No.145
カテゴリ:SF/ホラー
オススメ度10 ★★★★★★★★★★
著者:田辺剛
出版社: KADOKAWA/エンターブレイン
発売日:2016/10/24
巻数:4巻完結
「未知の恐るべき漆黒の山脈が 今我々を見下ろしていた」
宇宙的恐怖(コズミックホラー)の小説家であり、クトゥルフ神話の創始者のH・P・ラヴクラフト。
その恐るべき画力で田辺剛先生がコミカライズするシリーズ。
待ちに待った新作!
1936年に掲載されたラヴクラフトの代表作。
ラヴクラフトが亡くなる1年前です。
満を持して登場したのがこの「狂気の山脈にて」です。
あらすじ
1930年、南極大陸の調査に赴いたミスカトニック大学の探検隊。
生物学のレイク教授は調査の中で、高度に進化した生物の痕跡を発見する。
その痕跡を追い、レイク教授は本来の計画にないルートの調査を強行する。
そして遂にレイク隊は未知の山脈を発見するが…!?
それは広大な漆黒の山脈だった…。
相変わらず作画が精緻!
なんとなんと!
ぐいぐい引きこむ。惹きこむ。
冒頭のシーン。
南極大陸の圧倒的な自然の脅威。
臨場感が半端ない!
作画は精緻の極み。
よくもこれだけ表現できるものだと感嘆します。
主人公の地質学教授のダイアーを語り部に据え。
その回顧録としてストーリーを進めるラヴクラフト定番の展開。
時代背景は1930年代。
まさにラヴクラフトが執筆活動をしていた時代です。
設定が近未来でなく、その当時の「現代の話」として描いているところがラヴクラフトの特徴です。
探検隊の人たち。
ダイアー教授。
専門は地質学。ミスカトニック大学南極遠征隊隊長。
レイク教授。
専門は生物学。
化石から高度に進化した生物の痕跡を発見する。
別働隊を率いて北西方面の調査を強行する。
ゲドニー。
レイク教授の助手。
ダンフォース。
大学院生。ダイアー教授の助手。
それは一つの発見から。
南極の調査に赴いたミスカトニック大学探検隊。
最新機材を導入した調査は順調に進みます。
氷を掘削し、過去の地表を爆破し、鉱物標本を採取していきます。
掘り出される地層と古生物の化石。
その中に。
生物学の教授レイクが、地層の年代と合わない高度に進化した生物の痕跡を発見します。
大嵐が近づく中、レイク教授は計画とは違うルートの調査を強硬に主張し、地質学のダイアー教授らの反対を押し切り、分隊を率いて別ルートの調査に赴きます。
南極大陸の奥深く。
そこで発見したのが!
漆黒の山脈。
おおおお、禍々しい。
そして未知の山脈へ。
漆黒の山脈の麓に立ったレイク隊。
ダイナマイトの崩落により、隠れていた洞窟を発見します。
そして中で見つけたのが…。
なにこれ?
さて、評価は?
ラヴクラフトの中では長編となるこの原作が、どのように田辺先生の手により描き出されていくのか。
今までの傑作集に比べるとややスローな進め方。
1巻ではレイク隊が漆黒の山脈に洞窟を発見し、その中に「未知の生物」を発見したところで終わります。
おおお!この引き。
早く次が読みたいやん!
次巻が期待値Maxの本作ですが、1点難点をあげるとするとキャラの描きわけが得意でないということ。
防寒具に身を包んだ異国のおっさん連中です。
髪型等で区別できるシーンはまだしも、探検中のシーンはアップになると「これ誰だっけ?」ってなりがち。
そこは仕方ないか。
本当は星10をつけたいところですが、まだ1巻ということもあり【星9つ】。
何巻で完結するだろう?
ただ何巻で終わろうと。
きっと田辺先生の代表作となるだろうと思います。
傑作になる予感がプンプン。
さぁ、完結まで追いかけますよ!
4巻まで読みました。
(2017.12.11)
【12/11追記】
ついに完結です!
壮大なスケールで展開してきた、この「狂気の山脈にて」。
完結までの道のりは、まさに圧巻でした。
ここから多少のネタバレあります。
未読の方はご注意を!
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まずは、3巻から。
全滅したレイク隊のただ一人の行方不明者ゲドニーを探して、ダイアー教授と助手のダンフォールは飛行機に乗り込みます。
そして漆黒の山脈のさらに奥に進みます。
飛行機で山脈を超えた先には!
眼下に広がる、巨大な都市遺跡。
数ページ続く、飛行機からの景色。
もうこのシーンは鳥肌もの。
ダイアー教授と助手のダンフォールは、この古代都市の探索に向かいます。
何十万年も前の石の巨大建築物。
その中で発見する壁画彫刻の数々。
その彫刻を読み解きながら、数十億年前に地球上に存在した「旧支配者」たちの歴史が語られていきます。
そこから数十ペーシに及ぶ、3巻後半の作画テンションは圧巻。
「失われた創世記」
宇宙から飛来した、星型の頭部を持つ生命体。
やがて地球上の旧支配者となっていきます。
そしてここからはクトゥルフ好きにはたまらない描写のオンパレード。
宇宙の深遠から飛来した別の種族。
ク・リトル・リトル。
旧支配者たちが生み出した奴隷生物・シュゴス。
そしてその反乱。
あのクトゥルフの「とらえどころのない陰鬱なイメージ」を、これほど明確にビジュアライズするとは!
凄いとしか言いようがない。
明らかに、3巻のこの後半部分が本作のクライマックスと言えるでしょう。
そして4巻(完結巻)。
巨大な都市遺跡の深遠。
そこでダイアー教授たちは遭遇します。
テケリ・リ、テケリ・リ!!!
ドオオオーン!!
命からがら遺跡から脱出する二人。
しかし、その時…!?助手のダンフォースは!?
4巻のノリはまさに映画・小説のラストシーンのテイスト。
エンディングに向かって疾走していきます。
やがて迎える結末とは…!?
あとは本編でお確かめください!
結末を見届けて。
まちがいなく、日本のコズミックホラーを代表する作品になったと思います。
田辺先生の執念の描画に感動しきり。
よくぞ…これほどまで…。
まちがいなくラヴクラフトのコミカライズでは、現在ある中で一番の作品だと断言できます。
クトゥルフ神話、ラヴクラフト好きのみならず。
まるっきりラヴクラフト未読の方でも大いに楽しめるかと。
結末まで見届けて。
もちろん【星10】でオススメでございます。
ぜひ、一読いただきたい!
1巻から読む
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