No.268
カテゴリ:ドラマ・サスペンス
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆
著者:TONO
出版社: 朝日新聞出版
発売日:2017/2/7(1巻)
巻数:1巻以下続刊
「それは死に至る病」
花の絵柄の可愛い表紙。
一見すれば恋愛少女漫画のようですが。
違うんです。
毒を含んだ花です。
登場人物みんな人でなし。
それがこの「アデライトの花」です。
あらすじ
親同士の約束で、名家ハント家に南の国から嫁いできたアデライト。
だが花婿クラックにはすでにパイロープとコロナという妻と子がいた…。
それでも二番目の妻としてハント家に残ることを望んだアデライトは、
やがて息子ピートを出産。
同じ年にパイロープも息子キューブを出産する。
やがて子供たちが成長したころ、屋敷の人たちが奇妙な病気を発症。
感染した人が次々と死んでゆく――。
絵柄と内容のギャップがすごい。
綺麗で可愛い作画で描き出すのは、ある名家の残酷な群像劇。
ドロドロです。
鬱々です。
主人公は、第一夫人の息子キューブ。
その彼と同じ視点で描かれる世界。
傲慢なキューブには、家族以外は全て「動物」に見えてしまいます。
なので、登場人物たちは、一部をのぞいてみんな動物。
そのおかげで、作品は一見、とてもメルヘンチックなのです。
それなのに、次々起こる鬱展開。
確かにな。
これは毒だ。
綺麗に見せて毒がある。
これを狙ったのなら、著者さんの企みは成功している。
なんとも甘くどろりと。
怖気が浸透してくる。
そんな読後感です。
ハント家の人たち。
キューブ。
パイロープの息子。
使用人たちが「人」に見えない。
父でさえ鳥に見える。
コロナ。
キューブの姉。
幼い頃に凍った池に落ち、生死の境をさまよう。
パイロープ。
一番目の妻。商人の娘。
許嫁がいたクラックと恋仲になり、コロナができたため周囲の反対を押し切り夫婦となる。
ピート。
アデライトの息子。
ピートやパイロープを嫌っている。
アデライト。
遠い南の国から嫁いできた。
すでにパイロープがいたために二番目の妻となる。
ゆっくりと始まる地獄…?
誰が悪いのか?
主要な登場人物、皆が曲者ぞろい。
優柔不断な父クラック。
毒を吐く祖母。
慈愛の微笑みの下に悪意渦巻く母。
卑しく狡猾な使用人たち。
皆何か問題を抱えています。
可愛い絵柄に隠れた人間の悪意、醜さ。
じわじわと作品が甘く暗く侵されていきます。
そして始まる謎の奇病。
アデライトが南国から持ち込んだ風土病。
全身に花が咲きやがて死に至る。
そして人から人へ感染していく。
甘い香りに満ちた部屋で屋敷の主人クラックがつぶやきます。
アイツが、ヒロイン…だと!?
「あとがき」まで読んで驚愕の事実。
何と著者自らヒロインはあの子です、と告白。
えっ!?
アイツ?
確かに一話目から出てましたが…?
ベロベロとお皿舐めてる、汚いあの?
この物語には大きな秘密がありそうです。
まだまだ何かどんでん返しが待っていそう。
さて、評価は?
作画は好き嫌いが分かれそうです。
緻密ではありません。
描き込みは少なく、白っぽいページが多い。
少女漫画的な独特のタッチ。
特徴あるデフォルメされたキャラ。
でもそれが、不幸なお話なのに、それを感じさせないライトさを演出しています。
これ、劇画調で描かれたら完全に鬱ストーリーですよ。
ミステリー?
サスペンス?
これからどのように展開するのか。
次が気になる【星7つ】でオススメです。
とはいえ。
隔月誌「Nemuki +」に連載の作品。
なので、次巻は1年後でしょうか。
気長に待っておきましょう。
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