No.144
カテゴリ:ノンフィクション/ドラマ・ヒューマン
オススメ度9 ★★★★★★★★★☆著者:沖田X華
出版社: ぶんか社
発売日:2014/3/1
巻数:1~4巻以下続刊
「もう一つの私の仕事は 命だったカケラを集めることだった」
泣きそうになった作品はいくつもあるけれど。
本当に泣いてしまった作品はそんなにない。
その少ない作品の中の一つ。
それががこの「透明なゆりかご」です。
あらすじ
舞台は1997年。とある産婦人科医院。
そこの見習い看護師の高校3年生・沖田さん。
彼女の目を通して語られる様々な人間模様。
消える命と生まれる命が絶えず交差する場所ー。
沖田さんは産婦人科医院の現実に心を痛めながらも、生まれくる命の力強さに感動し仕事を続ける…。
この主人公・沖田さんこそ、作者本人。
これは作者の沖田X華(おきたばっか)先生が、見習い看護師だった頃の体験をもとに描いた作品です。
まず。
出産経験のある女性なら、涙無くして読めないでしょう。
男の僕でさえ、何回目頭が熱くなったことか。
子供の出産に立ち会った時のこと。
今でもよく覚えています。
ウチは助産院で産みました。
あの新生児が生まれてくる独特の神聖な空気。
そして人生の価値観がリセットされるほどの衝撃。
その色んな体験が読み進めるとフラッシュバックしてきます。
産科の影を描く。
ただですね。。
本作は産科の幸せいっぱいのストーリーではないのです。
光あるところ影があるように。
産科の暗い影の部分のお話が多いのです。
普通では知ることのできない裏の事情。
それが沖田先生の繊細な視点で描かれています。
作画ははっきりいって下手です。
シンプルな絵とモノローグ。
だからこそ。
感情にダイレクトに訴えかけてきます。
それはあまりに語り口が誠実で現実的だから。
タイトルの意味…。
タイトルでもある「透明なゆりかご」。
読むまでは、ファンタジーでハッピーなネーミングだと思っていました。
そうじゃないんですよね。
「透明なゆりかご」の意味がわかった時。
幸せに生まれてくれた我が子のことを思いつつ、そうではないケースがいくつもあること。
ギュッと心が締め付けられます。
この作品は既婚者や子持ち夫婦だけじゃない。
これからパートナーを見つけようとする若い人たちにもぜひ読んでほしい。
【その他の沖田X華作品】
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(2015)