ラヴァーズ・キス

No.333
カテゴリ:恋愛/学園モノ
オススメ度10 ★★★★★★★★★★
著者:吉田秋生
出版社: 小学館
発売日:1995/11/25(1巻)
巻数:2巻完結

「消耗品にも一応感情はあんだよ」

何年経っても色褪せない。
そんな作品を、人は名作と呼びます。

「BANANA FISH」「YASHA」「海街diary」と。
数々の傑作を描いてきた吉田秋生先生の珠玉のラブロマンス。

2巻完結ですが、その中身は超濃いい。

それがこの「ラヴァーズ・キス」です。

あらすじ

どこか投げやりに夜遊びを繰り返す高校3年生の川奈理伽子。
ある日、タラシと噂の藤井朋章と出会う。
遊びで朋章と付き合い始める理伽子。
そんな彼女の態度を察し、冷たく突き放す朋章。
だがお互いに秘めた過去があり、それを知る事で二人は急速に惹かれ合ってくが…。


感 想
恋がしてぇなぁぁ…。

なんて思ってしまうような。
ピュアなラブストーリーとは違います!

痛い恋。

恋する甘さよりも。
切なさいっぱい。
突き刺さるような痛みがいっぱい。

高校生の男女6人の恋愛模様。
鎌倉、海、高校生とくれば?

もっと爽やかキラキラになりそうなのに。

主要キャラ6人。
みんなディープな問題を抱えてます。

ネタばれになるとアレなので、詳しくは書きませんが…。

親子関係。
姉妹関係。
先輩後輩。

そして!

ボーイ・ミーツ・ガール
ボーイ・ミーツ・ボーイ
ガール・ミーツ・ガール

B・L!! YU・RI!!

なんだ、このカオス!

もう切ない恋愛ファクターがギガ盛りです。


ラヴァーズな人たち。

川奈理伽子(りかこ)。
お互いに傷つきあいながらも朋章と交際を始める。

藤井朋章(ともあき)。
何かと悪い噂のあるイケメン。
深刻な問題を抱えている様子。

鷺沢高尾(さぎさわたかお)。
中学時代はバスケ部で朋章の後輩。
その頃から朋章に憧れる。ピアノが得意。

緒方篤志(あつし)。
鎌倉に越してきたコテコテ関西人。
1年先輩の高尾につきまとう。

川奈依里子(えりこ)。
理伽子の妹。姉妹仲は険悪。緒方とは友達。
姉の親友である美樹に憧れを抱いている。

尾崎美樹(みき)。
理伽子の親友。家は酒屋を営む大家族。
朋章とは幼馴染み。


男女6人恋物語。

とにかく切ない。

それぞれの想いがすれ違います。

男チーム。

❤️→❤️→

女チーム。

❤️→❤️→

みたいな。

お前ら!そのカップリング、なんでよ!
というもどかしさ。

でもそれがいい。

初恋は報われない。

まさにそのジンクスを地でいくようなエピソードの数々。

登場人物がみんな切ない恋をする。

そして、その恋のエピソードを締めくくる、それぞれの「キス」シーン。

嬉しいキス。
悲しいキス。

あぁ、このタイトル!

やっぱ、うますぎるでしょ。


そして「海街diary」へ

この「ラヴァーズ・キス」。
実は吉田先生の最新作(と言っても、もう10年連載してますが)と世界が繋がっているんです。

本作、連載は1995年。
1年で完結。

その後は有名な「YASHA」の連載が始まります。

YASHA 全12巻
(1996〜2002)

で、その続編が来て。

イヴの眠り 全5巻
(2004〜2005)

2007年から始まったのが鎌倉を舞台にした四姉妹の物語。

海街diary 1〜8巻
(2007〜)

この「海街diary」に、なんと「ラヴァーズ・キス」のキャラが出てくるのです。

それも、ファンサービスのようにちょろっと…。

とかではなく!

ガッツリ、ストーリーに絡んでくるんです。

これって、すごく面白い試みではないでしょうか?


時間軸が同じだと!?

「ラヴァーズ・キス」は1995年の舞台設定。

「海街diary」は2010年代が舞台。
本来ならば、20年近く経った後になります。

キャラたちもその後の姿で出てくるはずなのですが…。

なんと、時間軸が一緒なのです!

「海街diary」では朋章もまだ高校生のままで登場します。

まんま「ラヴァーズ・キス」と同じ時間。

なんだ、このパラレル!?

十数年の開きのある作品世界をつなげて同じ舞台にしてしまう。

それが違和感なく読めてしまうのが、吉田作品の凄いところ。

ちなみに朋章は「海街diary」では次女・佳乃の元彼として出てきます。


*ちょっと顔が変わったな。

「ラヴァーズ・キス」で朋章の先輩として出てきた、尾崎酒造の若旦那テルさん。


もう「海街diary」ではなくてはならないキャラに。

緒方もチョロッと出てきます。

後は、長女・幸ねえさんのナース時代の先輩として、朋章の叔母さんが出てきたり。
「ラヴァーズ・キス」では「小笠原でダイビングショップをしている叔母」と紹介されてます。

そこで藤井家の闇がもう一度語られます。

藤井家の「切羽詰まった感」はそういうことだったのか!?
と、あの当時の物語を補填したり。

僕的には、ぜひ高尾くんを出して欲しいんですが…。
彼はまだ出てきてないんです。

「海街diary」の2巻までは、「ラヴァーズ・キス」サイドストーリーのようなエピソードが多くあります。

「ラヴァーズ・キス」と「海街diary」。

これは是非ともセットで読んでおきたいところです。

さて、評価は?

2巻完結。
吉田秋生作品の中では短い作品になります。

しかし、不思議なことに物足りなさを感じません。

高校生活の、ある一瞬の季節を切り取ったようなストーリー。

読み終わっても、その後の彼らの姿を、読み手が勝手に想像してしまうような。

そんなエンディングだからかもしれません。

本当に面白い、の【星10】でオススメです。

全2巻を読む
(1995)


【その他の吉田秋生 作品】

海街diary 全9巻
(2007〜)

イヴの眠り 全5巻
(2004〜2005)

YASHA 全12巻
(1996〜2002)

きつねのよめいり 文庫版全1巻
(1995)
*1977のデビュー作から1982までの作品を収録

PRIVATE OPINION
(1995)

BANANA FISH 全20巻
(1986〜1994)

櫻の園
(1986)
記事を読む

河よりも長くゆるやかに 文庫版全1巻
(1984)

吉祥天女 全4巻
(1983〜1984)

夢みる頃をすぎても 文庫版全1巻
(1983)

夢の園
(1983)

カリフォルニア物語 全8巻
(1979〜1982)

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