雪の峠・剣の舞

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No.103
カテゴリ:歴史/1巻完結
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆

著者:岩明均
出版社: 講談社
発売日:2001/3/21
巻数:1巻完結

「それは悪し」

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「寄生獣」で有名な岩明均先生の歴史短編。
いや、中編と呼ぶべき?
「雪の峠」と「剣の舞」という2編で構成されています。
だからこのタイトルなのね。

あらすじ

「雪の峠」

関ヶ原後。佐竹家(後の秋田藩)の新城の築城をめぐって、勃発した藩内抗争を描きます。

主人公は若き家老、渋江内善。

回想として上杉謙信のエピソードが出てきます。
それが表紙になっています。


「剣の舞」

こちらは親兄弟を侍に殺された少女の復讐劇。

剣豪・上泉信綱の一番弟子、疋田景忠(ともに実在の人物)。
その疋田景忠に押しかけ弟子志願してしまう男装をした少女。
彼女はその手で仇を討つため、剣術を志す。
そして逆さ鳥居の兜をかぶった侍を探していた…。

と、こちらは時代劇っぽいストーリー。


感 想

歴史漫画って2パターンに分かれますよね。

1、史実をしっかり押さえて描くパターン。

2、史実はあくまでベースのみで設定変更やファンタジーを入れて描くパターン。

本作は明らかに前者です。

史実がまずあり。
「なぜその史実が起きたのか」ということを独自の視点で描く。

ですので、登場人物もほぼ実在の人物から。

本作を描くために、膨大な資料に目を通したであろうと想像できます。

戦国好き、歴史オタクも唸らせるのではないかと。
「時代考証が〜」云々の批評は寄せ付けない。

1編目の「雪の峠」では、家老同士の頭脳戦ともいうべき駆け引きが面白い。

2編目の「剣の舞」では、剣豪・上泉信綱を脇役に据えながら、
その生き様を違う視点で書いているのが面白い。


あとがきに注目してみた。

エピローグは柳生石舟斎と疋田景忠の試合の1シーンで締めくくられます。

巻末の「あとがき」で実在の人物に対する岩明先生の考察が載っているのですが、この上泉信綱の項が興味深い。

「あとがき」から抜粋します。

信綱は実戦からどんどん離れてゆく己が剣技を生かすにはと考え、結局スポーツにしてしまった。

竹刀はその用具と成る。信綱の唱えた「活人剣」については様々奥深い解釈があるようだが、その出発点はこのあたりにあるように思えてならない。

信綱の手先となった疋田景忠が竹刀片手に諸国を回り、スポーツの振興活動をしたと見るのは穿ちすぎであろうか。

うううん??

ちょうど本作が刊行された頃。
かの宮本武蔵を描いた「バガボンド(著:井上雄彦)」でも同じシーンが描かれた後でした。

そこで信綱は試合を挑む石舟斎に対し、優しく微笑みかけ、剣も持たず。
まさに「活人剣」とはかくなるものという存在でした。

さぁ、もう一度、下線部分に注目!

奥深い解釈があるようだが

って!

これ、バガボンドのことじゃねぇ?
言っちゃってねぇ!?

と当時は一人でその意図を拡大解釈し盛り上がっておりました(笑)

細かい部分ですが「あとがき」の考察もぜひ読んでみて欲しい。

全1巻を読む
(2001)


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