ムシヌユン

No.309
カテゴリ:SF
オススメ度9 ★★★★★★★★★☆
著者:都留泰作
出版社: 小学館
発売日:2014/7/30(1巻)
巻数:6巻完結

「死にたい」

独特の世界観がたまらない。

現役の文化人類学者でありながら漫画家であるという異色の存在。

そんな著者が描き出すのはディープなSF世界。

それがこの「ムシヌユン」です。

あらすじ

上原の夢は「昆虫博士」になること。
その夢が潰えた今、唯一帰れる場所は故郷である日本最南端の島・与那瀬だけ。
空前の天体現象により異様な熱に浮かされるその島で、上原は彼女と再会した…!


感 想

一言で言うと。

ちんこに寄生獣。

めちゃくちゃ面白いんです。

多分、著者の作品の初読みの方は「なにこれ?」ってなるはず。

それくらいインパクトがあります。

このキャラ。
この設定。
この展開。

まさに異色。
どんなSF、ファンタジーにも似ていない。

かといってサブカルを気取った、読者の感性に委ねるような類いの作品ではありません。

エンターテイメント作品として、面白いんです。

もうね。
先が読めなさすぎ。

話がどう転んでいくか全く予想もつかない。

「ちんこ」にエイリアン的な何かが住み着いてしまう!?

そのぶっ飛んだ発想もさることながら。
稀に見るほど嫌悪感と苛立たしさを覚えるダメダメな主人公!

もう、僕は虜です。


ムシヌユンな人たち。

上原秋人。
昆虫博士を目指して万年院浪人。
極度のコミュ障。

新城かなこ。
初恋の人。地元の名士と結婚している。


ダメダメな主人公!

舞台は世紀の天体ショーが観測できるという日本最南端の与那瀬島(架空です)。

タンゴ星団なる巨大な球状星団が世界各地で観測され、与那瀬は日本でそれが最もよく見えるということで観光客が押し寄せています。

そこへ夢破れた主人公が故郷の与那瀬島へ帰るというところから物語は始まります。

この主人公のコミュ障っぷりの描き方がすごい。

かつてこれほど情けないSF作品の主人公がいただろうか!?

行く先々で怒られ、疎まれ、馬鹿にされ。
ずっと「ハーハー」言ってます。

口下手で、要領も悪く、センスもなく、行動力もない。
社会からこぼれ落ちるべくして、こぼれ落ちる男の悲哀。

それなのに全く同情を感じられず、むしろ嫌悪感を抱きかねない。

(注意)愛想笑いです。

いやはや見事!

これほどマイナス方向へインパクトを残すキモい主人公など、そうそうないぞ。


股間が…。

この漫画はSFです。

空から異星人的な何かが降ってくるという展開。

そして主人公が不思議な力を宿すという。

SFではありがちな王道設定なはずなのに…。

空から何かが降ってきて。
苦悩し絶望する主人公の元へ。
その何かと未知との遭遇!
ちんこと同化。

どうしてこうなった(笑)

股間と同化した昆虫的な何か。
異星人なのか武器なのか。

その秘密が徐々に明かされていくという展開。

異様に変貌を遂げた股間から発せられる膨大な欲情。

やがて食欲と性欲が同義に感じられるようになっていく。

お腹が減ると勃つ。

ここだけ書くと変態SF漫画のようですが、違うんです!!

島に起こり始める異変。
徐々に明かされる迫り来る巨大星団の謎。

めまぐるしく起こる展開はまったく予測つきません。

そしてストーリーは骨太のSFよろしく、だんだんと壮大になっていきます。

4巻に入ると、謎解きが一気に加速。

やがて股間のモノが、人類存亡の鍵を握る重大な「何か」であると判明していくわけですが…。


さて、評価は?

1巻は2014年の刊行。
3年かかって既刊4巻。

ものすご~く刊行ペースは遅いです。

でも、これは待つだけの価値はある。

この作品は、終了を見届けなければ評価はつけられない。

あくまで現時点までの展開だけですが。

先が読めねぇ!面白すぎる!の【星9つ】

ただし。
主人公は腹が立つくらいにキモいです。

そこはご注意を!


6巻を読みました。

(2018.1.30)

【2/19追記】

ついに完結です!

宇宙規模の壮大なスケールにまで展開してきました。

ついに宇宙から来た「生命体」の意図が明らかになります。

全世界で起こる超巨大地震。

地球は「生命体」の意図によって大きく作り変えられようとしています。

その究極の目的とは??

もう、人類の行く末は風前の灯火!!

その人類存亡の鍵を握る唯一の武器となった「股間」!

最高に盛り上がるクライマックス!!!

…と言いたいところですが。。。

人類を守る=虫とS◯X。

何、この図式(笑)

究極の武器を手にしたはずの主人公のはずが…。

キ・モ・イ!

これほどヒーローになりきれなかったSF主人公はいないんじゃないか?

最後の最後まで利己的で矮小で、情けない。

一貫してこのブレのなさは素晴らしい。

さて、最終評価は?

予想のつかないカオスなストーリー展開。

壮大な宇宙規模の結末。

SF漫画史上、最キモ(最高にキモい)の主人公。

まさに異色のSF作品と言ってよいでしょう。

ただですね。

主人公、ヒロインの両方があまりにクセが強すぎて。

他の味のあるサブキャラたちの扱いが終盤にかけて目立たなくなってしまったのが少し残念。

個人的には、とても面白くインパクトを残した作品でした。

ということで【星9つ】でオススメ決定!

主人公のキモさを是非堪能してみて下さい。

全6巻を読む
(2014〜)


【その他の 都留泰作 作品】

ナチュン 全6巻
(2007〜2010)

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