No.91
カテゴリ:歴史/1巻完結
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆著者:沙村広明
出版社: 太田出版
発売日:2014/8/8
巻数:1巻完結
「ねえ!賭け事をしませんこと」
「無限の住人」の沙村広明先生の短編・歴史ロマン。
美しい表紙。
これだけだと美少女と寡黙な従者のいけない恋系か?
などと想像してしまいがちですが、違いますよ!
内容はもっとリアルでダーク。
あらすじ
車椅子の少女と物言わぬ従者。 互いの他に、信じるものなどない二人。
1933年、ソビエト連邦カレリア自治共和国。
とある別荘の管理人であるイリヤ・エヴゲーニヴィチ・ブイコフは、車椅子の少女・ビエールカと物言わぬ従者・シシェノークに出会い、奇妙な賭を申し込まれる。
なぜ彼らはこの地を訪れたのか?
どこからやってきたのか?
そして互いだけを頼りに生きる二人が背負う、密かな宿命とは――。
とある名家にまつわる、喪失と奪還の物語。
さて。
いつものごとく表紙買い。
帯には「戦慄の歴史ロマン!」の文字。
二人の男女の悲恋系を思わせる煽り文。
何の前情報も入れずに読みはじめました。
ロシアが舞台かーー。
ふむふむ…。登場人物の名前覚えづらいな…。
などと。
最初は時代設定だけを借りた架空の歴史ストーリーだと思ってました。
読み進めるとどうも違う。
本作はある程度の前情報を入れておいた方が良いかもしれません。
じゃないと、途中まで「???」が続きます!
「あの話か!」と気づいてからは「なるほど!」と入り込めました。
分かってから読み直すと、序盤に散りばめられた伏線に「おおお!」となります。
↓ここからネタバレあるよ↓
ネタバレ注意
要するに。
これは帝政ロシア、最後のロマノフ王朝のエピソード。
軽くでも背景を知っている方がわかりやすいです。
気になる方はちょいとググッてみてください。
いわゆる有名な歴史ミステリー。
映画、小説、漫画とあらゆるところでネタとされてきた題材の一つです。
本来なら、それなりの巻数で書かざるを得ないようなスケールのお話をギュっと短く。
必要なエッセンスのみ抽出して出来上がったお話です。
1巻にこれだけの内容をつめこみ、さらりと描いてしまうのはさすがの一言。
素晴らしい作品だと思います。
ハリウッドとかで映画化したら、さぞ見ごたえのある2時間になるんじゃなかろうかと。
歴史ロマン、歴史ミステリーが好きな方には最高の一冊になるはず。
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