護された恵子ちゃんの視点で進みます。
最初は自宅での虐待シーン。
次に児童養護施設に入所してからのいじめ。
猫を飼いたいがために施設を家出したり
里親候補のお家に預けられ、そして返されたり
「恵子ちゃんの体験記」の体で進みます。
これ、まるっきりフィクションなのか?
恵子ちゃんは実在の人物じゃないのか?
リアリティがありすぎてどっちかわかりません。
本当に読むのが辛くなってきます。。
さて、評価は?
全2巻。
恵子ちゃんのストーリーかと思いきや。
そればかりではありません。
まるっきり登場人物や、シチュエーションが変わった別エピソードが急に入ってきます。
同じ児童養護施設に入ってくる別の子のエピソード?
ということでもなく。
ストーリー上、なんの関係もないタイミングで挿入してきます。
これが、さらに実話の体験記の羅列のような雰囲気を醸し出しています。
しかも恵子ちゃんの行く末ははっきり分からず。
中途半端なところで終わってしまいます。
エピローグでもいいから、最後を描いて欲しかった。
恵子ちゃんが大人になって、幸せになった姿が見たかったな。
ということで【星6つ】とさせて頂きます。
社会派コミックのあり方とは?
本作は何を意図して描かれたものでしょうか?
社会派コミックと銘打っています。
虐待から子供を救いたい?
虐待の現状を世間に認知させたい?
これをどんな層が読むのか?
読んで己を省みることができるような人は、そもそも虐待などしないでしょう。
では、虐待などをしない人が読んで「この子かわいそう」「ウチはそうでなくてよかった」と胸を撫で下ろすのか?
それも違う。
問題提起にはなっても、これを読まされて、どうしたらいいのか?
虐待問題って。
自分にできることは限りなく何もないんだなぁ、と考えさせられてしまいます。
せめて自分の目の届く範囲の子どもたちには。
たっぷり愛情を注いでいきたいものです。
*この作品はKindle Unlimited無料で読めます。
【その他の榎本由美作品】
著者の榎本先生は30周年を迎えた大ベテラン。
最近の作品は、このような社会問題を提起するような作風を描いておられます。
作品数が多いので、他の作品が気になる方は先生のHPをチェックしてみてください。