Stand by me 描クえもん

No.281
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆
著者:佐藤秀峰
出版社: 佐藤漫画製作所
発売日:2017/4/1(1巻)
巻数:1巻以下続刊

「お前…漫画家目指すのやめろ」

自伝漫画キターーーー!!

「作品以外」で話題になることも多い漫画家・佐藤秀峰先生。

新人漫画家の目線で描かれるのは、漫画業界の闇。
まさに自伝とも取れる衝撃のフィクション。

それがこの「Stand by me 描クえもん」です。

あらすじ

「お前…漫画家目指すのやめろ」

「未来から来た自分」と名乗るおっさんに翻弄されながらも、漫画家を目指す青年・満賀描男(まんが かくお)。
夢へ突き進む描男を待ち受けるものは…!?

フェイク・ドキュメンタリー的手法で明かされる漫画業界の光と闇。


感 想
【パイオニア】=開拓者。先駆者。

まさに現代漫画界の開拓者と言っていいでしょう!

そのぶっちゃけすぎな言動で「扱いづらい作家」感が出ていることも。
でも、それこそが「開拓者」たる所以。

描く作品は毎回「ゾクリ」とさせてくれます。

今回も、当然ゾクゾク、ゾワゾワ!!

人間の心の闇や葛藤を描くのがうまい。
そしてリアルすぎる登場人物(笑)

佐藤先生、これフィクションですよね?


この作品はフィクションです。

満賀描男(まんが かくお)。
新人漫画家。
注)佐藤秀峰氏ではない。

おっさん。
未来から来た描男と名乗る。

功盛康夫。
「魚猿」の原作者!?
注)小森陽一氏ではない。

このネーミング。絶対悪意あるよね(苦笑)

「魚 猿」
満賀描男の初の連載。
新人の連載としては異例なほどヒットしていく。
注)「海猿」ではない。

しつこいようですが…。

フィクションです!


漫画業界の闇…?

業界の暗黙のルール。
まかり通る理不尽。

描いているのは自分なのに。
自分では何一つ自由にできない現実。

漫画のヒットと相反するように。
どんどんと心を削られていく主人公。

これは著者自身の経験なのか…。
それとも?


「漫画貧乏」も合わせて読むべし。

今作と合わせてぜひ読んでおきたい作品があります。

出版業界の矛盾と、漫画家のリアルを描いたコミックエッセイ。

漫画貧乏 全1巻
(2014)
*Kindleは無料で読めます。

物議をかもした作品です。

描いても描いても、原稿料では赤字続き…。

当時、すでに「海猿」「ブラックジャックによろしく」で大ヒットを飛ばしていたはずの著者。

そんなヒット漫画家が赤字なんて!??
嘘でしょ!!

と。

ぶっちゃけすぎな生々しい数字に愕然とします。

そして大ヒットした「海猿」をめぐる修羅場の数々。
原作者との軋轢。
映画化でのトラブル。

もう裏話がてんこ盛り。

ヤクザ…ではありません。
編集さん(笑)

そんなわけで。
現在、何かと「ややこしい先生」扱いされてる感のある著者。

でも、読めばわかります。

漫画業界の行く末を案じ、必死に挑戦し続けるその姿。

まさに開拓者だと思います。

これほど成功したのなら、もっと上手く立ち回ってもいいはず。
それができる地位を手にしたはず。

でも敢えてそうはせずに。

たった一人で漫画業界の矛盾に立ち向かう。

これは、本当にすごいです。

中々できる人はいません!!

いや、たった一人かも!?

僕も業種は違えど、クリエイト業に身を置いています。

「業界の慣習」に従わないこと。
「暗黙のルール」に異を唱えること。

それがどれほど大変で困難なことか。
多少なりとも知っているつもりです。

だからこそ、著者のブレない毅然とした振る舞いには尊敬の念を禁じえません。


さて、評価は?

今作は「漫画貧乏」で描かれてある自伝をフィクションに仕立てたようなストーリー展開。

漫画好きとしては、業界の裏を描く、あまりにギリギリなフィクション性に目を奪われがちですが。。

単純にエンターテイメント作品として面白い!

もちろん超オススメの【星8つ】です。

出版社:佐藤漫画製作所。

何気ないこのクレジットですが。

この表記に至る道のりには、著者の様々な努力と立ち向かった困難が隠れているはず。

その苦難の歴史。
どこまで「フィクションとして」描かれるのか。

出版社:漫画描男製作所。

この設立まで是非とも追っかけていきたい。


Amazonと訴訟へ!!

【9/12追記】

またも、佐藤先生頑張っておられます!

インターネット通販大手アマゾンジャパンの電子書籍読み放題サービスから、作品を一方的に削除され、得られる配当が減ったとして、「海猿」などで知られる漫画家の佐藤秀峰さんがアマゾン側に約2億円の賠償を求める訴えを起こした。東京地裁で11日、第1回口頭弁論があり、アマゾン側は争う姿勢を示した。(9/11 朝日新聞より)

昨年8月から始まったAmazonの読み放題サービス「キンドル アンリミテッド」。

僕たち利用者には本当にありがたいサービスとなるはずが…。

開始早々、あまりにもダウンロード数が多くなったために、人気作品が次々となくなる事態に。

「ダウンロード数」に応じて出版社側に利益を分配する契約だったんですね。

要するに。

Amazon「想定よりDL多すぎ!」
Amazon「金払えないわー!ヤベッ!」
Amazon「とりあえずアンリミから人気あるヤツ外しとけ」
出版社 「ちょ!話が違いますやん!」
Amazon「悪い!分配金の契約、変更してくれや」
佐藤氏「イヤです。」
Amazon「文句言うなや!うっせ!お前の本は削除な!!」

という流れ。

どう考えてもAmazonさんが悪い。

でも、ほとんどの出版社は理不尽だと思いつつも、付き合いがあるために言いたいことを飲み込んでるわけです。

そこに、声をあげたのが佐藤先生!

流石だわ!

今回の件に関しては、明らかにAmazon側の対応が横暴かと思われます。

ただ最初の細かい契約内容がどうだったのか。
想定以上のDLに対して、解除できるような一文があったのか?

今後の訴訟の行方にも大注目していきたい。

1巻から読む
(2017〜)

*この作品はKindle Unlimited無料で読めます。


【その他の佐藤秀峰作品】

漫画貧乏
(2014)

特攻の島 1〜8巻
(2013〜)

新ブラックジャックによろしく 全9巻
(2007〜2010)

ブラックジャックによろしく 全13巻
(2002〜2006)

海猿(完全版)
(1999〜2001)

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