No.171
カテゴリ:ギャグ/1巻完結
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆著者:石黒正数
出版社: 講談社
発売日:2008/3/19
巻数:1巻完結
「その曲な…トンでもねー秘密があるのです」
「それでも町は廻っている」で有名な石黒正数先生の傑作短編。
悩める若者たちの笑っちゃう群像劇。
これぞまさに石黒テイスト。
それがこの「ネムルバカ」です。
あらすじ
大学の女子寮で同室の先輩&後輩。
バンド活動に打ち込む先輩は、いつも金欠ピーピー状態。
これといって打ち込むもののない後輩は、とりあえず「古本MAX」でバイト中。
ぐるぐる廻る青春のアレやコレやを描いた大学生日常ストーリー。
とにかく二人の掛け合いが面白い。
おバカな日常エピソードが続きます。
テンポよくコメディタッチに描いてますが、これは悩める青春譚。
大学で同じく寮生活をしていた者としては。
うんうん。
と共感するところありまくり。
先輩と後輩。
先輩。ミュージシャンを目指す。
「好きなことをできる時間」に迫ってくるタイムリミット。
現実の壁が立ちはだかる。
後輩。何にも目指すものがない。
ゆる~く流される日々。
「このままではいけない」と思いつつ、ついつい楽な方へ。
お酒飲んでは失敗して…。
「夢」を持っている先輩を見て、何もない自分に焦る。
大学の寮生活ってこんな感じですよね。
色んな人間が集まって。
夢を持ってる人。
まだ夢が何かわからない人。
ちょうどそれが交差する時間だと思うんですよね。
大学時代って。
深いことを突いてくる。
そして本作の魅力は何と言っても。
おバカな寮生活ネタに見せて!
深いことを突いてくるとこ。
何かの「プロ」を目指したことがある人、特にクリエーター系なら思わず「ドキッ」とさせられるセリフが何度も出てきます。
形になるかどうかもわからないもの。
音楽を目指す「先輩」はそれを「壁を掘る」と表現しています。
掘っても掘っても進めない。
ある日、才能のある誰かが、その掘ってる壁をポーンと飛び越しちゃう。
さらに。
ストーリー終盤になって。
ある誘いに乗るかどうか迷う先輩。
そして「乗る」と決めた後「壁を掘る」のを止めて、横にできたドアの中に入っていく。
しかし、ドアの先にある道は、壁を掘って進む先の道とはもう決して交わることがない…と。
ギクッ!
となるわぁ…
商業的なクリエイトをしている人間なら、これは、痛いとこ描かれた!って感じです。
さて、評価は?
おバカな大学生の日常系ストーリーのままで終わるかと見せかけて!
最後に怒涛の展開。
しっかりオチをつけてくれます。
これぞ1巻完結!というラストが気持ちいい。
ちょこっとある後日譚も好き。
全く環境は違うはずなのに。
なんだか昔を思い出してしまう作品。
悩める大学生。
これから悩める大学生。
その昔悩める大学生。
みんなにオススメの【星8つ】。
ちなみに。
本作で先輩の組んでる「ピートモス」のジャケットが目次のところにデザインされてます。
こういう細かいとこまで上手い。
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