No.352
カテゴリ:SF
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆
著者:奥浩哉
出版社: 小学館
発売日:2014/5/23(1巻)
巻数:10巻完結
「俺が悪役で… じじいがヒーローか…」
ついに完結です!
あの「GANTZ」で有名な奥浩哉先生がそのGANTZ終了後に手掛けた意欲作。
ある日突然にサイボーグに変えられてしまった初老のサラリーマンの運命は!?
どんな結末を迎えたのか?
早速、最終巻を読んでみました。
それがこの「いぬやしき」です。
あらすじ
58歳サラリーマン2児の父。
希望もなければ人望もない冴えない男、犬屋敷。
ある日、彼は散歩の途中にUFOに遭遇し、サイボーグに変えられてしまうが…!?
むおおおおお。
このラストはどうでしょう?
賛否両論が予想される結末です。
よく言えば、あっさり終わる。
悪く言えば、投げやりに終わる。
前半~中盤。
最高に面白い!
宇宙人との事故に巻き込まれ、サイボーグ兵器として蘇った二人の男。
機械と化してしまった自分を受け入れられず。
しかし、それでも「人間として生きている」実感を得ようとします。
もう一人は「人を殺す」ことで自身の生を感じていく。
それぞれが正義に、悪にと変貌していく過程が丁寧に描かれています。
この対比と心境の変化を描いた前半は素晴らしい。
後半の折り返し。
やがて二人は出会い、対峙します。
このシーンなんて鳥肌もの。
新刊が出るたびに、どうなるんだ!
って感じでワクワクして読んでいました。
8巻までパーフェクト!!
それが、最後の最後で。
最終の2巻。
まさかの失速。
えええ??
こんなラストになるとは想像していませんでした。
いぬやしきな人たち。
犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう)。
見た目おじいちゃんの初老のサラリーマン。
散歩の途中、小さな宇宙人のUFOの衝突に巻き込まれ死んでしまう。
その宇宙人の手によってサイボーグとして生き返る。
⬇︎ サイボーグ化したらこんなの。
獅子神 皓 (ししがみ ひろ)。
イケメンな高校生。
犬屋敷と同じくUFOの衝突に巻き込まれ死亡。
サイボーグとして再生する。
⬇︎ やがて世間を震撼させるテロリストとなっていく。
安堂 直行 (あんどう なおゆき)。
獅子神の幼馴染。
同級生にイジメられて引きこもっていたところ、獅子神に助けられる。
変貌していく獅子神と絶交する。
やがて犬屋敷と知り合い、獅子神に対抗するアドバイザーとなっていく。
正義なおじいちゃんと悪なイケメン。
キャラの対比が秀逸。
正義と悪。
冴えないおっさんとリア充のイケメン。
孤独なサラリーマン・犬屋敷。
サイボーグになる前はガンで余命3か月の宣告を受けます。
人生の辛酸をなめつくしたからこそたどり着く心境。
虐げられ、邪険にされ、孤独だからこそ。
「人を救う」ことで充足感を得るようになっていきます。
それに比して高校生・獅子神。
想像を絶する力を手に入れてしまうことで。
肥大してしまう万能感。
己を支配している虚無感。
やがてそれは「人を殺す」ことで存在意義を感じるようになっていきます。
暗黒面へと堕ちていく獅子神。
その鬼気迫る壊れっぷりが素晴らしい。
8巻までは「こりゃ、傑作になるぜ!」
なんて思っていたんですが….。
まさかの急展開。
大量殺人を犯し、テロリストとして世間から追われる獅子神。
その獅子神に立ち向かう犬屋敷。
スピード感あふれる二人の空中戦。
まさに8巻はクライマックスとも言える盛り上がり!
正義と悪のガチンコ対決でラストを迎えるか?
と思っていたら。
続く、9巻。
ガラっと風向きが変わります。
(注意!)ラストのネタばれに絡む表現があります。
未読の方は飛ばしてください。
⬇︎
⬇︎
⬇︎
⬇︎
⬇︎
⬇︎
⬇︎
ナナメ方向へ舵を切ったよ。
巨大隕石、登場だと?
なんで、そっち行った!?
犬屋敷と獅子神の対決路線でよかったんじゃ?
ダメだぁ…。
巨大隕石が出てきた時点で。
アルマゲドンのテーマが流れる絵が見えてしまいました。
巨大隕石に立ち向かう犬屋敷。
このアトム的な流れ。
完全にフラグ立ってます。
オチが見えかけたものの、もう一捻り、イヤ、二捻りくらい。
ねじくれまくって終わる結末を期待していたのですが…。
Don’t want to close my eyes~♪
エアロスミスが流れてきます。
なんとも凡庸と言わざるをえないラスト。
う~ん。
これって最初のプロット通りだったのかなぁ。。
獅子神も最後の最後でいい人キャラに。

前巻までの冷血無比な行動は何だったのか?
その急激な変貌ぶりに違和感を感じてしまいました。
さて、評価は?
Amazonレビューを覗くと、思った通り。
前半の好レビューの嵐に比べ、後半、特に最終巻は辛辣な意見が多い。
そりゃ、そうだろうな、、、と。
後半になると、見開きページや大ゴマばかりが目立ちます。
そのおかげでページが進む進む(苦笑)
10巻完結ですが、通常の漫画なら7~8巻で収まる内容かもしれません。
気になったのは、前半の丁寧さに比べて、終盤の雑さ。
急に著者の作品に対するモチベーションが下がってしまったような印象を受けてしまいました。
ラスト2巻の失速が激しいです。
それまでが、めちゃくちゃ面白いだけに、最後が残念。
ということで【星7つ】とさせて頂きます。
メデイアミックス続々。
来週10/12からアニメ放送がスタート。
原作通りの内容でできるのか!?
変に日和ってぬるく改悪されたら目も当てられないが、果たして!?
さらに。
2018年には実写映画が公開。
犬屋敷が木梨憲武さん。
獅子神が佐藤健さん。
このキャストは確かに興味をそそられる。
見てみたいかも(笑)
映画の大画面スクリーンなら、夜空を飛び回るシーンや、巨大隕石のシーンなんかは見応えあるでしょうね。
ラストもすっきりまとまっているので、前編、後編くらいで描ききれるのではないかと。
メディアミックスは別として。
もうちょっと正義と悪の泥仕合いが読みたかった。
【その他の奥浩哉 作品】