きみを死なせないための物語

No.267
カテゴリ:SF
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆
著者:吟鳥子
出版社: 秋田書店
発売日:2017/4/14(1巻)
巻数:1巻以下続刊

「何百年も残されるなんて…絶対に無理」

またも期待のSFの新作が出てきました。

なんとも目を引くタイトル。
美しく地球が描かれた表紙が印象的。

それがこの「きみを死なせないための物語」です。

あらすじ

宇宙に浮かぶ都市文明「コクーン」。

幼なじみのアラタ、ターラ、シーザー、ルイの4人組は、宇宙時代に適応した新人類“ネオニティ”のこどもたちだった。

ある日、彼らは歓楽街の路地で緑の髪の少女に出会う……。


感 想

最初は表紙の印象で、80年代の某少女漫画SFを連想してました。

ファンタジー要素いっぱいな作品なのかな…?と思いきや。

なんのなんの。
いい意味で予想を裏切ってくれました。

独特のSF世界の構築。
細かいディテール。

隅から隅まで「SF的な仕掛け」が施されています。

そして独特の緊張感を醸し出すストーリー。

これはSFなのか?
それともサスペンス?

これからどう展開していくのか?
全く読めません。

この未知数にワクワクしてしまう。

今まで読んだ、どのSFにもストーリーの類似点がない。
なので予測がつきません。


ネオニティな人たち。

アラタ。
東京コクーン出身。
国連大学の学生。
ネオニティのあり方に漠然と疑問を抱いている。

シーザー。
NYコクーン出身。名門の家柄。
アラタ達と親友パートナーを結んでいる。

ターラ。
デリーコクーン出身。
アラタのことを密かに慕っている。
引っ込み思案のところも。

ルイ。
芸術家でインモラリスト。
シーザーの家と繋がりが深い。
アラタ、シーザーを歓楽街に連れ出す。

祇園。
歓楽街の住人。お忍びで訪れた京都コクーンで出会う。
緑の髪の美しい少女。
実は重大な謎をその体に秘める。


ネオニティとは?

SF的な設定が特殊です。

まずこの世界観にのめりこめるかどうか。

主人公は「ネオニティ」と呼ばれる、極端に長命の新人類。
人によっては何百年と生きることも。

20歳なのに、まだ子供の見た目。


⬆︎全員、国連大学の大学生。

面白いのは「全員がそうなった世界」ではなく、遺伝子の突然変異でごく少数がそのような長命種になるというところ。

主人公のアラタも家族で一人だけネオニティとなっています。


⬆︎弟(18)  ⬆︎兄(20)


ギッチギチの契約社会。

他人と接触するのに厳しい制限がある世界。

たとえ子供同士でも契約のない相手に直に接触することさえ許されません。

初めて会った人とご飯を一緒に食べただけで。

なにこれ、ひどい。


テーマは寿命か!?

「寿命が極端に長い」というこの設定。
これをどう使ってくるのか。

アラタやシーザー、ターラ、ルイたちのそれぞれの人生観、生き方の違いが1巻では描かれています。

ネオニティが何百年もの寿命があるのはなぜなのか?

そして、数十年で死んでしまう、光合成をして生きる奇病・緑人(ダフネー)症。

ネオニティとダフネー症の関係性は何なのか?

これが物語の核となりそうです。

1巻の終わり。
研究者となった36歳のアラタがダフネー症に対峙するところで次巻へ。

ううう。
気になるやんけ!

タイトルの「きみを死なせないための物語」。

これはダフネー症に対峙する物語になっていきそうです。


さて、評価は?

作画のタッチは、もろ少女漫画。

濃密な宇宙空間を描くには、少し薄い印象。
線が細すぎるというか。

SFはやはり、陰影がはっきりした硬質な画質でお願いしたいところ。
まぁ、これは好みでもあります…。

1巻では主人公たちの子供時代を描いています。
2巻から大きく物語が動いていきそうな予感。

これは結末を迎えなければ、評価がしづらい作品かも。

何だか傑作になりそうな匂いがするんだよなぁ。

ということで。
これ、どうなるんだ?の【星8つ】でオススメです。

完結まで見届けたら追記します。(いつだろう?)


2巻を読んでみた。

(2017.10.16)

アラタ、ターラ、シーザー、ルイの四人組はそれぞれ大人へとなりました。

ダフネー症の祇園を巡り、一つの大きな喪失を経験した4人。

アラタとターラ、シーザーとルイがそれぞれセカンドパートーナー(触れ合うことができる)へ。

シーザーとルイさん…。

でも、どちらの組も問題ありそう。

そして、アラタの担当する患者、ダフネー症のジジ。

どのように今後の物語に絡んでいくのか?

「死なせない物語」は彼女のことになるのか?

まだわかりません。

さらにアラタの叔父、同じくネオニティのジラフ博士も登場。

数百年も生きるネオニティなのに、1日で記憶がリセットされてしまう病気になっています。

聡明な頭脳をもちながら、数百年も無為な日々を繰り返す人生。
それがアラタの人生観の形成に影響している様子。

なんだか、闇が深くなってきました。

そして明かされる行き過ぎた管理社会の謎の片鱗。

まだ、物語の全体像は見えません。

これからどう展開するのか?

次巻も追っかけます。

1巻から読む


【その他の吟鳥子作品】

アンの世界地図 全5巻
(2014〜2016)

いづれの御時にか 全2巻
(2009〜2011)

架カル空ノ音 全4巻
(2007〜2009)

鎖衣カドルト
(2007)

一人の王にさしあげる玩具
(2006)

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