アバラ

No.334
カテゴリ:SF
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆
著者:弐瓶勉
出版社: 集英社
発売日:2006/5/19(1巻)
巻数:2巻完結

「俺には関係ないことだ」

弐瓶ワールドの真骨頂!

「シドニアの騎士」「バイオメガ」「BLAME!」等々。
独創的な世界を描き続ける弐瓶先生の初期短編SF。

ハードボイルドな世界観がたまらない!

それがこの「アバラ」です。

あらすじ

人工物なのか自然物なのかもわからない巨大な廟のある世界。
そこに突如現われた、「白奇居子(シロガウナ)」と呼ばれるその異形の怪物。
養殖所で働く男、駆動電次の元にタドホミという女が訪れる。
タドホミは白奇居子が現れたと駆動に告げるが…!?


感 想

まさにハードボイルド。

硬質な作画。深い陰影。
独創的な空気感。

いや〜、かっこいい。

必要以上に語らない。
セリフも少ない。
説明なんてない。

ボッーとしてると光速で置いていかれます。

一切読者に媚びることなく、黙々と、粛々と進むストーリー。

「わけわからん」となるか。
「わけわからんけど、かっけぇ!」となるか。

これは、好みがハッキリと分かれる作品です。

さて、皆さんはどっちでしょうか?


アバラな人たち。

駆動電次。
黒奇居子(クロガウナ)を移植された青年。
かつて検眼寮に所属していた。

黒奇居子に変化した駆動。

タドホミ。
駆動と親しかった検眼使。検眼寮最高責任者の娘。

阿由多(あゆた)。
車いすに乗った少女。黒奇居子を移植されているが直接戦闘はしない。
妹の那由多とテレパシーでつながり指示を出す。

那由多(なゆた)。
阿由多の妹。検眼寮の擁する黒奇居子。
駆動の捕獲のため、封印を解かれる。

黒奇居子に変化した那由多。

先島
刑兵部省の捜査官。
奇居子の起こした事件を追う。

白奇居子。
人類の領域を侵犯し、破壊にふける異形の生物。

奇居子? 検眼寮? 刑兵部省?
聞きなれない言葉がいっぱい。


ということで、用語説明。

奇居子(ガウナ)。
人類の領域を侵犯し、破壊にふける異形の生物。
「胞(えな)」と呼ばれる外骨格の装甲を持つ。
ちなみに「シドニアの騎士」に出てくる地球を滅ぼす異星のからの生物も同じ名前。

示現体(しげんたい)。
人間がなんらかの要因によって変容した存在。
白奇居子とほぼ同義。

黒奇居子(クロガウナ)。
示現体に対する検眼寮の最終兵器。
第四紀連がかつて白奇居子をもとにして開発した生物兵器のこと。

検眼寮。
黒奇居子を作り出した組織。

刑兵部省
この世界の警察のような組織。

第四紀連。
600年前に滅びた大企業。
その原因は示現体の連鎖と伝えられる。
その社員の生き残りは3人。骸骨、鳥、カプセル。
精神だけを宿した機械のような姿になっている。

説明を書いても「???」ですよね(笑)

そうなんです。

理解するのではなく。
そういうものだ、と受け入れるんです。


独創的な世界観。

本作の魅力はなんといっても。
その独創的な世界。

その塊はあまりにも古くから そこに存在したために
殆どの人々が 地形の一部だと信じていた
どんな仕掛けがあるかなど 知っている者はいない

こんなプロローグから始まります。

いきなりワクワクしてきます。

そして。
前触れもなく始まる事件。
いきなり変身する主人公。
で、ドカン!と倒す。

この女は何者?
主人公ってどういう人?
その関係は?
なんで、いきなり倒しに行くの?

何の説明もない。

始まるオリジナル造語のオンパレード。

「これ、なんのこと?」とその意味がわからず「???」となってるうちに物語はどんどんと進みます。

この「わからせよう」と一切しないスタイル。
初期の弐瓶作品の特徴でもあります。

その不親切とも思えるほどの、読者を突き放した描写が、無機質なかっこよさを演出しています。


そして壮大な終幕へ。

結末まで読んでみてください。

なんだ、これ?
どこだ、ここ?

虚無感が支配するラストシーン。

今までいた場所はどこだったのか?
この世界とは何だったのか?

明確な説明はありません。
あえて分からせないようにしています。

絶望的な終幕。
ただ希望も見出せる。

それぞれのその後を想像してしまう。
たとえそれがどんな状況であろうとも…。

そして、この世界観はその後の作品へと受け継がれていきます。


さて、評価は?

とても独創的なSF世界です。

人によっては難解と思えるかもしれません。

セリフも最小限。
シーンの切り替わりも突然です。

例えるなら。
絵のつながりがあるとして。

1→2→3と描くところを。
1→3と描く。

2を飛ばしたために、読み手はなぜ「3」になったのか分からない。
前後を読み直さないと、一瞬意味のわからない場面が多々あります。

ちゃんと読めば理解はできるのですが、丁寧な描写とは言い難いところです。

でも、それがいい。

作品全体を支配する、陰鬱なディストピア感。

最近の弐瓶作品では見られないハード感。

現在のような、コメディ要素も一切なく。
ただ、ひたすらに硬派です

全てを突き放した世界観、僕は好きです。

難解さも考慮して【星6つ】でオススメします。

全2巻を読む
(2006)


【その他の弐瓶勉 作品】

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(2001)

BLAME! 全10巻
(1998〜2003)

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