No.146
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン/1巻完結
オススメ度10 ★★★★★★★★★★
著者:豊田徹也
出版社: 講談社
発売日:2005/11/22
巻数:1巻完結
「人をわかるってどういうことですか」
まるで1本の映画を見るようだー。
そう評され、漫画好きから絶賛される作品。
10年もの間、静かにロングセラーを続けています。
この作品の存在を知らないのはもったいない。
そう思えるほど。
それがこの「アンダーカレント」です。
あらすじ
ある日突然に夫が失踪した…。
夫婦で継いだ家業の銭湯も手につかず呆然と日々を過ごす妻、かなえ。
周りの後押しもあり、銭湯を再開することに。
そこへ紹介で働きにやって来た寡黙な男、堀。
彼は目立たず、ひっそりと、かなえを支えていく。
かなえもそんな掘に少しづつ心を開いていく。
やがて、夫の失踪の真相を知ろうと、かなえは夫の捜索を探偵に依頼することにするが…。
アンダーカレント。
意味は底流。
表面上は穏やかに見えても、その底には何が流れているのか?
人間の心の底流を描いています。
とはいえ、暗い鬱々とした漫画ではありません。
ミステリーのように始まり。
サスペンスのような展開。
ユーモアも各所に散りばめ。
繊細な心理描写。
最後は散りばめた伏線を怒涛の勢いで回収して終わります。
1巻11話でこれほど濃密なストーリー。
類まれな作品です。
素晴らしいの一言。
文句なしに面白いです。
ラストシーンをもう一度。
綿密に物語を紡いできて…。
そしてラストのワンシーンです。
希望の芽を残す、優しいエンディング。
ストーリーのその後を想像せずにはいられません。
すでに既読で「うん?どこに希望があったの?」と思った方。
ラストシーンをもう一度読んでみてください。
最後のカット。
この風景に答えがあります。
ネタバレになるので、これ以上は書けませぬ…。
ジャズを聴きながら。
そして。
もう一点、注目したいのが表紙。
これ、僕的には有名なジャズの名盤「Undercurrent」のオマージュだと思います。
ちなみに「Undercurrent」はジムホール(Gt)&ビルエバンス(Pf)の1962年リリースの作品です。
「Undercurrent」のジャケット。
タイトル名もなく写真のみなんです。
本作「アンダーカレント」の表紙カバー。
外して広げるとこうなります。
ね?
タイトルも同じだし。
きっと意識してやっていると思うんです。
「Undercurrent」を聴きながら、本作を読む。
これも一つの楽しみ方!
唯一の作品となる。
画力も構成力も一級品。
繊細な感性と表現力。
豊田徹也先生の作品をもっと読みたい!
…しかし残念なことに。
豊田先生は超寡作。
刊行されている単行本はわずか3作。
「アンダーカレント」(2005)
「珈琲時間」(2009)
「ゴーグル」(2012)
「珈琲時間」「ゴーグル」はオムニバス作品集。
なのでこの「アンダーカレント」が唯一の長編にして代表作となります。
ああ!
豊田先生の新作を読みたいよぅ。。
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