No.327
カテゴリ:ギャグ/ファンタジー/グルメ
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆
著者:九井 諒子
出版社: KADOKAWA / エンターブレイン
発売日:2015/1/15(1巻)
巻数:1〜5巻以下続刊
「これを今日の昼飯にしてみよう」
もはや説明不要。
ファンタジーグルメというジャンルを確立した一作。
その最新刊5巻が出ました。
Amazonでもすでに発売前からベストセラー入り。
押しも押されぬ人気作品となったこの「ダンジョン飯」。
このサイトではなるべく新作をメインに書いていますので、今更超人気作のレビューなど必要ないかとも思いましたが…。
どうも、その「ダンジョン飯」の方向性が変わってきた模様。
どうしたっていうんだ!?
あらすじ
ダンジョンの奥深くでドラゴンに襲われ、金と食料を失ってしまった冒険者・ライオス一行。
再びダンジョンに挑もうにも、このまま行けば、途中で飢え死にしてしまう……。
そこでライオスは決意する「そうだ、モンスターを食べよう!」
スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン!!
襲い来る凶暴なモンスターを食べながら、ダンジョンの踏破を目指す!
おいおいおい。
どうしたんだよ?
完全に作品の空気が変わりました。
前回の4巻で「あれ?」っと思ったんです。
やっとこさ妹のファリンの救出に成功し、大団円か!?
と思われたところからのシリアスな新展開の始まり。
いきなりストーリー漫画みたいになっちゃった。
1~3巻まではモンスターを倒して、ひたすらそれを美味しそうに食す。
基本は一話完結のファンタジーグルメ漫画だったんです。
モンスターというゲテモノ食材を、なんとも美味しそうに調理していく。
ギャーギャー言いながらも、全員で一致団結。
食材ゲット!!
そのズレた可笑しさと、ほのぼのとした空気感が最高に良かったんです。
それが、どうでしょう。
5巻になったら、数多あるファンタジー漫画の一つに成り果ててしまいました。
僕の好きだった「ダンジョン飯」はもうなくなってしまったか…。
それが確信に変わった5巻でした。
ダンジョン飯な人たち。
ライオス。
パーティーのリーダー。
レッドドラゴンに食べられた妹ファリンの救出のため、ダンジョン深部に向かう。
モンスターを食べることに異常に興味を示す。
マルシル。
エルフの魔法使い。
モンスターを食べることに難色を示す。
センシ。
ダンジョンでモンスターの食べ方を研究しているドワーフ。
レッドドラゴンを倒すという目的にひかれ、ライオスのパーティーに同行する。
チルチャック。
ハーフフット。罠発見や鍵開けの専門家。
ライオスに突っ込むお仕事も。
ダンジョン飯の良さは?
モンスターをガチで食べる。
その発想の素晴らしさ。
衝撃を受けました。
ダンジョンの探索という完璧ファンタジーな世界。
そこで倒したモンスターを、限りなく現実(リアル)に調理するという。
そのギャップが最高に面白い。
食材:大サソリと歩きキノコ
調理法も細かい(笑)
確かにキノコの「ヘタ」を入れるといい出汁がでるよね。
あと。
「妹の救出」が最優先のはずなのに。
食べられるモンスター探しに必死な兄ライオス。
![](https://osusume-manga.jp/wp-content/uploads/2017/08/danjon_3_4.png)
そのズレっぷりが最高に可笑しい。
人間行動すれば腹が減るし、飯も食う。
でもファンタジー作品では、今までそんな「冒険以外の生活の部分」を掘り下げた作品がなかった。
そこを無駄に掘り下げたのが、この作品だったんですよね。
だからこそ、唯一無二のグルメ漫画となったわけです。
倒したモンスターをみんなで囲んで食べるとかw
![](https://osusume-manga.jp/wp-content/uploads/2017/08/danjon3_5.png)
ちなみにこの鍋。
センシが普段背負っている「鍋」兼「盾」。
こういう細かいところまで楽しい。
さて、評価は?
とにかく1〜3巻までは最高に面白い。
文句なく【星10】でオススメしたいギャグ漫画だったんです。
それがねぇ。。
4巻からは、本当に普通のファンタジー漫画っぽくなっちゃった。
これも、人気が出すぎた弊害でしょうか…。
著者的には終わりにしたかったのか。
人気作になったため引き延ばしたのか。
真相はわかりません。
でも前回の4巻から明らかに違う方向に舵を切ったのは確か。
グルメシーンはどんどん少なくなり。
3巻までの辻褄あわせをするような、ストーリーの再構築に大忙し。
これ、絶対に最初のプロットと変わってると思います。
もちろん。
ストーリー展開が好きな読者もいるでしょう。
Amazonレビューを覗いてみると、8割近くはまだ大絶賛。
でもね。
最初から4、5巻のようなストーリー漫画だったら、おそらくこんなに人気出てないと思います。
あの1巻の衝撃。
噂が噂を呼び、Amazonでも品切れ。
リアル書店では、大手で1冊入荷していたくらいの扱いだったのに!
数ヶ月後には重版がかかっていきなりドドーンと平積み!
あのパワー!ポテンシャル!
ヒット作が生まれる!
そんな空気に満ちていました。
あれは、こんな凡百のファンタジー漫画のようなもので獲得できるものではありません。
異論は認めます!
好きな人はまだ好きでいてください。
でも、僕は今回の5巻で本当にガッカリしてしまった。
読みたかった「ダンジョン飯」はもう終わってしまった。
そんな気がしています。
まだ評価を確定するには時期尚早。
ということで、まだ【星8つ】でオススメ。
ダンジョンで飯を食う。
そんな漫画に戻ってくれないかなぁ。。
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