No.355
カテゴリ:歴史ファンタジー
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆
著者:高橋ツトム
出版社: 小学館
発売日:2017/9/6(1巻)
巻数:1巻以下続刊
「俺の任務を解除できるのは総統だけだ」
表紙に浮かぶハーケンクロイツ。
ナチス政権下のドイツが舞台。
ヒトラーの血を引く少年をめぐる物語が開幕。
『地雷震』『スカイハイ』などで有名な高橋ツトム先生の最新作。
それがこの「NeuN」です。
あらすじ
ナチス政権下のドイツ。
両親と暮らしていた少年ノインは、ある日突然ナチスの襲撃を受ける。
少年は総統ヒトラーの血を引く13人の子供の一人だった!?
ノインを密かに警護する命を受けていたテオ・ベッカーは、ナチスを裏切り、ノインと逃避行を始めるが…!?
NeuN =「ノイン」と読みます。
ドイツ語で「9」のこと。
総統・ヒトラーの血を引く13人の子供たち。
その9番目の少年が主人公です。
舞台は1940年。
ナチス政権下のドイツ。
ドイツの各地に預けられ、密かに育てられていたヒトラーの子供達。
その子供たちに、突然の抹殺指令が下ります。
●なぜ、その13人を抹殺することになったのか?
まさに戦争映画のオープニングのように。
主人公の村が突然にナチス親衛隊に襲撃されます。
自分が何者かも知らなかった主人公・ノイン。
影から見守っていた「壁(ヴァント)」と呼ばれる護衛者テオ。
テオは任務解除を言い渡されるものの、命令に背きます。
「俺の任務を解除できるのは総統だけだ」
キターーーー!!
この男臭さ。
これよ、これ!
ノイン抹殺の命を帯びたナチス親衛隊の一部隊を、返り討ちで全滅させてしまうテオ。
超強い。
マジか!
そして始まる少年ノインと護衛者テオの逃避行。
おうおうおう。
ハードボイルドな逃走劇が開幕。
なんだかカッコ良いぞ。
NeuNな人たち。
フランツ・ノイン。
ある田舎町で血の繋がっていない両親と暮らしていた。
ヒトラーの血を引く、9番目の少年。
テオ・ベッカー。
「9番(ノイン)」の壁(ヴァント)。
ノインを密かに警護する命を受けている。
ヒトラーの子供たちの抹殺を決めたナチスを裏切り、ノインと共に逃亡する。
ナオミ・ライジンガー。
「8番(アハト)」の壁。
テオと同じくナチスを裏切り逃亡した。
ウルリッヒ・ノイシュテッター。
ナチス親衛隊医学総監。通称、Dr.U。
ノイン追跡の任務に就く。
これは歴史ファンタジーか?
歴史モノの醍醐味とは?
史実に基づいて、知られざる謎を描くのか。
史実とは違う架空の設定を入れてくるのか。
歴史ファンタジーなのか?
つまり、フィクション性をどれほどもたせてくるか。
前者と後者で楽しみかたが大きく違ってきます。
ヒトラーに13人もの隠し子がいた、というのは明らかにフィクション。
さらに、それぞれの子に引きつがれた特殊な才能があるっぽい。
ということは、歴史ファンタジー?
これから、どのように展開していくのか?
1巻後半で現れる、最強の追跡者Dr.U。
ナチスドイツの狂気をギュッと煮詰めたような男。
こいつのイカレっぷりがすごい!
人のミイラでハーケンクロイツ作ったり。
無能な幹部は私刑と称し血を抜いてしまう。
逃亡劇は、まさに逃亡者と追跡者の攻防戦が見所。
最強の「追跡者」が現れたことで、一気に場の緊張感が増してきました。
このままハードな路線で二転三転する攻防戦を期待したいところ。
ご都合主義的な陳腐な歴史ファンタジーにはならなさそうではあります。
さて、評価は?
濃い、陰影のある独特のタッチ。
ともすれば暗くなりがちな紙面。
でも、それがこの作品にはとてもよく合う。
ザラついた質感の作画が、戦時下の荒廃した雰囲気とマッチング。
さすがは大御所作家といった絵の説得力です。
1巻ずっと通して続くヒリヒリとした緊張感。
おうおう。
これまたハードボイルな良作になるんじゃないか!?
そんな予感がしています。
とにかく1巻は面白かった。
プロローグは文句なし、の【星7つ】でスタートしたい。
当然、次巻も追っていきます。
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