唄う骨

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No.177
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン/1巻完結
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆

著者:戸田誠二
出版社: ぶんか社
発売日:2005/7/29
巻数:1巻完結

「姉さんの花は咲かないのよ」

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短編の名手、戸田誠二先生のグリム童話を題材にした短編集。
それがこの「唄う骨」です。

人間の暗い心の闇にスポットを当てた秀作となっています。

表紙から既にダーク。
いつもの戸田作品とは違ったテイストが味わえます。

概 要

収録作品は以下の5編。

「唄う骨」
「くすねた銅貨」
「ネズの木」
「アオカミ」
「灰かぶり姫は誰だ」

あらすじ

母を亡くし、幼い妹を託された姉・イーリス。
妹の為、イーリスはその身を売ってまで献身的に働く。

姉の愛情ですくすくと成長し、美しい娘へと成長した妹・ラウル。
やがて王子との結婚を条件にした「お触れ」が国中に出される。
「咲かない花を咲かせてみよ」

見事に花を咲かせた妹・ラウル。
その運命とは…。(唄う骨より)


感 想

グリム童話という古典を素材に、戸田先生が料理するとこうなります!
みたいな作品集。

各話にそれぞれアレンジが加えられ、一味違ったグリム童話になっています。

その独特のアプローチが面白い。

舞台設定は古典を崩さず。
登場人物たちが抱える悩みや葛藤を現代風にアレンジしています。


オリジナルとの相違点。

「唄う骨」
オリジナルでは兄弟。
それが姉妹へと。
「お触れ」の内容も違います。
結末は同じですが、姉の嫉妬による行動と懺悔の念が描かれています。

「くすねた銅貨」
銅貨を隠す動機が現代ドラマ風に。
幽霊になる子供と母親の関係が違う。
幽霊になるまでの経緯が細かく描かれています。
この話が一番切ない。

「ネズの木」
オリジナルは継母が兄を殺してしまうというかなり怖いお話。
救いのなさは同じですが、登場人物の設定がみんな違う。
幼馴染の二人の女性の確執ストーリーへ。

「アオカミ」
オリジナルはかの有名な「青髭」。
青髭がシリアルキラーなのは同じですが、細面のイケメンへ。
大体の結末は同じ。

「灰かぶり姫は誰だ」
灰かぶり=シンデレラ。
ホームドラマ風に。
継母、姉二人のキャラが斬新!
シンデレラより、姉1、姉2の行動に共感してしまう。
本作では一番戸田作品っぽい。


やっぱり怖いグリム童話。

ただ、やはり。

グリム童話という枠があるせいでしょうか。
従来の作品群と比べると、主人公たちの心理描写が強引なところも。

殺したり、殺されたりの、本当は怖いグリム童話。

いつもの温かい人間愛あふれるアプローチでは収まりきらない。
そこは致し方ないところかと。

グリム童話って残酷です…。

あとは、編集の意向でしょうか?

一話に必ず一回濡れ場を描いています。
これ必要かな?というシーンも。


さて、評価は?

結論。
戸田先生のアプローチは確かに面白い。

でも。

グリム童話にはミスマッチ。

もっとおどろおどろしい作風の方がグリム童話の怖さが引き立つかと。

好きな作品ではありますが、今回は【星6つ】で。

全1巻を読む
(2005)


【その他の戸田誠二作品】

女郎ぐも 日本ふしぎ草子
(2014)

戸田誠二作品集 グリム奇譚
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(2003)

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