北北西に曇と往け

No.407
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆
著者:入江亜季
出版社: KADOKAWA / エンターブレイン
発売日:2017/10/13(1巻)
巻数:1〜2巻以下続刊

「受けたからには 必ず探し出す」

『乱と灰色の世界』の入江先生の最新作。

今度は異国の探偵モノ?
極北の荒涼とした大地、アイスランドが舞台です。

それがこの「北北西に曇と往け」です。

あらすじ

舞台はアイスランド島、北緯64度のランズ・エンド。
17歳の主人公・御山慧には3つの秘密があった。
ひとつ、クルマと話ができる。ふたつ、美人な女の子が苦手。
3つ、その職業は、探偵だった――。


感 想

タイトルの「北北西に曇と往け」。

「行け」ではなく「往け」。

そうなんです!

描いているのは『住』。

北北西、つまりアイスランドの自然、暮らし、住環境をこれでもかっ!と堪能できます。

景色は雄大そのもの。

大きく広がる重たい空。
寒々とした荒涼とした大地。
目まぐるしく変わる天候。

かと思えば、暖かい緑と料理に満ちた部屋の描写。

旅行記やロード物が好きな人には、これはたまらない。

そして作品にも独特の空気感があります。

作画も、構成も、物語のテンポも。

不思議な「間」があります。

よく言えば、展開が読めない。
悪く言えば、方向性がわからない。

ミステリーなのか?
旅行記なのか?
それともグルメ漫画なのか?

色んな要素が混沌としています。

何かが起こりそう。
でも何も起こらない気もする。

これは一体どんな漫画なんだ!?


北北西な人たち。

御山慧(みやま けい)。
17歳。両親はすでになく、祖父のジャックと同居。
アイスランドで探偵業をしている。
車や電化製品と”話”ができる。

ジャック。
慧の祖父でフランス人。プレイボーイ。
大学で教鞭をとっている。鳥と”話”ができる。

カトラ。
ジャックの彼女。元女優。

リリヤ。
カトラの姪っ子。
慧に何かと絡んでくる。

御山 三知高(みちたか)
慧の弟。15歳。
日本で叔父夫婦と住んでいたが、行方が分からなくなる。
兄を頼り、単身アイスランドに渡る。

清。(きよし)
慧の幼なじみ。パソコンおたく。
2巻で登場。


ジャンルは何だ?

この作品にはいろんな要素がミックスされています。

そのブレンド具合が独特で、この物語のジャンルをわからなくさせています。

1. ファンタジー探偵モノ?

「物探し、人探し」の探偵モノのように始まるプロローグ。

主人公の御山慧は、車や電化製品と「しゃべる」ことができるという特殊な才能の持ち主。

その「特技」を生かしての、ファンタジーありのお助けエピソードが続くかと思いきや…!?

掘り下げない。

車としゃべれるのは「ちょっと変わった特技」くらいの扱い。


2. 兄弟の確執とミステリー?

1巻中盤で突然のミステリーな展開スタート。

弟と連絡がつかない。

弟は日本にいる。

直接会いに行く。

世話人の伯父夫婦が亡くなってる!

家は売りに出されている!?

弟は兄を頼りにアイスランドへ渡った模様。

入れ違いか!?

じゃ、アイスランドに戻ろう!

そこへ弟を追ってきた刑事らしき人物の登場。

こ、これは!?

弟をめぐるミステリー展開が始まるのか!
と思いきや。

始まらない。

って、アレェ?

うううん??

日本とアイスランド、遠く離れて暮らしていた兄弟。

なぜ、兄弟が別々なのか?
なぜ、兄だけアイスランドで探偵業なのか?

その経緯は一切スルー。

学校は?警察は?
なぜ、弟くんは消えた?

そこもスルー。

そして、またアイスランドでの日常の描写が始まる…と。

うーむ?


3. 観光名所巡りとグルメリポート?

1巻の終盤で、物語の鍵を握りそうな弟のエピソードがあり。

不穏な空気を醸し出し2巻へ。

さぁ、どうなるかと期待していた次巻。

今度は慧の親友が登場。

弟の捜索やら何やらに絡むのか?と思いきや。

絡まない。

2巻は1巻分をまるっと使いアイスランド観光名所をめぐる旅行記に変わります。

ストロックル間欠泉での二人。。

本当に。

ずーと、観光してる二人の描写。

1巻まるまる、名所巡り。

弟くんの謎はどうなった?

追ってきた刑事はどこ行った?


さて、評価は?

2巻まで読了。

とにかく作画は素晴らしい。
アイスランドの空気感をしっぽり堪能できます。

ただし。

物語は風のように掴みどころがありません。

ふわふわ漂い。
何処に向かっていくのか?
全く読めない。

ほのぼのしたり。
ハラハラしたり。

ハートフルかと思えば、シリアスにもなる。
一つのジャンルで縛ることはできません。

この独特の物語のテンポ感は、好き嫌いが分かれそう。

ストーリー展開を楽しみたい方には、物足りないかと。
日常系やグルメ、旅行記のような空気感を楽しみたい方はハマるかも。

僕は、ミステリー展開が気になって、早くストーリーを進めてくれ!という派。

まずは【星6つ】で様子見です。

今後の展開を見届けたい。

1巻から読む
(2017〜)


【その他の 入江亜季 作品】

乱と灰色の世界 全7巻
(2009〜2015)

群青学舎 全4巻
(2006〜2009)

コダマの谷 王立大学騒乱劇
(2006)

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