ヴラド・ドラクラ

No.400
カテゴリ:歴史
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆
著者:大窪 晶与
出版社: KADOKAWA / エンターブレイン
発売日:2018/2/15(1巻)
巻数:1巻以下続刊

「怒らせてはならない方を怒らせてしまった…!」

本格的な歴史漫画の登場です。

「ヴラド・ツェペシュ」という名をご存知でしょうか?

ううん? と思った方。

では「ドラキュラ」ならいかがですか?

そう! 誰もが知っているその名前。

怪物「ドラキュラ」のモデルとされています。
“串刺し公”の異名をとったヴラドⅢ世の生涯を描きます。

それがこの「ヴラド・ドラクラ」です。

あらすじ

残虐の暴君か、国を護りし英雄か――。

15世紀中期。
ふたつの強国に挟まれた小国・ワラキア(現・南ルーマニア)にひとりの若き公が戴冠する。
その名は、ヴラド三世。
ヴラドは故国・ワラキアを護るため、その才を発揮していく――。

“串刺し公”の異名を取り、ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』のモデルとなったヴラド三世。
その実の姿に迫る、歴史ロマン。


感 想

これは、面白い。

ヴラド・ツェペシュという名前を知ったのはいつ頃だったか…?

「世界の残虐物語」とか。
「血塗られた史実」とか。

そんなタイトルの怖い歴史上の人物を紹介した本で読んだ記憶があります。

“串刺し公” ヴラド・ツェペシュ。

冷酷で残虐で猟奇的な君主。

こんなイメージを長年持っていました。

そして「ドラキュラ」のモデルになったということ。

この肖像画は有名ですね。

僕と同じように。
ヴラド・ツェペシュを少〜し知ってるくらいの方々。

断言できます。

180度、見方が変わります!

持っていたイメージとは懸け離れたその姿。

理知的で戦略家で思慮深い。
民衆を大切にし、義理堅い。

えええええ??
なにこれ?
空想のファンタジーですか???

いえいえ、違うんです。

読んだ後に、調べてみました。

有名な「串刺し」のエピソードは事実ですが、残虐すぎる猟奇的なエピソードの数々、実は敵方のプロパガンダ(つまりデマ)を基にした逸話がかなりあるようです。

そして近年では、故国を侵略から守るために戦った英雄として再評価されているんです。

マジか!

ドラクラな人たち。

ヴラドⅢ世。
ワラキア公国君主。
幼少の頃オスマン帝国の人質として過ごす。
25歳の若さで君主となる。

シュテファン。
ヴラドのいとこ。ワラキアに亡命している。
後にヴラドの援助を受けモルダヴィア大公と成る。

アルブ。
国土の3分の1を所有する大貴族。
ヴラドと対立する。

コンスタンティン。
ストイカ家の次男。
家督相続のさいにヴラドの後押しを受ける。
以後、ヴラドの忠実な臣下として暗躍する。


2大国の狭間で。

以前にも書きました。

歴史漫画はその背景をサクッと勉強してから読むと、なお面白さが増します。

本作は15世紀のワラキア公国(現ルーマニア)が舞台です。

当時のワラキアは西にハンガリー王国、南にオスマン帝国と。

巨大な二大国に挟まれた小国でした。

それゆえキリスト教とイスラム教という異なる宗教の境目、緩衝地帯でもあり、両サイドから常に政治的干渉や軍事的衝突が行われる地域でした。

大国の情勢に左右され、統治が困難。
よって君主の代替わりも激しい。

その数、1世紀で32人。

一人の在位期間が平均たった3年です!

そのため。

君主の権威は地に落ち、代わって貴族が台頭します。

ヴラドが即位した頃には、君主とは名ばかりの存在へ。

ちょっとでも勝手なことをすれば….。

まさに四面楚歌。

周りはすべて大貴族の息のかかった敵だらけ。

1巻では、そんな貴族が牛耳るワラキア公国で、即位したばかりのヴラドが、中央集権を進めていく姿を描きます。

この過程が面白い。

暗殺などが頻繁に行われていた時代です。
無闇にバッタバッタ殺していくのかと思いきや。

知略、駆け引き、根回し、懐柔。

傀儡を演じながら、静かに次々と先手を打っていくヴラドのクレバーさが、最高にかっこいい。


そして狂気は生まれる。

次々と中央集権の手を打つヴラド。

やがて貴族達は大貴族アルブを中心に、目に見えてヴラドと対立していきます。

議会ではことごとくヴラドに反対し、そしてついには、ヴラドを幽閉しようとする動きまで。

水面下で事を進めていたヴラドですが…。

これにはさすがに。

キレます。

反逆を企てた貴族を容赦なく処刑します。

引き返せない一線を越えてしまう。

狂気が生まれた瞬間です。

でも、実はあえて反逆を起こすように仕向けていた!?

これから貴族達との激しい権力闘争が始まっていく様相を呈し、次巻へ続く。

おそらく、2巻ではガッツリ血が流れるに違いない。


さて、評価は?

ヴラド・ツェペシュを描いた漫画作品は、おそらく初めてではないかと思われます。

まず、その着眼点が素晴らしい。

ちなみにヴラド・ツェペシュの「ツェペシュ」は苗字ではありません。

ツェペシュ=「串刺しにする者」

つまり「串刺し公・ヴラド」という意味。

これほどの異名をとるに至ったのは何故か?
どのようにヴラドが狂気に染まってゆくのか?

それが今後の見どころかと。

最近読んだ歴史漫画の中では、イチオシ!の【星8つ】です。

これは、期待できそう。

結末まで追っかけようと思います。

1巻から読む
(2018〜)

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