春の呪い

No.216
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン/2巻完結
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆

著者:小西 明日翔
出版社: 一迅社
発売日:2016/4/25(1巻)
巻数:2巻完結

「呪いみたいだ・・」

「このマンガがすごい2017」オンナ編、堂々の2位。

となると。
やはり読んでおかねば!

「呪い」だなんて、攻めたタイトル。
お骨を抱いた表紙が妙に暗い…。

と思いながら手に取ったのが、この「春の呪い」です。

あらすじ

妹が死んだ。名前は春。まだ19才だった。
妹が己のすべてだった夏美は、春の死後、家の都合で彼女の婚約者であった柊冬吾と付き合うことになるが…。


感 想
重いな!
でもドラマ性はあり!

死んだ妹の元彼氏と付き合う。
そのことにお互い罪悪感を抱きながら…というのが大筋。

よくあるネタではあります。

ですが、主人公の二人の家庭環境の設定が特殊。
なので、単純に罪悪感という感情で一括りにできない。

親への承認欲求を否定され、その全てを妹に向けてしまった姉。
名門の家柄のため、選択の自由がなかった男。
姉に憧れながら、死期を悟り、姉と彼の行く末を予感し葛藤する妹。

1巻では、ギクシャクしながら。
お互いの傷を埋め合うように付き合う二人の姿。

2巻では、死んでしまった妹のSNSを偶然見つけてしまい…。
隠された妹の本当の想いを知ってしまう。

という構成になっています。

三者三様の人間模様をキッチリ2巻でまとめています。
これは見事。


呪いにかかった人たち

姉・夏美。
社交性があり、明るい性格。
妹のことになると全てが重くなる。
春の死後、条件付きで冬吾と交際をすることになる。

柊冬吾。春の彼氏。
イケメンのスーパーエリート。
家の存続のため、母の言う通りに遠縁の血筋の春との交際を始める。
春の死後、春とは真逆の夏実に惹かれていく。

妹・春。
19歳という若さでこの世を去る。
親の紹介で始まった交際だが、本当に冬吾を好きになる。
死期を悟り、姉への秘めた想いをSNSに残してゆく。


ガッビーン!!

作画はまだまだ巧みとは言い難い。

特徴的だと思ったのは、キャラの心理的な驚きや痛みを表す顔。
それがやたらと多いこと。

ガッビーン!!って。
瞳孔が開きます。

若干狂気を感じてしまうくらい。

しつこいくらい続く。



この顔が無駄に重い雰囲気を醸し出す。

ここまでガビーン!ガビーン!しなくても(笑)

あまりに1パターン。
もう少し違う表情も欲しかった。


呪いとはなんだったのか?

タイトルでもある「春の呪い」。

この春が季節ではなく妹の春を指しているのは明白。

では、妹・春は姉に呪いをかけたのか?

・・・ううん。
かけてないよね。

SNSで想いを綴っただけ。
最後に些細なお願いをしただけ。

何にもしてない。

妹への罪悪感、背徳感。
姉・夏実が勝手に膨らませ、しんどくなっているだけ。

これを「呪い」と言ってしまっては、妹がかわいそう。

ウジウジしてんじゃねぇよ!
妹の分まで幸せになれよ!
それが妹への供養だろ!

と思ってしまうのですが…。

このウジウジを、切なさと取るかどうか。


さて、評価は?

ストーリーのテンポは良く。
ドラマ性もある。
2巻まで一気に読み進めました。

暗い表情でお互い背を向けあった1巻の表紙。
冬の終わりを告げる明るさと、お互い見つめ合う2巻の表紙。

この対比もいいですよね。

限られた登場人物だけで、人間の罪悪感をうまく描いた良作だと思います。

なので【星7つ】とさせて頂きます。

全2巻を読む
(2016)

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