No.201
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン/1巻完結
オススメ度10 ★★★★★★★★★★
著者:尾崎かおり
出版社: 講談社
発売日:2013/9/20
巻数:1巻完結
「今までずっと あの娘を守っていたの?」
1巻完結だからこそ、輝きを残す作品ってあります。
これは甘酸っぱい恋愛ストーリーではありません。
もっと淡くて切ない。
それがこの「神様がうそをつく。」です。
あらすじ
東京から転校してきた小学6年生・夏留(なつる)。
クラスの女子に無視され、サッカーチームの新任コーチともソリが合わない。
ある日、捨てネコを拾ったのをきっかけに、大人びたクラスメイト・理生と仲良くなる。
サッカーの合宿をサボって理生の家にかくまってもらった夏留。
そこで彼は、理生の誰にも言えない秘密を知ることに…。
もう、切ない!
子供ではどうにもならないこと。
でも子供同士だから分かり合えたこと。
小学生男子が好きになった女の子ために精一杯頑張るんです。
痛いほど真っ直ぐ。
大人じゃないから、守ってやれないもどかしさ。
それでも、彼なりに頑張る。
その姿が胸を打つ。
嫌味ながむしゃらさや、わざとらしい押し付けなどなく。
本当に自然体で。
一言で言うと「ピュア」。
こんな初恋したいわ。
ストーリーに一切無駄がない。
まるで良質なアニメ映画のよう。
登場人物のキャラがいい。
出てくる登場人物はメインは言うまでもなく、ちょっとしたサブキャラまで人間味に溢れてます。
夏留(なつる)。
転校生で小学6年生のサッカー男子。
理生の秘密を知り、彼女を守ろうとする。
理生(りお)。
クラスの女子の中では浮いていて、無愛想。
夏留の拾ったネコを引き取ることになり、交流が始まる
理生の弟・勇太。
天真爛漫な男の子。
でも、実はわざとそうしているフシもあり。
夏留ママ。
ラノべ作家。
夫を亡くし、女手ひとつで夏留を育てる。
その他にサッカーのコーチや、いじめっ子の女子、旅館のおばさん、etc…。
ちょこっとしか出てこないのに、印象を残していくキャラたち。
こういう脇役までが、手抜きなく描かれている作品って物語に抜群の安定感が出ますね。
う~ん、いい!
心に残るシーンの数々。
ストーリーが進むごとに、印象的な場面が増していきます。
どうしても男子として、夏留くんの方に感情移入してしまいます。
↓↓すみません!ここから若干ネタばれアリです。↓↓
表紙にもなってます。
秘密を共有した夏留、理生、勇太。
3人でお祭りの帰りに雨に打たれるシーン。
3人で逃げます。
追い詰められた二人が押入れの中で抱き合うところ。
そして何と言っても、最後のシーン。
理生を連れて逃げた夏留くんが、逃亡先の旅館で保護されます。
そこに。迎えに来た夏留ママ。
叱るでもなく、ただ一言。
「ずっとあの娘を守っていたの?」
これ!!!
気丈に振舞っていた夏留くんが、ここで号泣!

ダメだ。
ここで涙腺崩壊。
そうだよなぁ。
お前はよくやったよ!
小学生の身で。
好きな女の子を守って、よく頑張ったよ!
これが自分の息子なら、思いっきり頭をくしゃくしゃってしてやりたい!
わかってるなぁ!
子供はこの言葉、欲しかったよね。
作画がいいんです!
少年の一夏の儚い冒険譚。
このシチュエーションに作画が最高にマッチしています。
久々に読み直すと。
あの大ヒットした「君の名は」にタッチが似てる気がします。
もちろん気のせいなのですが…。
ちょっと並べてみました。
小学生の夏留くんと「君の名は」の瀧くん。
中学生になった夏留くんと「君の名は」の瀧くん。
ね?
言わんとしているニュアンス、伝わりますか?
すんごくウケの良さそうな作画というか。
真っ直ぐな瞳。
目が似てるんだよなぁ。
さて、評価は?
この作品は1巻完結だからこそ、良いのだと思います。
二人の淡い恋の儚さが際立つ。
2巻3巻と続けていたら、きっと輝きが色褪せてしまったはず。
無理に引っ張らず、1巻でスパッと完結させた著者の潔さに賛辞を送りたい。
そして余韻を持たせるエピローグ。
もう【星10】!
二人はどうなったのか?
ハッピーエンドを迎えられるのか?
未読の方はぜひ読んで確かめてください。
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