報いは報い、罰は罰

No.366
カテゴリ:ホラー/サスペンス
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆
著者:森泉 岳土
出版社: KADOKAWA / エンターブレイン
発売日:2017/10/12(1巻)
巻数:上下巻完結

「待ちに待ったわ」

本格ゴシックホラーですと?

漆黒に白い字が浮き上がる不気味な表紙。
そして、このタイトル!

なんとも怖そう。

ということで。
ちょっぴりビビりながら読んでみました。

それがこの「報いは報い、罰は罰」です。

あらすじ

アメリカから帰国した清水真椿は、妹・真百合が行方不明になったことを知らされる。

彼女は嫁ぎ先である、妹の大学時代の教授の家に赴くが…?


感 想
うぅむ!
このビジュアルのインパクトはすごい。

この1ページ目!!

どうですか!?

もう、ここを開いただけで。
ただならぬ作品だとわかります。

漫画らしからぬ、アーティスティックなタッチ。

墨絵のように淡く滲んだ線。
あまりに特異なその作画。

著者の森泉先生。
僕は今作が初読みです。

気になったので調べてみました。

その独特の作画法で知る人ぞ知る存在でした。

「紙にまず水で描線を描き、そこに墨を落とす」という独特の技法で描いているとのこと。

そんな描き方してるのか!

デジタルで描くライトな作画タッチの作品が氾濫する時代。

そんな時代に真っ向から逆走しているような。
なんともアナログな手間暇かかる手法で描く。

久々に「作画の力」「絵の空気感」を十分に堪能できる作品です。

そして絵の魅力だけではない。
絵の雰囲気とマッチングしたストーリー。

古典的とも言える「幽霊屋敷」がテーマです。

う〜ん、これこれ!
ゾクゾクします。

これは、読まなきゃもったいない。


報いを受ける人たち。

清水真椿(まつばき)。
離婚し、アメリカから帰国。
嫁ぎ先で妹が失踪したこと知り、小田家を訪問する。

小田真百合(まゆり)。
真椿の妹で道之の妻。半年前に失踪。

小田道之(みちゆき)。
小田家当主。大学教授。

小田狭霧(さぎり)。
道之の前妻の娘。夫とは死別。
一人息子の那美を溺愛している。

小田多紀理(たきり)。
道之の前妻の息子。狭霧の弟。
面倒ごとを嫌がる。

小田那美(なみ)。
狭霧の息子。
屋敷の秘密を知っている様子。

小田葛野(くずの)。
道之と真百合の娘。
真椿にとっては姪にあたる。


古典ホラーの魅力。

舞台は古い洋館。
雪に閉ざされた寂寥たる屋敷…。

何とも古典的なホラーの様相。

枕を抱えて読んでしまいたくなってきます。

しかし無駄な驚かしや、スプラッターな表現は皆無。

ただ、淡々と。
静かに恐怖が心に染み込んできます。

このような読後感は稀有。

いつまでも、心の中に寂しさが残ります。

そして、必要以上に登場人物を増やさない。

全員が何か曰くあり。
怪しさを醸す。

密室劇のような緊張感もあります。


意味深な結末。

やや難解な結末。
意味深です。

一読しただけでは意味がわかりませんでした。

何回か読み直し、なんとなく理解できたところも。

報いとは何か?
罰とは何か?

最後まではっきりとは描きません。

物語の流れと、迎えた結末。
それにより読者が類推するしかない。

「報い」を求めた葛野が真椿に放つ言葉。

「知っちゃたら もう知らなかったときには戻れないの」
「でも知らなかったら 知らないままなのよ」
まさにこれ。
最後、真椿は「知らないまま」でいる選択をします。

つまり、そのまま読者も「報いと罰」の本質を知らされないまま終了します。

モヤっとするなぁ。

屋敷の成り立ちや、呪いの根本ははぐらかされて終わります。

じんわりと憂鬱で不安の残る結末です。


さて、評価は?

とにかく雰囲気が素晴らしい。
この寒々しさ。心細さ。

僕が読んだのは電子版でしたが読んでから「しまった!」と思いました。

この作品は紙の質感がきっと合う。

Kindleだと若干お値段も安いのですが、製本版とそんなに変わりません。
それなら本の読み心地の方が良いと思う。

漫画らしからぬ、この作品。
お値段も普通のコミックらしからぬ!

およそ2倍…。

とってもオススメしたいところですが、そこも考慮し【星8つ】です。

この寂寥たる読後感。
ぜひ味わって頂きたい。

上下巻を読む。
(2017)

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