残照の帝國

No.349
カテゴリ:歴史
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆
著者:原作:あまやゆうき 作画:稲井雄人
出版社: 小学館
発売日:2017/7/28(1巻)
巻数:1〜2巻以下続刊

「弟を護るのが仕事だ」

ひっさびさに。

なんとも真面目な歴史漫画に出会いました。

インカ帝国の最期を描いた物語。

それがこの「残照の帝國」です。

あらすじ

文字を持たなかったインカ帝国。

そのインカ側最後の文献をスペイン国王の陳述書という形で残した人物。

それが、落日のインカ帝國にあって最後の抵抗を続けた人物ティトゥ・クシ。

インカ帝国はいかに滅んだのか。
これは、落日のインカで最後に輝いた青年の物語。


感 想

歴史漫画は特殊です。

読者は史実、つまり「結末」がわかっています。

いわゆるオチを知っているという状態。
これはエンターテイメント的には、かなりハンデなはず。

歴史ファンタジーにでもしない限り、オチは変えられない。

では歴史漫画の面白さとは?

すでに結末がわかっている事。

いかにその結末へたどり着くか!

その過程が見どころなんです。

史実を知っていても、歴史で勉強するのは大雑把な流れだけ。
年表の中の記号として覚えていることがほとんど。

なぜ、その史実が起きたのか?
歴史上の人物たちは、何を考え、どのように生きたのか?

心理描写までは研究者でもない限り勉強しないでしょう。

つまり、これほどたくさんの歴史漫画や映画や小説が日々生まれてくるのは。
みんな、過去の人間の生き様を追体験したいからなんですよね。

歴史漫画に求められているのは、結末の面白さではなく。

結末に至るまでの人間ドラマ。
やはりここでしょう!

本作の題材はインカ帝国。

本格的に長編漫画としてインカ帝国を取り上げたのは、この作品が初めてではないでしょうか?

もう、これだけでワクワクします。


インカ帝国な人たち。

ティトゥ・クシ。
聡明で剣術に優れた少年。
インカ帝国、第15代カパック帝の息子。
弟のアマルゥの守護を第一に考えている。

ファナ・モンテシーノス。
スペイン人の執政官・モンテシーノス卿の娘。
正義感が強い。

アマルゥ。
インカ帝国、第15代カパック帝の息子。
ティトゥの弟だが、ティトゥとは母の身分が違う。
次期後継者とされる。


落日のインカ帝国。

本作は、読む前にざっくり歴史を勉強してるとさらに面白いです。

<インカ帝国>
南米ペルー、ボリビア、エクアドルのあたりに14~16世紀に栄えた。
1533年にスペイン人のコンキスタドールによって滅ぼされた。

インカ帝国の滅亡はこの1533年とされています。

ですが、滅ぼされたと言っても、一人残らず皆殺しにされたわけではありません。

いわゆるスペインの統治下に置かれた、という状況です。

実は統治下にも形の上での「皇帝」は置かれ、その皇帝がやがて反乱を起こします。

その反乱を率いたのが、主人公の父・カパック帝。

やがて反乱軍はビルカバンバという土地に移動し、そこで「ビルカバンバのインカ帝国」を樹立します。

その後なんと30数年にわたりスペインに抵抗を続けていくのです。

本作は、そのインカの亡命政権「ビルカバンバのインカ帝国」の樹立に至る道を描いています。

主人公のティトゥ・クシは「ビルカバンバのインカ帝国」の立役者。
1560〜1571年まで皇帝に在位しています。

1570年。亡くなる1年前にスペイン国王へ陳述書を送っており、それがインカ側からの視点で残された貴重な資料となっています。

本作でティトゥが「正当な継承者」として守る腹違いの弟アマルゥ。

「ビルカバンバのインカ帝国」最後の皇帝がトゥパク・アマルです。

歴史上は、ティトゥの死後に即位。
在位後、1年でスペインの来襲を受け、捕らえられ処刑されます。

そこで完全にインカ帝国は滅亡となります。

そして、ヒロインとして登場するファナ。

歴史上は、トゥパク・アマルの娘にファナ・ピルコワコという人物がいます。

この史実と物語が関係しているのかどうか。
それはまだわかりません。


見どころは?

さて、気になるのはSHOW的な味付け、アレンジ。

まず主人公のティトゥ・クシ。

現在9歳という設定なはずなのですが。
大人びております。

弟アマルゥが何か呪文を唱えるとバーサク・モードに突入します。

なにこのチート!
めっちゃTUEEEE!!

えっと。

9歳だよね…?

ピルー(現ペルー)を統治しているピサロ兄弟。

有名なピサロ提督ではなく、その弟たち。

ちょ、関西弁(笑)!!


そして、愉快な悪役たち。

セブルベダ。
若手議員。執政官・モンテシーノス卿と対立。
卿の失脚を企てる。

軍司令官・アルマグロ。
ピサロ提督と対立している。

オルゴニェス。
アルマグロの右腕。
相手兵士の鼻をちぎって収集する変態。

みなさん、揃いも揃って。

コテコテの悪役です。

悪役商会から派遣されたんですか(笑)

わかりやすく、侵略サイドのスペインを悪に。
抵抗するインカ帝国側を正義として描いていきます。

ですが。

さすがに滅亡に瀕した国。

実はインカ帝国サイドも内部はグダグダです。

そりゃ、滅ぼされるわ!と納得してしまうところも。


さて、評価は?

テンポよく進んで行くストーリー。

2巻までは、幼い兄弟+ヒロインの逃亡劇がメイン。

これから「ビルカバンバのインカ帝国」の樹立され、スペイン軍との攻防戦がはじまっていく模様。

その戦シーンがどれくらいのボリュームで描かれていくのか見ものです。

今は丁寧に史実を追っている印象。

全体的にややベタで大げさなキャラが気になりますが、演出的にはアリかと。

まずは様子見の【星6つ】でオススメ。

これは結末まで追っかけたい。

1巻から読む
(2017〜)

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