No.358
カテゴリ:ドラマ・アクション
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆
著者:原作:KEI 作画:マサシ
出版社: : 秋田書店
発売日:2017/5/19(1巻)
巻数:1〜2巻以下続刊
「ここでは弱い奴は生き残れない」
KEIさんをご存知でしょうか?
最近メディアへの露出も増えてきました。
FBIの囮捜査により米刑務所に12年間服役。
そこは常に暴力と死が隣り合わせな極悪刑務所。
そんな中でたった一人の日本人として生き抜いた人物。
そこで西海岸最凶と言われるチカーノ(メキシコ系米国人ギャング)のボスに認められ仲間となる。
壮絶すぎるその人生。
…なんて、前情報を一切知らずに、読んでしまった!
それがこの「チカーノKEI~米国極悪刑務所を生き抜いた日本人~」です。
あらすじ
死が容易に隣り合わせだった80年代米国刑務所。
殺人すら日常だったその場所を大和魂一つで生き抜いた男がいた。
彼の名は「KEI」。
驚愕の実録プリズンサバイバルが始まる‼︎
これ、実話…ですか!?
と驚愕せざるをえない。
最初にも書きました。
何の前情報を得ずに手に取った本作。
表紙を見れば、いかにも「クローズ」の高橋組っぽい作画。
正直に言います。
荒くれ一匹狼の主人公。
グループ間の抗争、友情、諸々とか。
サクッと読めて面白いだろうけど「いつもの感じ」かなぁ。
なんて思ってました。
ごめんなさい。
本物(ガチ)だわ。
まさに映画やドラマの世界のようなアメリカの極悪刑務所。
多少演出が入っているにしても、そのあまりに壮絶な内容。
凄すぎます。
展開がドラマチックかつスピーディー。
めちゃくちゃ面白い。
正直、期待以上でした!
刑務所な人たち。
KEI。
ランパーク刑務所で唯一の日本人。
のちに「チカーノ」に深く関わるようになる。
手先が器用。
ロムロ。
刑務所の中での一大派閥「チカーノ」のメンバー。
元プロボクサー。
後にKEIとルームメイトになる。
エル。
刑務所内の黒人グループ「クリップス」のリーダー。
全身筋肉のゴリマッチョ。
ルールを重んじる。
ビッグホーミー。
「チカーノ」のボス。
後にKEIの刑務所ライフを大きく変える。
壮絶な刑務所ライフ。
とにかく展開がスピーディー。
1巻では過酷な刑務所ライフを描きます。
日々起こる抗争。
やってやられての繰り返し。
看守も見て見ぬ振り。
今ではとても考えられない状況ですが、これが80年代の米刑務所のリアルだったようです。
マジかよ!
そんなクレイジーな環境の中、たった一人奮闘するKEI。
まだその時代では刑務所内では囚人が現金を持っていました。
それで刑務所内のスーパーマーケットで日用品を買うという。
日本では考えられないようなシステム。
だからこそ、起こる強奪。
って、刑務所の中だよね?
マジかよ!
本来なら揉め事はご法度。
仲間のいない人間はあっという間に報復されて殺されてしまいます。
しかし!
だからといって揉め事を避け続け。
舐められてしまっては、それも生きていけない。
戦い続けるしか生き残れない。

そんな矛盾に満ちたプリズンライフ。
「チカーノ」との出会い。
アメリカは人種のるつぼ。
だからこそ刑務所内も人種ごとのグループがあります。
黒人系の「クリップス」「ブラッズ」。
白人至上主義の「KKK」。
日本人はたった一人。
まさに「これ、なんて無理ゲー?」状態です。
やがてKEIは、刑務所内の一大派閥「チカーノ」のロメロと対立してしまいます。
その場で勝っても、後で「チカーノ」の報復が待っている。
始まってしまうタイマン!!
どうなるよ!
しかしKEIは、そのあと偶然、別グループともめて絶体絶命のロメロのピンチを救い相棒となっていきます。
何だ?
この不良漫画的展開!?
これが実話なのかよ!とツッコんでしまう。
グループ同士の抗争。
面子と意地のぶつかり合い。
でも、そこには男気とか義理とか。
そういったものが根底にあるんですよね。
拳で語る。
義理を通す。
まさに80年代不良漫画のような価値観。
その生き様を貫くKEIが、やがて「仲間を異常に大切にする」という「チカーノ」達との共感を生んでいくわけです。
リアルKEIさんってどんな人?
原作者のKEIさん。
実話としてはあまりに出来すぎた、いや壮絶すぎな体験。
どんな人物か気になるじゃないですか。
1巻の巻末ではヤングチャンピオンの不良漫画「OUT」の原作者、井口達也先生との対談が収録されています。
その話もすごい面白いのですが…。
その対談中のお写真を拝見すると。
え?
と思ってしまうほど穏やかな表情。
語り口は、まさに紳士。
うん?
これがリアルKEIさん?
デフォルメしすぎか?
なんて思いましたが。
いえいえ。
他のお写真を拝見すると…?
マジモンです。
本物の凄みを感じます。
漫画より線は細いものの。
修羅場をくぐった独特の眼光の鋭さ。
特にお話している動画を見ると、独特の「間」をお持ちです。
対峙して本気を出されると、絶対ビビってしまうと思う。
KEIさんは米刑務所を出所後、帰国。
その後チカーノファッションのお店を開きます。
そしてアメリカでの獄中生活を綴った本を執筆します。
その驚愕の内容から口コミだけで1万部を突破。
出版社の規模と広告展開から考えると、これは異例の大ヒット。
つまり本作はそのコミカライズ。
さらに帰国時に、ずっとお世話になった警察官の方に。
と言われて、それを行動に移します。
非行少年少女を育成するホーミー・マリン・クラブを設立。
そして児童虐待や引きこもりといった問題を扱うNPO団体も立ち上げます。
まさに警察官の方の言葉通りに体現されている。
知れば知るほど、魅力的な方ですね。
さて、評価は?
読後、気になってKEIさんのバックグランドを調べてみましたが。
そんなの知らなくても全然いい。
まず、単純に漫画作品として面白い。
作画のマサシ先生の見せ方も上手い。
刑務所ものが好きな僕としては、終始引き込まれっぱなし。
2巻通して、ずっと面白かった。
『ショーシャンクの空に』とか。
『プリズンブレイク』とか。
アメリカン刑務所ものが好きな人には絶対刺さりそうな一作。
まずは【星8つ】でオススメです。
2018年にはドキュメント映画も公開予定だそうです。
今後の盛り上がりに期待したい。