No.191
カテゴリ:サスペンス・ホラー
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆
著者:池辺かつみ
出版社: 日本文芸社
発売日:2012/12/20
巻数:2巻完結
「大キナ事ヲ始メマス…」
何度も読み返す。
漫画はそういうものだと思っています。
でもまれに。
一度読んだきり決して読み返さない。
でも、一度は読んでおきたい。
そういった作品もある。
そんな一つがこの「夜見の国から~残虐村綺譚~」です。
概 要
「あくまでフィクションです。」
と、冒頭に書かれています。
ですが。
日本で実際に起きた、ある大事件を元に描かれたのは明白。
「津山事件」をご存知でしょうか?
太平洋戦争中に岡山県の山間部の集落で起こった凄惨な殺人事件。
たった一人の青年が、約2時間半で33人を殺したという他に類を見ない大事件。
あの「八つ墓村」のモデルになったことでも有名です。
本作は、その「津山事件」をもとに、著者のオリジナル解釈が施され描かれた作品です。
とにかく凄惨。
そして陰惨。
本作はコミック時は全1巻となっていますが、電子書籍化時には上下巻と2冊に分かれます。
それほどのボリューム。
前半はネチネチ。
これでもか!というほど。
陰惨な村での因習、ただれた人間関係、主人公へのいじめが描かれています。
閉じた村社会。
理不尽な扱い。
心身ともに耗弱していく主人公・睦男。
まぁ、これだけじっくり描かれたら、彼への同情も禁じえない。
それほど、主人公・睦男の追い詰められていく様に見入ってしまう。
よくもまぁ、これほど。
ネチネチと描くもんだ!
描いてる方も病まないかな?
と心配になるレベル。
後半は血みどろ。
そして、後半。
ついに睦男による報復?いや、虐殺が幕を開けます。
その後の勢いは凄まじい!
一気にジェットコースター的スプラッター!
100数ページに及ぶ、村人への虐殺シーン。
これも執拗に描く!
圧倒的に酷く。
単に殺していくシーンの羅列ではない。
一軒一軒。
睦男の恨みの深さによって、殺し方の違いを丁寧に。
延々と続く虐殺シーンは鬼気迫る。
そして最後。
全てをやりきったあとの睦男のこの表情。
満足したような。
泣いているような。
この表情の描きかたはすごい…。
魂が乗り移っている、そんな気さえします。
戦時中という特殊な時代背景。
現代とあまりに風習や常識が違いすぎるので、共感は難しい。
でも、これほど追い詰められたら、周り全てを恨んでしまうよなぁ。。
と納得させられてしまう。
それも著者の巧みな技量の証かも。
「津山事件」。
もし詳細を知らない方は、そのまま読んでもよし。
ググって多少の予備知識を得てから読んでもよし。
あえてここでは書きません。
さて、評価は?
作画、構成、ともにクオリティが高い。
読んでいると空気が重くなる。
暗い別世界に閉じ込められたような。
それほどの存在感を放つ作品です。
それゆえに。
陰惨な表現と残虐な表現のインパクトが強い。
耐性のない方にはオススメできません。
特に子供さんは読まない方が良い。
それを考慮して【星8つ】とさせて頂きます。
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