No.173
カテゴリ:ノンフィクション・体験談/1巻完結
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆著者:黒咲一人
出版社: 日本文芸社
発売日:2005/5/19
巻数:1巻完結
「こんな私でも生きて行ける道…」
売れなくなった漫画家の体験談…と他人事で終わらせられない。
人生という道に迷った中年オヤジの姿。
シンパシーを感じずにはいられない。
それがこの「55歳の地図」です。
あらすじ
19歳でデビュー以来、約100タイトルの作品を描いたものの、原稿の依頼が途絶えてしまった55歳の漫画家。
過去の一切を捨てた著者が放浪の旅として選んだ、四国八十八箇所の遍路体験を自ら描く。
旅の果てに、“生くべき道”として著者が見つけたものとは一体何か。
乱暴に言ってしまえば。
55歳無職のオヤジがお遍路をするお話。
ただ、それだけ。
なのに!
なんで、こんなに引き込まれるんだ!
目が離せない。
体験談というのは、フィクションには出せない真実の凄みがあります。
冒頭のシーン。
四国のお遍路に出るために黒咲先生が身辺整理をしていきます。
ここはすごい。
これは体験したものにしか描けないリアルですよ。
あまりにも切なくて、苦しい。
36年間書き溜めた命とも言える原稿を捨てるシーン。
ゴミ収集車をいつまでも見送る…
(。´Д⊂)
黒咲先生が放浪すると知って。
声をかけてくるかつての漫画仲間たち。
って!
揃いも揃って大御所すぎ!
でも、仲間だからこそ。
頼らない。
それが著者の漫画家としての矜持なのでしょう。
一時は相当儲かっていたでしょうに。。
なんでこうなった?
そして四国のお遍路シーン。
三輪自転車に全ての荷物を積み込み、冬の四国を巡礼していきます。
旅行記や放浪記なんて、生易しいものじゃない!
まさにサバイバル!
テントを張る場所を見誤れば、朝には冷たくなってるかもしれない。
お金もない。
ご飯も買えない。
フラフラになりながらお寺を回る著者。
もう一度言う。
なんでこうなった?
準備はちゃんとすべし。
冬に夏用テントはあかんだろう!
カセットコンロくらいもっとけ!
あまりの無計画ぶりに思わず突っ込まずにはいられません。
そのサバイバル生活の中で、知り合った放浪者仲間から生きる術を学んだり。
周囲の優しさに助けられたり。
ものごっつ、みんないい人!
そして、ついに。
死にかけるようなことや。
ちょっとした諍いや。
トラブル何やかんや越えて。
2か月かけて遂に四国八十八か所の巡礼を終えます。
もう、ボロッボロ!!
見て、この顔!!
他人事では済ませられない。
極論すると。
無計画に生きてきたオヤジの末路。
何も同情する余地などないじゃないか?
家族も持たず。
貯金もせず。
責任も果たさず。
それが何だってんだ?
自業自得だろ?
これのどこが面白いの?
と。
若い時なら切って捨ててしまうかもしれません。
僕もアラフォーになり。
全く違う分野ではありますが、一応プロのクリエーターとして身を立てております。
おかげさまでそれなりにやれてはいますが…。
でもね。
ふと考えます。
「自分の感性がいつまで通用するだろうか?」
「いつまで必要とされるだろうか?」
この不安は常に付きまといます。
クリエーターのみならず。
会社を経営なさっている方、自営業でお店をされている方。
きっと形は違えど、似たような思いを持ったことはあるはず。
だから。
こうして立派なオヤジとなった今。
いつ、何時。
自分も人生に迷ってしまうかもしれない。
だから「他人事」では済ませられない。
笑えない。
著者の黒咲一人先生って?
今でこそお遍路漫画家として知る人ぞ知る、という存在ではありますが。
本作が出たのは11年前。
僕は結構経ってから読みました。
漫画好きを自称しながら、恥ずかしながら以前の作品をほとんど知りませんでした。
むか~し昔に何かで読んだだけ。
それもほとんど記憶に残っていない。
いやはや、、面目ない。
作画は劇画タッチ。
なんだか古いです。
ふた昔前の漫画という趣。
でも本作に至っては、それが驚くほど良い。
この作画だからこそ、のめり込める。
あの人は今!
黒咲先生は本作を刊行後、また自転車で放浪の旅に出ているそうです。
今現在も行方知れズ…と。
大丈夫かな…?
と思ったら。
なんと会いに行った方のサイトがありました!
こちらです↓
Seishironさんのサイトの記事
かっこいいジィちゃんになってました!
もう!
ここには著者の生き様が収められています。
この作品はアラフォー以上のおっさん仲間に是非オススメします。
*この作品はKindle Unlimited無料で読めます。
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