No.229
カテゴリ:ドラマ・サスペンス
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆著者:原作:貴志祐介 作画:三上達矢
出版社: 小学館
発売日:2013/9/30
巻数:3巻完結
「火星の迷宮へようこそ」
最近の電子バナーの広告で見かけて気になっていました。
原作は2002年刊行の貴志祐介先生のサスペンスホラー小説。
大好きなサバイバルもの。
これは読んでおかねば!
それがこの「クリムゾンの迷宮」です。
あらすじ
目覚めた男がいた場所は、地球のものとは思えない深紅色に染め上げられた謎の大地だった。
所持品も何もない状態で、手には側に置かれていた携帯ゲーム機のみ。
電源を入れると、画面に映し出されたメッセージ。
「火星の迷宮へようこそ」
携帯ゲーム機導くこのゼロサムゲームは参加者9人を凄惨な世界へといざなう…。
ハラハラ、ドキドキ。
そんな古臭い表現がしっくりくるくらい。
じっくりと怖がらせてくれます。
今作は漫画のジャンルで言えば、いわゆるデスゲーム系サバイバル。
主人公が突然理不尽なゲームに巻き込まれる!
人知の及ばぬ怪異!SF!ファンタジー!!
…というのが、多いのが最近の流行です。
だがしかし!
さすが貴志祐介原作!!
そんな昨今の安易なデスゲーム漫画の設定とは一線を画します。
無理矢理な、ご都合主義でスタートしません。
主人公は記憶をなくしています。
まず「なぜ此処に連れてこられたのか」そのものが謎になっています。
そして「此処はどこなのか?」という謎解きも物語の重要なファクターとなります。
むやみやたらにゲームイベントが発生し、人が死んでいくようなデスゲームではありません。
そこにあるのは、生き延びるための純粋なサバイバルです。
サバイバルな人たち
登場人物は9人のみ。
藤木芳彦。
会社が潰れホームレスに。
ある広告のアルバイトを見て応募したところ、気づけばこのゲームに参加させられていた。
大友藍。
漫画家。藤木が最初に出会った参加者。
その後行動を共にする。
その他のゲームの参加者たち。
皆、それぞれの理由があり連れてこられた。
それぞれのキャラの性格。
その後出来上がるチームや、その中での関係性など。
サバイバルが進むにつれて目まぐるしく変化していきます。
相手の言動や、それによって起こる駆け引きなど。
キャラたちの心情が緻密に描かれているのは、小説原作ならではといったところ。
ストーリー展開が早い。
作画は緻密とは言い難い。
さらに状況や心理状態を説明するためにモノローグが多い。
なので、若干コマが混みいって読みにくい箇所も。
ただそれも3巻にまとめつつ、テンポよく進めるには必要な作りかも。
無駄な寄り道など一切なく。
あれよあれよと物語が進んでいきます。
このサバイバルの重要なアイテムとして「ゲーム機」があります。
そのゲーム機にゲームマスターからの指示や、サバイバルに関する色々な情報を表示させていくという構成。
登場人物同士の会話シーンを省き、ゲーム機に説明をさせることで、展開のスピードアップを図っています。
後半は追い詰められた人間たちの生死をかけたサスペンス・ホラーと化します。
常軌を逸したその行動。
なぜそのような行動をとってしまうのか?
1巻から張られた伏線。
9人は強制的に参加させられた被害者だったのか?
それとも…参加者の中に主催者がいるのか?
答えは本編で確かめてください。
さて、評価は?
この作品の持つ「迷宮」の意味。
サバイバルのステージの迷宮を指す意味。
そして、エンディングで主人公の心が捕らわれた、もう一つの迷宮。
おそらく彼は、その記憶の迷宮からは一生抜け出せないのかもしれません。
このモヤモヤとしたエンディング。
人によっては消化不良かも?
なのでオススメは【星7つ】。
緻密に描かれたサバイバル。
3巻完結ですが内容も濃い。
原作未読でも十分に楽しめます。
貴志祐介先生といえば、説明不要!
ヒット作を次々と生み出すホラー作家です。
「黒い家」を読んだときは、文章からにじみ出る怖さに戦慄しました。
その貴志祐介ホラーがコミカライズされるとどうなるのか…?
あの怖さは伝わるのか!??
実は貴志祐介作品はコミカライズが多いんです。
ご紹介しておきます。
【その他の貴志祐介原作コミカライズ】