インコンニウスの城砦

No.250
カテゴリ:ファンタジー
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆
著者:野村亮馬
出版社: Amazon
発売日:2017/1/1
巻数:1巻完結

「諸君!戦の時間だ!!」

SFとファンタジーと戦争と童話を足したような。
なんとも不思議で奇妙なバランス。

読んだら、別世界に連れて行かれます。

それがこの「インコンニウスの城砦」です。

あらすじ

氷河期を迎えようとする星。
科学と魔術が拮抗する世界。

北半球と南半球に分かれ、温暖な赤道付近をめぐって争いを続けていた。

少年カロは南半球の密偵として北球軍の「56号移動城砦」へと赴く。


感 想
独特すぎるタッチ。
絵と空気で読ませます。

そう、作画というより絵なんです。

トーンを多用せず、ペンの陰影だけで表現します。

キャラクター、背景、武器のデザイン。

決して緻密な作画ではない。
なのに。
海外のアート漫画・バンドデシネをぐっとゆるくしたような。

そんな不思議な手書きの魅力があります。

その作画で描き出すお話は…。
静かで、そして重い。

沈みゆく終わり行く世界のお話。

その哀愁たるや。
枯れっ枯れです。


城砦の人たち。

カロ。
少年兵。南半球の密偵として北半球の城砦に潜入する。

ニネット。
カロのお目付け役の優秀な女兵士。

サグマ。
カロが配属された作業場の上司。
カロのことを気遣う。

インコンニウス将軍
北球軍の指導者。


城砦の世界観。

中世ヨーロッパのような街並み。
城壁で囲まれた石造りの都市。

氷河期という設定のため、ずっと風景が寒々しい。

外のシーンでは雪が降っていたり、息が白かったり。


造語が多数。

兵器に魔法のようなものが使われていたり。

人間ではない協力者が出てきたり。

謎の単語、この世界で使う造語の数々。

こういうのが多数出てきます。。
それの細かい説明もないまま話は続いていきます。

丁寧なファンタジーではありません。

いちいち気にしてると進まないのでその辺はスルー。


城砦と戦略巨像。

南半球と北半球の争いは、軍と軍のぶつかり合いではありません。
お互いに大きな兵器をぶつけ合います。

その、相手の新型兵器の情報を得ようと、お互いに密偵を出し探り合うという図式。

戦略巨像(ゴレム)。
南球軍。
神人が魔法で作る。自律型ロボットのようなもの。

移動城砦。
北球軍。
移動する有人のロボットのような兵器。
動力釜と呼ばれる魔術を閉じ込めたものを使って動く。


裏切り者は誰か!?

ネタばれになるので詳しくは書けません。

でも。

可愛い絵には似つかわしくない、重たい結末です。

大きな裏切りがどんでん返しとして用意されています。

そして。。
誰も救われない。

戦争の虚しさと救われなさを、ひっそりと読後に残してゆきます。


さて、評価は?

今作の「インコンニウスの城砦」は自主制作。
AmazonのKindleのみでの販売。

ということで。
すべて著者が一人で描いているのかもしれません。

商業誌で連載していた「ベントラーベントラー」の時と比べると、作画は荒くなった印象。

ただその分、独自のタッチが色濃く出ています。

中世的な今作の世界観にはとてもよくマッチしています。

今作のみあえてこのような描き方をしているのか。
それともタッチを変えたのか?

それは次回作を読んで確かめたいところ。

この著者の描く、作画の肌触りが好きです。

大きく盛り上がるわけではありませんが、1巻完結、静かで深い作品。
【星6つ】でオススメです。

全1巻を読む
(2017)

*この作品はKindle Unlimited無料で読めます。


【その他の野村亮馬作品】

キヌ六 全2巻
(2014)

ベントラーベントラー 全3巻
(2009〜2010)

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