うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち

No.233
カテゴリ:ノンフィクション
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆
著者:田中圭一
出版社: KADOKAWA
発売日:2017/1/19
巻数:1巻完結

「あなたのうつ病は”一生もの”です」

2017年2月の時点でAmazonの「健康カテゴリ」でベストセラーを続けている一冊の漫画があります。

How to本といった実用書であはりません。

著者自らがうつ病を患い、そこから脱するまでの記録。

それがこの「うつヌケ」です。

概 要

著者自身のうつ病からの脱出体験をベースに。
うつ病からの脱出に成功した人たちをレポートしていく。


感 想

うつの症状を実体験として、非常にわかりやすく描いています。

今でこそ認知の広がった「うつ病」。

でも、ひと昔前は、それが「甘え」や「やる気」と言った精神論で一蹴されてしまう現場もあったはずです。

そして「真面目な人」「頑張る人」「仕事ができる人」ほどうつを患いやすいという事実。

つまり、必死に真面目に生きている大半の人間は、いつ何時「うつ」になるかもしれないということなんです。

「うつ」なんて感じたこともない!
自分には関係のない世界だな!

……なんて思って読み始めたこの作品。

おいおいおいおい。

⬇︎ 思い当たることがいくつもあるぞ!

「ステルスうつ」って何それ?
((;゚Д゚)); ガクブル


著者の田中圭一先生とは?

田中圭一:サラリーマン兼、漫画家。

パロディをメインとした下ネタギャグ作品が多い。
1986年開始の『ドクター秩父山』がアニメ化され人気を得る。
やがてマンガの神様そっくりのタッチで下ネタを描くという暴挙なスタイルを確立する。

下ネタパロディ漫画で知られる田中先生ですが、本作はおふざけは一切なし。

とっても真面目。

漫画業とサラリーマンと。

多忙を極める著者が、2005年頃から10年間うつ病を患います。

長い長いうつトンネルを抜けた後「今なおうつで苦しむ人を救いたい」という動機から執筆されました。

辛いご自身の体験をもう一度見つめ直し漫画にするなんて。
きっと相当に負担のある作業だったはず。

本当にすごい。


非常にわかりやすい。

この本は、具体的なうつ病の治し方を書いているわけではありません。

「僕はこうだったよ」
「こうやったら、良くなったよ」

という田中先生の体験談です。

そして、後半は同じく「うつヌケ」をした人たちの体験談。

著名なあんな人、こんな人も。

大槻ケンヂ氏の場合。

逆に言えば世間では成功したと見えるそんな人たちでさえ。
うつになっちゃうのか!?ということ。

実体験だからこその飾らない言葉。

上からでも下からでもなく。

ただ「こうだった」と語る。
うつを体験し、抜け出した人だからこその語り口。

真実だからこそ語れる言葉と響く言葉。


ツッコミの役割。

作中に「うつ」でないサイドの代表として、アシスタントのカネコくんが登場します。

この「うつがわからない」視点からの的確なツッコミ。
素朴な疑問。
それに答える形をとることで「うつではない」読者の視点も取り入れ、分かりやすい構成となっています。

(例)うつのやっつけ方のお話。

 時にはキツイぞ!

「うつサイド」の感じ方や受けとり方が語られます。

これには「なるほど」と思うことも多々あり。


うつは心のガン?

著者は語ります。
「うつは心のガンだ!!」

うつは「心が風邪をひいた」という程度ではない。
放っておけば、やがて死に至る(自殺)病だ。

だからこそ、ガンなんだ。
と。

なるほど。

ガンに冒されてると思えば、そりゃ休みますよね。

そして体験談でも複数の人が再三語っていること。

「休むこと」こそがうつを改善する道だということ。


さて、評価は?

大変興味深い内容でした。

うつ関連の書籍はあまり読んだことがなかったので、なるほどと思うことがたくさん。

説明もわかりやすく、漫画なので読みやすい。

「うつ」認知への最初の1冊として。
とりかかりやすい良作だと思います。

オススメの【星7つ】です。

全1巻を読む
(2017)


【その他の田中圭一作品】

ペンと箸
(2017)

Gのサムライ
(2016)

田中圭一最低漫画全集 神罰1.1
(2015)

イかれポンチ
(2013)

教えてっ!真夢子おね~さん
(2013)

メカ硬派
(2010)

鬼堂龍太郎・その生き様 全4巻
(2005〜2006)

ヤング田中K一
(2005)

つっこみドン!!
(1998)

昆虫物語 ピースケの冒険
(1991)

ドクター秩父山 (新装版)
(1987)

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