異世界の色彩 ラヴクラフト傑作集

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No.138
カテゴリ:ホラー/SF/1巻完結
オススメ度10 ★★★★★★★★★★

著者:田辺剛
出版社: KADOKAWA/エンターブレイン
発売日:2015/9/26
巻数:1巻完結(シリーズは3集あり)

「水の底に沈んでしまったほうがいい…」

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宇宙的恐怖(コズミックホラー)の小説家であり、クトゥルフ神話の創始者のH・P・ラヴクラフト。
その恐るべき画力で田辺剛先生がコミカライズするシリーズ。
その第2集目がこの「異世界の色彩」です。

前作は3編のオムニバス集でしたが、本作は1編で1巻分。
1927年に執筆され、ラヴクラフト自身が「最も満足のいく作品」と語ったという傑作中編です。

あらすじ

ダムの建設予定地の調査に訪れた青年。
そこは雑草ひとつ生えない「焼野」と呼ばれる土地。

その「焼野」と草が生え始める境目にひっそり暮らす老人がいた。
彼は老人宅を訪れ「焼野」ついて話を聞くことにする。

そして老人は、かつてその土地に住んでいた友人一家に起こった悲劇の顛末を語り始める…。


感 想

ラヴクラフトの中でもSF色の強い作品です。

ストーリー展開はサスペンス。
徐々に世界が狂っていき、最後には怒涛の結末が待っています。

そして後を引くエピローグ。
もう文句なしに面白い!

田辺先生によるラヴクラフト傑作集は3作あります。

第1集目「魔犬」。
第2集目「異世界の色彩」。
第3集目「闇に這う者」

その中でも、この第2集は最高傑作だと思います。


色彩を黒で描く技術!?

前作の「魔犬」では見事な黒の陰影でラヴクラフトの世界を描写しきった田辺先生。

だが、今回は「色」がテーマ。
しかも誰も見たことのないような色彩。

これを黒と白のみでどう表現するのか??
まさかマーブル模様のトーンを貼るとかじゃないよな…。

はい!
そんなわけないです!
作画の表現方法は素人なのでわかりません。
ですが、トーンを貼っただけの簡単なものではないのはわかります。

黒の濃淡な描画の中に、ポッと浮き出るように描かれる色彩の表現。
誰も見たことのないような色なんですから、当然読者は想像するしかない。

しかし、ここに一つ仕掛けがあります。


色彩を想起させる!

本作には、最初にカラーで数ページあります。
そこはラヴクラフトの文章を引用しながら、作品の場面を抜き出したカットが載っています。

そのカットに田辺剛の表現する「色彩」が描かれています。
なんとも不思議で、不穏な色彩…。

ちょっとだけ載せますと…。

こんなの。

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うおおおおおおおお。

当然読む方としては、その後、この色彩を重ねながら作品を読み進めることになりますよね。
上手い作りだなぁ。


さて、評価は?

もう、作画もストーリーも満足のいく面白さ。
ぜひオススメしたい!

久々の【星10】です!

全1巻を読む


【その他の田辺剛作品】

狂気の山脈にて
(2016〜)
記事を読む

ラヴクラフト傑作集(シリーズ3集)

記事を読む(魔犬)(2014)

記事を読む(闇に這う者)(2016)

サウダージ
(2015)

ゲニウス・ロキ
(2011)

累 全2巻
(2007)

アウトサイダー
(2007)

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