No.121
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン
オススメ度9 ★★★★★★★★★☆著者:こうの史代
出版社: 双葉社
発売日:2008/1/12
巻数:3巻完結(上・中・下)
「この世界の片隅に うちを見つけてくれてありがとう」
温かいタッチ。
ほっこりとしたキャラクター。
でも。戦争を描いているんです。
それが、こうの史代先生の「この世界の片隅に」。
間も無く映画も公開されます。
しかも今度はアニメです。
そちらの期待値も高まり、また読み直しちゃいました。
あらすじ
舞台は昭和19年の広島。
ほんわか、おっとり、おっちょこちょい。
絵がとっても好きな18歳のすずさん。
突如縁談が決まり、呉へと嫁ぐことになる。
呉はその頃、日本海軍の一大拠点。軍港として栄えていた。
見知らぬ土地で夫・周作の妻として奮闘するすずさん。
その両親、出戻りの義姉とその娘と、みんなとワイワイ暮らす日々。
しかし着実に。
そして確実に。
時代はすずさんの生活に暗い影を落とし始める。
そして昭和20年。
あの夏がやってくる……。
戦争中の、しかも広島。
暗いお話だと思うでしょう?
全くそんなことないんです。
作画がほっこりしたタッチというのもありますが。
2巻まで、戦時中の家族の日常系ストーリー。
お米を3倍に炊く方法とか。
↓たんぽぽの食べ方とか。
すずさんの日々の奮闘ぶりとおっちょこちょいぶりが描かれていきます。
くすっと笑ってしまうくらい。
でもその日常が描かれているからこそ。
その愛しき日常が壊れていくからこそ。
戦争の何たるかを、失う怖さを感じるのではないでしょうか。
このセリフのために。
そして迎える3巻のクライマックス。
玉音放送を聞いた後にすずさんが畑に出て絞り出すセリフ。
もう、これが…。
このセリフを言わせるために3巻までの道のりがあったんじゃないかと。
そしてそっとすずの頭を撫でる一本の手。
ああ。
この表現はたまらない。
切なさが止まらない。
読者が考える。
前作「夕凪の街 桜の国」の時もそうです。
痛い表現、グロい表現はありません。
思想のおしつけ、説教くささもない。
ただ、描く。
あとは読者にまかせる。考えさせる。
これって素晴らしい表現方法だと思います。
本当に「こうの史代」作品は教科書に載せてもいいんじゃなかろうか!?
また映画も見たら追記したいと思います。
【2/6追記】
映画を見てきました。
もう、すでに各地で絶賛の嵐。
近場では上映予定はなかったのですが、評判になったおかげでイオンシネマで上映が始まりました。
なので家族で鑑賞。
よかったです。
月並みな言葉でごめんなさい。
原作を知っている分、話の展開はわかっています。
そういった意味でストーリー上でワクワクドキドキすることはありません。
気になるのは原作と比べてどうなのか!?
概ね同じ!
無駄な改悪は一切ありません。
原作の中の子ネタや笑いのツボをしっかり拾ってくれています。
音の効果!
だんだんと戦火が押し寄せ、日常が暗く押しつぶされて行くところ。
特に映画だと効果音の表現が絶大ですね。
空襲警報の音や、爆撃の音は、大音量で聴くと迫力があります。
あれ?こんなに怖いシーンだったけ???
と思うところもしばしば。
子供も連れて行きましたが、ちょっとハードルが高かったかも。
原作がほっこりしている分、映像で感じるギャップは確かにありました。
声がいい!
すずさん役の「のん」さん。
実は最初、キャストの発表を見たときにはどうかと思ったのですが…。
ごめんなさい!
そのハマりっぷりに脱帽です。
これもとても良かった。
ただ・・。
僕の一番好きなシーンとセリフが変わっていました。
そこはそのままでいて欲しかったなぁ。
ラストシーンのエンドロールで、原作では描かれていなかったエピローグ的なカットもあり。
それは嬉しいサプライズでした。
映画も評判通り。
こちらも絶対オススメです!
【その他のこうの史代作品】
夕凪の街 桜の国
(2008)
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