No.348
カテゴリ:SF/ドラマ・ヒューマン
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆
著者:優
出版社: KADOKAWA
発売日:2014/10/4(1巻)
巻数:4巻完結
「毎週金曜日の五時間目な」
突然の訃報に驚きました。
9月24日の夜です。
漫画家の優先生が急性心不全で亡くなっていたことが、Twitterで旦那さまから発表されました。
まさか!?
優先生といえば、細田守監督の劇場アニメ「おおかみこどもの雨と雪」のコミカライズで商業誌デビューされました。
それが5年前。
まだまだこれからだったというのに。
本当に惜しい。
優しいタッチのキャラクターが魅力的でした。
その優先生がコミカライズに続き、初のオリジナル作品として発表したのが、この「五時間目の戦争」です。
その完結巻となる4巻が最後の単行本となりました。
あらすじ
瀬戸内の離島の中学校。
新たな授業として三年生たちに課されたのは、正体不明の敵との「戦争」だった!
クラス一の俊足の双海朔と、その幼馴染の安居島都の二人だけは、なぜか出兵不適格の烙印を押されるが…!?
セカイ系ジュブナイル。
ああ、まさに。
本作の世界観は1巻の表紙に集約されています。
あどけない、かわいい女子中学生が背に負うのは機関銃。
このギャップ。
アンバランス感。
本作は雰囲気を読む漫画です。
特筆すべきは、その作画。
瀬戸内のほのぼのとした田舎の風景。
屈託ない少年少女たちの表情。
そこに漂う終末感。
この空気感は抜群。
純粋なSFでもない。
戦争アクションでもない。
中学生が訳も分からず「五時間目」に戦地に赴く。
一人、また一人と帰ってこない。
4巻完結ですが、ラストはすっきりしない。
切なくてやるせない結末です。
五時間目な人たち。
双海 朔(ふたみ さく)。
クラス一の俊足。
しかし出兵不適格とされる。
安居島 都(あいしま みやこ)。
朔の幼馴染。運動が苦手で鈍臭い。
料理が得意。
朔と同じく出兵不適格となる。
篠川 零奈(れいな)。
東京から疎開してきた。
朔が密かに想いを寄せる。
クラスで一番手の出征となる。
うさぎのぬいぐるみ。
都に拾われた。しゃべる。
何か目的がある様子。
蜘蛛の糸。
「敵」によって日本全土に打ち立てられた巨大建造物。
何と戦っているのか?
離島に集められた中学生たち。
彼らの中から順番に選ばれ、戦地へ赴く。
そして「謎の敵」と戦う…と。
なぜ、戦うのか?
何と戦っているのか?
それは物語の終盤まで明かされません。
なぜ、主人公の二人は出征できないのか。
うさぎの探す「バグ」とは何のことか?
神社から赤ちゃんが生まれるとは?
実は、3巻までは謎のオンパレード。
伏線ばかり。
風呂敷広がってばかり。
最終巻の4巻になって。
やっと怒涛のように、すべての伏線を回収。
謎が明かされていきます。
そして誰もいなくなった。
1〜3巻までは。
戦争しながらも、どこか田舎の疎開地らしい日常が描かれていました。
最終4巻になっての急展開。
一気に内容は暗く重くなっていきます。
一人また一人と減っていくクラスメート。
それは最後の二人になるまで続いていきます。
彼らは何と戦っていたのか?
そして、この世界とは何だったのか?
う・・・・む。
納得しがたい結末かもしれません。
もうね。
最終話のオチは予想外。
おおおおい!
朔ちゃんよぉ!
これはないわぁ…。
その驚愕の結末は是非、本編でお確かめ下さい。
さて、評価は?
最初に書きました。
この作品は物語を読むのではなく、雰囲気を読む。
そんな作品です。
優先生初のオリジナル作品ということもあり。
SF的な設定は良いものの、伏線回収のペースを掴みきれず終わってしまった印象です。
最終巻に一気に「種明かし」を詰め込んでしまい、それまで丁寧に描いてきたサブキャラたちの行く末が中途半端に。
急に消えてしまった子もいるし。
ツッコミどころは多々あり。
いろいろ辻褄の合わない箇所もありますが、キリがないのでスルーします。
最終4巻の刊行が2017年の3月4日です。
本当はもっと続くところを急いでまとめてしまったのかな…?
すでに体調を崩されていたのでしょうか…?
そうだとすると残念です。。
ということで。
雰囲気はすごくいいのですが、細かいとこは目をつむって。
【星6つ】でございます。
それにしても。。。
本当に突然です。
お亡くなりになっていたのは7月ということ。
旦那様は、Twwiterでファンの方へ報告が遅れたことを謝罪しています。
あまりに突然のことで、悲しみが深すぎた、と。
そりゃ、そうでしょう…。
優先生。
今年の1月にフルカラー短編集「さよなら、またね。」を刊行したところでした。
そして、本作の最終巻が3月に刊行。
5月からは病気療養中だったとのことです。
もっともっと作品を描きたかったはず。
きっと頭の中にいくつもの世界が広がっていたはず。
それが形にならなかったのは残念です。
心より御冥福をお祈りいたします。
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