無限の住人

No.283
カテゴリ:歴史ファンタジー
オススメ度10 ★★★★★★★★★★
著者:沙村広明
出版社: 講談社
発売日:1994/9/19
巻数:30巻完結

「娘よ!用心棒を雇え」

ついに実写映画が公開になりました。

連載当時「ネオ時代劇」と銘打ったこの作品。

鬼才・沙村広明先生のデビュー作にて、代表作。

やはりこのタイミングで書いておかねば!
と思い、週末に一気に読み返しました。

それがこの「無限の住人」です。

あらすじ

「勝つ事こそ剣の道」という逸刀流統主・天津に両親を殺された少女・凜。

仇討ちのため、不死身の男・万次を助っ人にする。

異形・残虐・悲運……様々な者たちが交錯る、凄惨な剣戟活劇。


感 想
死なない侍。

ハイ、こんなの反則です。

主人公の万次は不老不死。

なぜ不死になったか?
一応説明はあります。
そこは深く掘り下げない。

今作のテーマは不老不死ではありません。

復讐劇です。

ベッタベタの時代劇のテーマ。

ですが。

めちゃくちゃ面白い!

時代考証がどうとか。
歴史がどうとか。
なんで不死身になってんの?とか。

そんなの細かい細かい!
この怒涛のストーリー展開の前には瑣末な出来事。

そう思わせてくれるほど。
活気があり、浪漫があり、陰惨で、醜悪で。

ぐちゃぐちゃにドロドロに。

最高のエンターテイメントがミックスされています。

これは読まないと勿体無い!


無限の住人たち。

万次。
上司である旗本と99人の追手を斬り、100人斬りと呼ばれる侍。
不死身の肉体を持つ。

浅野 凛(りん)
無天一流・浅野道場の一人娘。
逸刀流により両親を殺害され復讐を誓う。
万次を用心棒として雇い、仇討ちの旅に出る。

天津影久(あのつ・かげひさ)。
逸刀流統主。祖父の無念を晴らすため、無天一流を滅ぼす。
国のあらゆる流派を武を持って統一するという野望を抱く。

乙橘槇絵(おとのたちばな・まきえ)
幼少時に天津を野犬から救った天才剣士。
遊女をしていたが天津に身請けされ、逸刀流に加わる。

吐 鉤群(はばき・かぎむら)
幕府の新番組頭。
無骸流を率い、逸刀流の殲滅を企てる。

偽一(ぎいち)
無骸流。黙々と敵の首を狩る手練。
逸刀流の壊滅に貢献する。

ていうか!
まだまだいるんですよ!

魅力的なキャラが多すぎ。

全部書いたら100人いっちゃいますのでこの辺で。


三つ巴の面白さ。

物語の序盤は、万次&凛 VS 逸刀流
逸刀流の剣士たちに万次が次々と挑む、という構図。

わかりやすい仇討ちストーリー。

それがですね。

途中から幕府サイドが入ってきます。

万次&凛 ✖ 逸刀流 ✖ 幕府

この三つ巴になってからが面白い!

あっという間に物語が加速。

敵が味方に。味方が敵に。
三者三様の思惑が絡み合う。

10巻以降、30巻完結まですごいテンションで駆け抜けます。

次々と現れる凄腕の剣士たち。
一癖も二癖もある特殊な連中ばかり。

「不老不死」という絶対的なファクターを持つはずの主人公・万次。

それが霞んでしまうほど。

捲き起こる強さのインフレーション!

物語後半では万次が毎回ズタボロにやられる、というのが定番に(笑)。

どんだけ!

こんなに弱い主人公あるんか!ってくらいやられます。。

でも、不死なんで。

最終的に勝っちゃう。
そこに至る過程がなんともはや。

最高に泥臭い。

これ、僕的に最大の賛辞です!!

ちなみに著者は、今回の映画化にあたってのインタビューで。

万次というキャラについて。

「なんで不死にしちゃったかなぁ…(後悔)」
って語っておられます(笑)


死に様を描く。

この作品の見どころ。

それは何と言っても。

強力すぎるキャラクターたち。

その天晴れな「死に様」です!

ちょこっとした出番のキャラでさえ、死に際を飾っていきます。

30巻をかけて散っていく人たち。
そして生き残る人たち。

これらが全て。

まさに「相応しい結末」。

僕が特に大好きなのは、最低最悪の外道。
万次の宿敵となる無骸流・尸良(しら)の最後。

犯すは、斬り刻むは、その残虐性はピカ一。
毎回胸糞悪いほどの暴れっぷりなのに、なぜか嫌いになれない。

その最悪の外道に相応しい最悪の死に様。

万次との死闘の末の結末には震えました。

これこそまさに沙村キャラの真骨頂!

これほどにクレイジーで印象の強いキャラクターは他に類を見ません。


さて、評価は?

画力が高し!

デビュー時から、天才的画力と評されていました。
時代劇に恐ろしくマッチしています。

ザラザラとした迫力のある作画。

すでに1巻から完成されています。

あとは、女性キャラが他作品も含め、似てるのが特徴。

怜悧で切れ長の眼差し。
きっと作者の好みの顔なんでしょうね。


さて、この作品。
19年間も連載されていたんです!

30巻完結。

各所の伏線を丁寧に回収し、そして迎える大団円。

そしてその大団円から90年後のエピローグ。

「無限の住人」のタイトル通りに。

万次の物語は無限に続く様相を見せ終幕。

まぁ〜読み応えがあります。

魅力的なキャラ。
深いドラマ性。

ただ陰惨なシーンも数多くありますので、女性はちょっと苦手な方もいるかと。

とはいえ。
それで星は引きません。

もちろん絶対読んでおきたい!の【星10】でオススメします。


映画について。

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正直なところ。

漫画作品の実写化は嫌いなんです。

ましてや大好きな作品。

今回の映画。
トレーラーを見た時点で。。。

これはない…

ってなりました。

時代劇なのに。
ドロドロぐちゃぐちゃな世界観なのに。

パリッとした綺麗な衣装を着た役者さんたち。
明らかにメイクとわかる傷跡。
いかにも色つけました、みたいな血糊。

いやいやいやいや。

なんか違うんねん。

観てないのに語るな!

ってお叱りの声が聞こえてきそうですが..。

だって観る気がしないんだもん。

しかも万次さん。
キムタクさん…ですと?

ないな。

100歩譲って、実写化するなら佐藤浩一さんしかいねぇ!
と勝手に思う今日この頃…。

原作大好きのややこしいオッサンの戯言です。。

キムタクファンの皆様、すみません!!

1巻から読む
(1994〜2013)


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