No.262
カテゴリ:SF
オススメ度10 ★★★★★★★★★★
著者:篠原健太
出版社: 集英社
発売日:2016/7/4(1巻)
巻数:5巻完結
「宇宙の彼方で遭難しました」
古いロボットアニメのようなコスチューム。
ふた昔前のSFのような宇宙船。
いかにも「ジャンプ」的な作画の雰囲気。
う~~ん…。
と、スルーしていたこの作品。
それがこの「彼方のアストラ」です。
あらすじ
宇宙への往来が当たり前になった近未来。
高校生のカナタ、アリエスら9名は“惑星キャンプ”に旅立つ。
未体験の宇宙旅行に胸を躍らせながら惑星に降り立った彼らを待ち受ける、予想外の事態とは!?
近未来SFサバイバルストーリー。
表紙って大事です。
ましてや連載を読まず、タイトルと表紙買いを信条とするコミック派。
となると。
これは避けるでしょう(笑)
きっと残念なSFだと思ってました…。
ごめんなさぁあい!!
見た目で判断してゴメンよぉ。
まったくそうじゃなかった!
めっちゃ面白いやん!
一つの惑星でひたすら生き残る、というのではなく。
目的の星に帰り着くために、次々に惑星を経由しながら進む、というのがいい。
かつての名作「銀河鉄道999」のように。
毎回新しい惑星で、新しい生態系、困難が待ち受ける。
この展開は飽きさせない。
巻が進むにつれて、どんどん面白くなっていきます。
彼方な人たち。
カナタ・ホシジマ。
勇気と正義感とウザイほどのポジティブさ兼ね備える。
驚異の身体能力を持つ。
夢は宇宙探検家。
アリエス・スプリング。
天然でおっちょこちょい。
映像記憶能力を持つ。
実は頭がキレる。
ザック・ウォーカー。
IQ200の超天才。
宇宙船の操縦免許を持つ。
キート・ラファエリ。
ツンデレお嬢様。
ザックとは幼馴染。
医者を目指していて医療の知識がある。
とにかく一人一人のキャラが作りこまれています。
そこにモブキャラなどいません。
みんなに特技があり、秘密があり、問題がある。
それぞれの抱える秘密や問題。
お互いぶつかりながらも、克服し、絆を深めていく。
なんだこれ!?
めちゃくちゃ青春してる。
宇宙を舞台にした漂流記。
惑星キャンプに訪れた一行。
そこへ謎の球体が出現。
突然5千12光年先の場所に飛ばされます。
飛ばされた先で運良く?宇宙船を見つけます。
その宇宙船で5千12光年分を帰還するには3か月かかる。
ただしその船に積める水と食料は9人分だと20日程度。
このままでは帰れない。
で、どうするか?
水と食料の確保出来る惑星を経由しながら帰還するという方法。
そして始まるサバイバル。
水と食料を求めて。
毎回、新しい惑星でサバイバル!
それぞれの星に特徴があり。
突拍子もない生物が出てくる。

次々と捲き起こる騒動。
絶体絶命のピンチ!
各自の能力を合わせて解決する!
ストーリー展開はハラハラドキドキ。
まさに王道のSFエンターテイメント!
ストレートすぎるからこそ。
ワクワクが止まらない。
こういうの好きなんです!
さて、評価は?
著者はジャンプでの人気作「SKET DANCE」の作者。
確かな作画。
わかりやすいストーリー。
9人というキャラの描きわけも上手い。
ガチのサバイバル漫画ではありません。
SFコメディ。
シリアスなシーンもありながら。
うまく「少年漫画」の枠に収めています。
突然出てくるご都合主義的な道具も装備もご愛嬌。
ただね。
ギャグが時々ジャンプ漫画っぽいノリ。
無理やりで寒いところもあり(苦笑)
でもストーリーは、回を重ねるごとにどんどんと面白くなっていきます。
遭難することになったのには大きな理由がありそう。
なぜ、宇宙船があったのか?
通信機のみ壊されていたのは?
メンバーの秘密や大きな謎が、だんだんと明かされていくようですが、
現時点ではまだ真相はわかりません。
既刊3巻。
これからも右肩上がりで面白くなる予感。
まずは「超オススメ!」の【星8つ】で。
どんな真相と結末が待っているのか?
最後まで追っかけてみようと思います。
4巻を読んでみた。
【8/12追記】
ついに真相が明かされます!
なぜこの9人が集められたのか?
その素性は?
なっるほどなぁ。
こういうことか!
そしてこの4巻からついに作品のカラーがはっきり見えてきました。
重いシリアス展開もありながら、決して明るさを失わないクルーたち。
この陰と陽のバランスが凄まじく良い。
SFでもありコメディでもありヒューマンドラマでもある。
これは傑作になりそうな予感!
さらに新たな大きな謎を残しての5巻への引き。
ますます期待大です。
5巻を読んでみた。
【2/3追記】
ついに完結です!
そしてまた一つ。
SF漫画の傑作の誕生です。
これ以上にない、最高の結末を迎えました。
冷凍睡眠から目覚めたポリーナが語る地球の歴史。
カナタたちが知る惑星アストラの歴史。
似て非なる2つの母星の存在、微妙に食い違う歴史。
それは一体どういうことか?
4巻で明かされた9人の出生の謎とは別に、人類の歴史に隠された大きな真実も見えてきます。
そして、降り立つ最後の惑星。
ここでついに、刺客が正体を現します。
その時、メンバーたちはどんな行動に出るのか!?
このクライマックスには震えがきます!
そして迎える大団円。
伏線も謎もすべてを見事に回収。
メンバーのその後のエピソードまでをも描く。
って!
なんだこれ!
ここまで考えていたのか!?
軽〜〜いコメディSFっぽく始まったあの1話から!
ここまで骨太なSF作品になるとは予想だにできませんでした!
素晴らしすぎる。
さて、最終評価は?
最終5巻は280ページ越えのビッグボリューム。
5巻完結でこれほど内容の濃いい作品はそうそうない。
本作の魅力は、巧みなストーリーだけではありません。
重く暗くなりがちなテーマを抱えながら、最後まで常にポジティブであったこと。
笑いを忘れない。
生きる楽しさ、素晴らしさを真正面から描ききったところです。
結末まで見届けて。
これは是非読んで!の【星10】でオススメ決定!
未読の方は、騙されたと思ってぜひ手に取ってみてほしい。
最高の冒険譚がここにあります。
篠原先生、素晴らしい作品をありがとうございました!
ちなみに。
クリストファーノーラン監督で映画化してくれないかな。
絶対面白くなると思う。
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