ブタイゼミ

No.257
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン
オススメ度9 ★★★★★★★★★☆
著者:みかわ絵子
出版社: 講談社
発売日:2017/3/7(1巻)
巻数:1巻以下続刊

「嘘をつくために 命を削る人がいたなんて」

演劇漫画キターーーー!!

これは嬉しい!
とにもかくにも読んでおかねば。

舞台演劇の世界を熱く描いたこの作品。
それがこの「ブタイゼミ」です。

あらすじ

感情をどこかに無くしてしまった青年・千石今日太。
ティッシュ配りをする毎日。

ある日、バイト中に舞台女優を名乗る如月今日子にスカウトされる。

その場で「蝉の演技」をして見せた今日子に惹かれ、今日太は劇団「ブタイゼミ」の門を叩くが…。


感 想

どうしよう。

定番のセリフ、使ってしまってもいいですか?

「このマンガがすごい!」

僕が演劇好きということを差し引いても。

めっちゃ面白いです!

演劇に出会った一人の青年の物語。

感情を殺してしまっていた彼の心の枷が、演技をすることで外れていく。

そして彼の才能を引き出す、若き天才女優。

もうこの設定が美味しすぎ。

舞台演劇にかけた若者たち。
命を燃やすように情熱的に生きるその姿。

久々に心を熱くさせてくれる漫画です。


ブタイゼミな人たち。

千石今日太。
感情を殺して生きてきた青年。
ティッシュ配りをしている時に今日子に劇団へスカウトされる。
演技に対して非凡な才能を発揮していく。

如月今日子。
劇団「ブタイゼミ」の看板女優。
命を削るように演技をする。
過去に何か理由がある様子。

西尾良久。
劇団「ブタイゼミ」の主演男優。
演技に対して恐ろしいほどストイック。
素人のはずの今日太の才能を見抜き、ライバル視する。


セミの命は短い。

この作品のテーマに「時間」というものがあります。

「ブタイゼミ」は本作に出てくる劇団の名前ではありますが、これが単にタイトルになったわけではないことは明白。

ブタイゼミ=舞台の蝉。

1話目の1コマ目も路上に転がった蝉の絵から始まります。

バイト中の今日太に先輩が話しかけます。

「たかだか一週間鳴き喚くだけでくだらない生き物だ」

非常に象徴的なシーンです。

そして。

今日子が路上で今日太を劇団に誘うシーン。

ここに本作のテーマが込められています。

「限られた時間」でどのように命を燃やすのか。

きっとこれから。
熱く太く短いドラマを見せてくれるはず。


演技が見どころ。

この作品の魅力は何と言っても演技シーン。

「演技をしている人間」の描き方が抜群にいい!

熱く、濃ゆい!

こっち方面は大好きだ!!

「この人は天才だ」と言ってしまえば、そうなってしまうのが漫画ではあります。

でもその「天才っぷり」を表現してもらわないと、読んでる方も納得できないわけです。

そうなると、やはり。
この「演技シーン」が嘘くさいと物語にのめり込めません。

みなさん。
舞台演劇って見たことがありますか?

大きな劇場ではなく。

マイクではなく、肉声のみで表現するお芝居。

役者の息づかいが聞こえ。
飛び散った汗がかかりそうなほどの距離感。

一度でもそんな「芝居小屋」で演劇を見たことがある方なら。

このブタイゼミで描かれている演技シーンが大げさではないと分かるはず。

他人のお墓で泣く練習とか。
それを必死でメモするとか。
こんな練習方法、頭おかしいやん!

て思うでしょ。

でも。
舞台で演じるっていうのはこれほど「熱」がいるものです。

僕も若かりし頃、舞台に情熱を注ぎました。

確かに「頭おかしいやん!」って人(いい意味で)。
いっぱいいました(笑)

そういう意味では。。

著者の「演技をしている人間」の情熱の描き方。
これは十分に納得させてくれるものです。


さて、評価は?

とにかく作画に込められた熱量がすごい。

少し濃いめの荒いタッチではありますが、この熱い青春譚に見事にマッチしています。

ストーリーと絵の力にぐいぐいと引き込まれます。

あっという間に1巻読破。

これは読まなきゃ損だよ!の【星9つ】でオススメ。

ヒロイン今日子の過去には謎がある様子。
その「理由」を語らず2巻への引き。

これは続きが気になります。

次巻も期待大。

またまた楽しみな作品が増えてしまいました!


2巻を読みました。

(2017.10.6)

【10/7追記】

なんと、完結です!

2017年度スタート作品として、一番注目していたこの作品。

2巻で完結を迎えてしまいました。

今日子の過去の謎。

今日太と今日子の過去の因縁。

きっちりと1巻でまいた伏線を回収。
綺麗に物語を終えました。

見所は「ブタイゼミ」他、4劇団がしのぎを削る「タケトミ演劇祭」。

なにやら今日子の過去と因縁のありそうな演劇祭の主催者タケトミ氏。

さらにライバルとなりそうな他劇団の演出家、看板役者も。

面白いファクターが揃い始めます。

濃いキャラの出揃ったところで、物語のさらなる深化が欲しかったのですが…。

残念、ここまで。

せっかくキャラを揃えたのに、使いきらずに終わって不完全燃焼気味。

クライマックスは「演劇祭」での「ブタイゼミ」の公演。

1巻と同じ手法が使われ、正直、インパクトが薄れてしまったのは否めない。

もう一つ、何か舞台の奇跡を表すギミックが欲しかった。

さらに言えば「ブタイゼミ」の公演と比する、他劇団の公演シーンが欲しかったところ。

う〜〜ん…。

本音を言えば。
もっと、続けて欲しかった。

第一幕が終わり、波乱の第二幕が開ける。

そんな展開を期待していたのですが、最後はあっさり。

とはいえ。
2巻完結作品としては、きっちり。

中身も濃いい。

初連載でこの内容はすごいです。

次回作に期待したい!

1巻から読む
(2017〜)

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