No.209
カテゴリ:ノンフィクション
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆著者:大月悠祐子
出版社: 白泉社
発売日:2016/11/1(1巻)
巻数:1〜2巻以下続刊
「”作家としての父” は死んだ」
今、驚異的に閲覧数を伸ばしている一つの漫画があります。
その最新15話は、あまりの衝撃にアクセスが集中。
遂にサーバーが不具合を起こすほどの事態に!
一体どんな作品なんだ???
国民的ギャグマンガ「ど根性ガエル」。
その作者の娘が家族崩壊と再生を赤裸々に綴った漫画。
それがこの「ど根性ガエルの娘」です。
あらすじ
国民的ギャグマンガ「ど根性ガエル」。
しかし作者である父は、大ヒット後にスランプに陥る。
ギャンブル、DV、娘の財布からお金を盗む、そして失踪。
やがて家族は崩壊していくが…。
危険です!
可愛らしい表紙に舐めてかかると、えらいことに!
内容があまりに衝撃!!
「ど根性ガエル」の作者である、吉沢やすみ先生。
そのちょっと無茶なエピソードを娘の視点で面白く描いてるくらいかな〜なんて思ってました。
あかん。
これ、ガチであかん人や。
家族を犠牲にしてしまえるタイプ。
麻雀、パチンコ、ギャンブル、そして突然の失踪。
後に命を絶つ寸前だったほど追い詰められていたことが語られます。
漫画の中で著者は当時のお父さんのエピソードをさらっと面白く描いています。
でもね、これ。
かなりの修羅場です。
ど根性な人たち。
父・吉沢やすみ。
「ど根性ガエル」の作者。
「ど根性ガエル」以降、ヒット作の生まれないプレッシャーに負け、荒んでいく。
13本もの原稿を落とし、突然失踪する。

母・文子。
超がつくほど「ダメンず」好き。
無職となった父に代わり、看護師として家計を支えた。
ほんわか奥さんかと思いきや…。
後にすごいエピソードが明らかに。
姉・ゆうこ
本作の著者。父の背を追い漫画家に。
父と母に挟まれ、相当に辛い幼少期を過ごしたことが伺える。
夫は漫画家の大井昌和氏。
弟・やっちん。
父の放蕩ぶりを見て育ったためか、堅実な職に。
「家族を守る」ことを第一命題にしている。
結婚し、両親と同居している。
描きたかったのはこれだったのか!
荒んでいた家庭が紆余曲折をへて再生していく。
多少の脚色はあるかもしれないが、いわば感動のストーリー。
…と思っていたら。
いやいやいやいや。
違うやん!!
今までめちゃくちゃオブラートに包んでたんですね。
最新の14話、15話を読むと。
1巻2巻(1〜12話)はあくまでフリでしかなかったことがわかります。
15話の冒頭。
当時の編集者とのやりとり。
酷いエピソードは描かないということに。
いや、違うでしょ。
読者はそこを読みたいんでしょ!
反響が大きくなるにつれ、リアルを求める声が編集部に届き始めたのでないか?
ここ、数話で大きく方向転換をした気がします。
1、2巻でもそれなりに酷いエピソードはありました。
でも、どこか嘘くさいなと感じていた部分。
特にこれほど無茶苦茶な父を支え続けたお母さんのこと。
本当に?こんな人いるの?
と思ってましたが。。
14話では、今までほんわかエピソードの多かったお母さんの壊れたシーンが多数出てきます。
崩壊する家族を支えようとしていたお母さん。
そしてはついに壊れてしまったお母さん…。
そのしわ寄せは全て娘である著者に行っていたのですね…。
これは辛すぎる。。
まさにアダルトチルドレン。
どれほど著者が父に傷つけられてきたか…。
母のサンドバッグとなっていたか…。
これはガチであかんヤツ。
カウンセリングや児童心理学を学んでいる方なら絶句するでしょう。
著者はアダルトチルドレンそのもの。
「家庭問題を持つ家族の下」で育ち、その体験が成人になっても心理的外傷(トラウマ)として残っている人をいう。
これ、描いても大丈夫なんだろうか???
と思う内容です。
著者の作家としての覚悟に感服します。
何があってもこの作品を描きあげるぞ、という意思を感じます。
漫画に描くという行為は、著者にとって大きな意味を持っているのだと思います。
家族の再生、自身の再生を行うために。
さて、評価は?
内容はコメディタッチのエッセイ漫画です。
だめんず父のエピソードを面白おかしく描いた作品。
だけど。
笑えるか?
笑えないか?
楽しめるか?
苦しくなるか?
これは、きっと読む人によって大きく違うでしょう。
そういう類の作品です。
最新話を読むと、その内容に絶句。。
もう、星いくつなんて言ってる場合じゃない。
とりあえず【星8つ】とさせて頂きますが、これはもう!
未読の方はぜひ自分の心で判断してみてほしい。
こちらで最新話を読めます。
➡︎ヤングアニマルDensi『ど根性ガエルの娘』
【その他の大月悠祐子作品】