No.214
カテゴリ:ノンフィクション/1巻完結
オススメ度4 ★★★★☆☆☆☆☆☆著者:高田かや
出版社: 文藝春秋
発売日:2016/2/15
巻数:1巻完結
「カルトの村にいました」
WEB掲載で大反響を呼び、ついに単行本化されたこの作品。
目を引くタイトル。
カルト? え??
なんだこれ?
「このマンガがすごい2017」オンナ編にも18位のランクイン。
それがこの「カルト村で生まれました。」です。
あらすじ
「所有のない社会」を目指す「カルト村」で生まれた著者。
19歳のときに自分の意志で村を出る。
両親と離され、労働、空腹、体罰が当たり前の暮らしを送っていた少女時代を回想して描いた「実録コミックエッセイ」。
「平成の話とは思えない!」って作品紹介の煽りに書いてあります。
まさにその通り。
ただね。
タイトルはやりすぎ。
「カルト」って書けば注目を集めますし。
なんだか編集サイドの意図を感じます。
タイトルのせいで穿って見られる可能性もあるのでは?
これは有名な「ヤマギ◯会」のお話です。
今まで、内部を取材したルポはありました。
ですが、村で生まれ育った人物による体験記というのは初めてじゃないかと。
そういう意味でも、このコミックエッセイの価値は十分にあると感じます。
ヤマ◯シ会って?
<ヤ◯ギシ会とは?>
農業・牧畜業を基盤とするユートピアをめざす活動体。所有の概念を全否定し「無所有一体」の生活を信条としている。
売り上げ規模では農事組合法人のトップに位置している。
ヤマギシズム社会を実践する場である「村」が全国に26か所あり、約1500人が共同生活を営んでいる。
*wikipediaより
村の特徴。
飴玉一箇を全員で共有。
もごもご15秒ずつ舐めて、隣の人に渡していくとか…。
ありえんでしょ!
影響は残っているのかな?
著者はあえて淡々と描いています。
ありのままを絵日記で書いたよう。
著者は今は村から出て一般社会で暮らしています。
その視点で村での生活を省みると。
「これはおかしい」
と思う点がいくつもあるはず。
でも、あえて主観は一切述べません。
批判もしません。
判断することを恐れているのか、放棄しているのか。
それとも今なお集団の中で暮らす仲間のことを思ってのことか。
「とんでもないこと」をほのぼのとした絵で淡々と綴る。
そこに根深いものを感じてしまいました。
離れてもなお、影響は残っているんだろうな。
人格形成をするすべての時間を特殊な環境で育ってきたわけで。
それは「洗脳」というものではありません。
「文化」です。
または「習慣」であり「言語」でもあります。
そこで生まれ育った以上、一生なくすものではないし、消えないものです。
さて、評価は?
この作品は批判的な立場は一切とっていません。
「私の育った村はこんなとこだったよ」
という、あくまで報告。絵日記の羅列です。
そこにプロパガンダ的な要素はなく。
著者もどういう立場でこれを書いたのか、謎。
体験記としての切り口、というか素材が、あまりに特殊で目に止まっただけ。
そこに作家性はありません。
もの珍しさだけでウケてる状態は否めない。
読んでは見ましたが、1、2話くらいで十分かな。
漫画的な面白さはまったくない。
1巻もあると退屈でした。
なので【星4つ】。
続編の「さよなら、カルト村。」もでました。
さてさて。
このネタでどこまで引っ張るのか。
このネタが尽きた時に、初めて著者の作家性が問われそうです。
あえてもう一度戻ってみるというのも。
「ただいま、カルト村!」
ありじゃないでしょうか?
続編出ました。
さよなら、カルト村。
(2017)
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