スピリットサークル

No.390
カテゴリ:ファンタジー
オススメ度10 ★★★★★★★★★★
著者:水上悟志
出版社: 少年画報社
発売日:2012/12/10(1巻)
巻数:6巻完結

「生まれ変わりって 信じる?」

前回、水上悟志短編集「放浪世界」をご紹介しました。

その水上先生の代表作と言っていいでしょう。

輪廻転生をテーマに描く、壮大なストーリー。

現代版の「火の鳥」だ!
そう評されることも。。

それがこの「スピリットサークル」です。

あらすじ

桶屋風太は中学2年生。
平凡な中学生生活だったはずが額に大きな傷のある美少女の転入生・石神鉱子の出現によって一変する事に!
壮大な輪廻転生スペクタクル!


感 想
この漫画がすごい!
名作です!

なんて軽く言ってしまいがちな昨今。

名作の定義が曖昧になりつつあるのを感じます。

僕の名作の定義。

いつまでも心に残る。

これです。

そんな作品を「名作」と呼びたい。

そういう意味で、この作品は間違いなく名作と言っていいと思います。

でも。

でも!

この作品はねぇ。。

表紙で損をしている!!

可愛いキャラクター。
一見すると、数多ある霊能力バトル漫画っぽいです。

事実、表紙買いを信条とする私。
何度かスルーしておりました。

「これ、絶対面白くないやろ。。。」と。

違いました。
ぜんぜん違いました!

とにかく読んでみてください。

この絵柄と表紙からは想像もできないほど。

不思議で、複雑で、巧みで、魅力的で、感動的な物語。

これは読まなきゃ、勿体ない!!


サークルな人たち。

桶屋 風太(おけや ふうた)。
平凡な中学2年生。
転校生の鉱子に一目惚れしてしまう。
実は前世からの因縁がある。

石神 鉱子(こうこ)。
前世の記憶を持つ女の子。毒舌。
因縁の敵の生まれ変わり、風太を滅するためにやってきた。

ルン
風太の過去生、フルトゥナが作り出した人工精霊。
風太をマスターと呼び、付き従う。
スピリットサークルを預かっていた。

イースト。
鉱子のそばに寄り添う背後霊のような存在。
風太にはその姿が見える。
風太と鉱子の前世に深く関わっている。

スピリットサークル。
風太の前世、フルトゥナが作り出した。
そのサークルで殴られると、前世を見ることができる。
本当の使用法には秘密がある。


前前前世。

某アニメの主題歌みたいで、すみません(笑)

この作品は輪廻転生がテーマです。

風太と鉱子。
二人はなぜ殺しあわなければならないのか?

その因果の謎を解き明かすため。

主人公・風太がスピリットサークルを使い、7つの前世を旅します。

前世。前前世。前前前世!

RADWINPSの歌詞が鳴り響きます。

前前前世から僕は
君を探しはじめたよ。
まさにこれ。
7つの前世。
ある時は靴屋の倅、フォン。
ある時は騎士、ヴァン。
ある時はスフィンクスを作ったフロウ。
ある時は刀鍛冶、方太郎。
ある時は人類の滅びを見届けるラファル。
ある時は宇宙人に不思議なものを託された風子。
そして、全ての因果の元凶フルトゥナ。

一つの過去生エピソードが、1巻弱くらいの長さ。

そして一つ一つのエピソードが、これまた面白い。
よくできた短編のようです。

最初は単に、時代背景もジャンルも違う7つの短編ストーリーの羅列のように見えます。

それが、物語が進むにつれ…。

途中から複雑に絡み合い、最後には見事繋がります。

登場時は単なるモブだと思っていた同級生や先生、親、兄弟。
すべての登場人物が過去からの縁あるつながりを持っています。

ある過去では友であり、師であり、恋人であり、妻であり。

え、あの人は、この人の生まれ変わりなのか?
え、あの人って、あの時のあの人??

みたいな仕掛けがあちこちに。

その伏線の回収が、お見事!

過去から未来、未来から過去へ。
全ては因果の流れ。

どんどんとスケールは深く、暗く、大きくなっていきます。

やがて、全ての始まりとなった、ある人物の時代へとたどり着きます。

そこで風太が見た驚愕の事実とは?

そして怒涛の結末へラストスパート!
地球規模のスケールへ!

時の螺旋の渦をジェットコースターに乗ってビュンビュンくだっていくような。

そんな興奮と高揚感を感じます。

読んでいるとスピリチュアルなメンタルがビンビン刺激されます!


許す力こそ。

印象的な、ラストシーン。

因果の流れで憎しみあった、傷つけあった二人の前世たち。

因縁に縛られた者同士が、相手を許し握手をしていきます。

ここまで壮大な物語を読んでくると、その単純なカットの羅列にもう感無量。

ここへきて涙腺はゆるみっぱなし。

そして、最後の最後。

鉱子の因果の始まりである過去生のコーコ。
彼女が鉱子に訥々と語ります。

その言葉があまりにも哲学的。

深く考えさせられてしまいます。

そこはぜひ、本編でチェックしてください。


さて、評価は?

おそらく。

これから読む人は、きっと一気読みしてしまうはず。
それくらい、物語に勢いがあります。

印象的だったのは、最終6巻の水上先生の巻末あとがき。

”賛否両論の結末だと思います。
納得いかない人は、自分で描いてみるといいよ”

的なことを書いておられます。

それは「描けもしないのに文句言うなや」というような、不遜なメッセージではありません。

”納得できなければ、自分で新たに作っちゃえばいいじゃない。
そうやって「作り手」が生まれていくんだぜ”
みたいな。

「作る」という因果が生まれ繋がっていく。
その本質を捉えている言葉だと思います。

壮大な物語を描き終えた後で、そんなフレーズをさらりと書いてしまう。
これってすごい。

6巻完結とは思えないほどの内容の濃さ。

もちの、ろんの【星10】でオススメです。

未読の方は是非、読んでみて頂きたい!

1巻から読む
(2012〜2016)


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