血と灰の女王

No.371
カテゴリ:ダークファンタジー
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆
著者:バコハジメ
出版社: 小学館
発売日:2017/5/12(1巻)
巻数:1〜3巻以下続刊

「誰かを、殺してやりたいと思った」

一時期、電子書籍の広告で出ていました。

気になってはいたものの。

その荒削りな作画と、ありがちなダークホラーっぽい作風に、様子見をしていた本作。

そんなある日。

1巻があと1000冊売れなければ、打ち切りです!

なんとも著者の悲壮なメッセージが公開されました。

別の意味で興味を持った本作。

それがこの「血と灰の女王」です。

あらすじ

富士山が噴火して以来、日本の、そしてこの街の夜が一変した――
火山灰をかぶった一部の人間達は驚異的な力を誇る闘争型ヴァンパイアとなる。
トップに立った者は全世界を支配するルールの中で、血で血を洗う殺し合いが始まる。


感 想

小学館の『マンガワン』にて連載中の本作。
いわゆる「無料で読める漫画」の一つ。

その中でもDL数は常に上位を誇り、人気作の一つと言えるはず。

3巻が出ようとしている9月某日、著者のメセージが掲載されます。

最近、SNSで著者自体が宣伝活動をすることが増えてきています。

これもその一環とも言えなくもない。

商業作品という以上、売れなければ打ち切り。
それもわかります。

でもね。

作者が「あと1000冊買って」なんて言うのは、違うと思います。

地下アイドルが「1000枚CD売れないと解散なんですぅ!」
ってやってるのと同じ。

思いっきり冷めます。

編集「1巻があと1000冊売れないと、打ち切っちゃうから(笑)」

はぁ?

編集が上から目線で著者に言い放ち、プレッシャーをかけている姿が目に浮かぶようです。

もう一度言います。

閲覧のDL数は決して悪くない。
人気作です。
Kindleもそれなりに売れている。

でも、紙の本は売れてない。

じゃ、どうすればいいのか?

その売り方を考えるのが出版サイドの人たちです。
編集、営業、マネジメントサイドの仕事。

作者は面白いお話を考えて描くのが仕事。
その作品を生み出せる作者はたった一人。
著者しかいないんです。

その著者に「打ち切り」というカードをちらつかせ。
あまつさえ、それをメッセージとして書かせ載せてしまう。

あまりに安っぽい。
編集「おい著者、必死な感じでお願いメッセージでも書いとけよ(笑)」

あ゛ぁん(怒)?

読者をバカにしているのかと言いたい。

3巻を超え、せっかく物語も勢いが出始めたところ。

炎上商法よろしく、話題性だけで売らんとする手法はよろしくない。

皆さんは、どう思いますか?


血と灰な人たち。

佐神 善(さがみ ぜん)。
絵の好きな大人しい高校生。
火山灰を浴び吸血鬼となる。

吸血鬼に変身後。

ドミノ。
数千年生きているヴァンパイア。
「世界の王」となる次の後継者争いに名乗りを挙げる。
善に仲間になりよう強制する。

狩野京児。
善の殺された親友・京介の兄。
電気を操る能力の吸血鬼。
サイコパスで戦闘狂。

吸血鬼に変身後。


血と灰の世界。

「閲覧注意のダークホラー」と銘打った本作。

その内容はありがちなダーク・バトルファンタジー。

ある日、富士山が爆発し、その火山灰が降り注ぎます。

その火山灰を浴びたものの中から化け物、「吸血鬼」に変化する者が出てきます。

こんな感じに。

富士山の噴火は戦いの狼煙。
吸血鬼同士の王を決める戦いです。

吸血鬼同士が戦い、勝ち残った者が、世界を支配する王となります。

火山灰が降って、吸血鬼。

だから「血と灰の女王」なんですね。

そして、この女王とは主人公を導き、仲間に引き入れた吸血鬼、ドミノちゃんのことなんです。

で、桁違いに強い。

善はこの王を決める吸血鬼同士の争いに、嫌嫌ながらも巻き込まれていくという展開。


ホラーか?バトルか?

連載当初は、グロ要素を多めに、ホラー色を強く出していました。

吸血鬼の強さ、残忍さを演出するためなのでしょうか?
必要以上に惨殺シーンを陰惨に描いたり。

そして、何度も猫の解体シーンが出てきます。
これには辟易としてしまいました。

どうもそのグロ路線があまりウケなかったようで。

だんだんと少年誌的なバトル漫画に方向転換していきます。

吸血鬼それぞれに特性、違った能力があり。
その能力を駆使して勝利していくという展開。

まだバトル数はそんなに多くなく、能力も数多ある能力バトル漫画に比べれば、取り立てて目立つようなアイデアもなし。

ホラーなのか?バトルなのか?

作品として、見せ方が定まっていない気がします。

そのため、構成がアンバランスだったり、心理描写のつながりが理解できなかったりと。

どうにも荒削りな印象です。

ですが。

その著者のもがいている感じそのままに。
主人公自体が吸血鬼になりたてで、必死にもがく姿に惹かれます。

2、3巻と進むにつれ、完全にバトル漫画に舵を切った本作。

そこから俄然面白くなってきました。


さて、評価は?

今、右肩上がりで面白くなってます。
展開もスピーディーで飽きさせない。

多少強引なところもありますが、バトル漫画と考えると、さもありなん。
これから期待大!という作品だったのですが…。

そこへ今回の打ち切り騒動。

Amazonのレビューを覗くと。
ファンの人たちの必死のコメントが多数です。

「打ち切り回避にみんな買おうぜ!」みたいな。
内容に比して大げさに持ち上げたコメントも多い。

なんだかな。

違うんだよな。

盛り上げ方が。

関西には「店じまいセール」を何年も続ける店がたくさんあります。
それに慣れている関西人としては。

これも「打ち切りセール」にしか見えない。
売れなきゃ、本当に切るの?
やってみ(笑)

そもそも、無料閲覧可能の漫画サイトでの人気作を「紙の本が売れない」という理由で切るなら、サイトの収益システムの問題という気がします。

打ち切り回避の1000冊。
電子書籍はカウントされない模様。

あくまで「紙の本」。

電子書籍の売り上げに比して、紙の本が売れていないのは、この作品だけでなく、すべての出版社が抱えている課題です。

それは時代の流れと言ってもいいでしょう。

僕も年間数百冊は買っていた漫画本が、ここ数年は9割が電子書籍。

最初から紙の書籍で集めていた作品を除いては、新刊などほぼ電子書籍です。

物理的に場所をとりますからね。
もう「はじめの一歩」なんて、どれだけ場所とるねん!って話ですよ(笑)

作品にとっては話題になることは良いことです。
でも悪目立ちまでする必要はない。

漫画は漫画の内容で勝負していただきたい。

物語に勢いがついてきています。
面白くなってきてるぞ!の【星6つ】

次巻の発売タイミングでも「打ち切りセール」が行われるのか?

今はそこに注目しています(笑)

1巻から読む
(2017〜)

『マンガワン』で試し読みできます
➡︎こちらから

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