結んで放して

No.303
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆
著者:山名沢湖
出版社: 双葉社
発売日:2016/11/28
巻数:1巻完結

「会えて嬉しい そしてさびしい」

漫画家を描く漫画。
最近ぐっと増えた気がします。

本作もそんな一つ。

これはフィクションかノンフィクションか!?

同人誌の世界を舞台に、人生の岐路に立つ女性作家たちの姿を描いたオムニバスストーリー。

それがこの「結んで放して」です。

概 要

収録作品は以下の4編。

1. 結んで放して
2. 映して描いて
3. 叫んで笑って
4. 放して巡って


感 想
静かに染みる。

そんな紹介文がしっくりきます。

派手な作品ではありません。

この作品に出てくる漫画を描く人たち。
静かで非常にリアル。

趣味から仕事になった人。
趣味で終わった人。

生活がある。
将来がある。

やめたい。
やめたくない。

悩み葛藤するその姿。
「漫画を作る」ということに情熱を傾けるその姿。

好きなことを続ける。
その素晴らしさと、難しさ。

それが女性漫画家たちの目線で絶妙なバランスで描かれています。

うん、ひっそりと面白い。


あらすじ&1カット

1. 結んで放して

プロの漫画家となって8年目の千畝。
心の中でくすぶり続ける、同人時代の憧憬、情熱、そこにあった原点。
そんなある日、同人時代の憧れの先輩ルリに偶然再会する。
しかしルリはもう漫画を描いておらず…。

2. 映して描いて

章とそよぎの漫画家カップル。
硬派な漫画を描いていた章。
ある時、自分をモデルに少女のイラストを描くことに目覚める。
それが予想以上に好評となり、そよぎが章の写真を撮流という制作スタイルにのめり込んでいくが…。

3. 叫んで笑って

同人即売会のたびに「やめる」を繰り返す由加。
もはや誰も信じないほどの恒例行事。
しかしある日、同人仲間の架月にかかってきた電話は「やめたくない」だった…。

4. 放して巡って

1話で出てきたルリのその後の話。
高校で漫画作りに出会い、同人活動にのめりこんだルリ。
やがて社会人となり、主婦となり、気づけば漫画作りをやめていた。
そんな時に昔の同人仲間が家に現れる…。


さて、評価は?

作画は綺麗ですが、やや淡白。
すっきりとしすぎな気も。

同じ顔になりがちな絵柄ですが、キャラの描き分けはしっかりとして読みやすい。

そして何よりも。
フィクションでありながら著者の経験談を上乗せしているかのようなリアリティ。

それがいい!

今作は漫画制作をテーマにしていますが、同人活動や漫画制作に詳しくなくても十分に楽しめます。

描いているのは、あくまでも「作り手としての精神性」です。

テーマが漫画から音楽になろうと。
スポーツや芸能になろうと。

「夢を追う」ということに普遍的に付いて回る精神性。
憧れと理想と現実のせめぎ合いです。

どんな職種の方であろうと。
何かを目指したことがある人なら、共感してしまうところがきっとあるはず。

ということで。
静かに心に染みる【星6つ】でオススメです。

さらりと読める1巻完結の良作です。

全1巻を読む
(2016)


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