ノイズ【noise】

No.415
カテゴリ:ドラマ・サスペンス
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆
著者:筒井哲也
出版社: 集英社
発売日:2018/5/18(1巻)
巻数:1巻以下続刊

「ああいう人間てのは 本当にいるんだな」

『マンホール』『予告犯』とクライムサスペンスの秀作を世に送り出してきた筒井先生。

その新作が出ました。

日常生活が、一人の男の存在で崩されていく。。

心がざわざわとさせられます。

それがこの「ノイズ【noise】」です。

あらすじ

のどかな田園風景が広がる猪狩町。
イチジク農園を営む泉圭太のもとに鈴木睦雄と名乗る怪しい男が現れる。
彼は14年前に女子大生ストーカー殺人を犯した元受刑者だった。
平穏な地域社会に投げ込まれた異物が生んだ小さな波紋(ノイズ)が、徐々に広がっていく――!!


感 想

さすがです。

これぞクライム・サスペンスの真骨頂。

期待通りの出来です。

面白い。

筒井先生の描くクライムサスペンスは、ド派手な犯罪ではありません。
猟奇的に殺しまくったり、理不尽すぎる展開などありません。

あくまでリアルに。

閑静な田舎町に、突然に放り込まれた異物。
その異物たる「よそ者」が起こす小々波。
しかも、その人間にはどこか仄暗い匂いが漂う…。

この日常が、じわりと崩されていく恐怖。
善良な人間が、犯罪に巻き込まれていく怖さ。

疑心暗鬼。

こういう描写が上手いなぁ!

誰にも起こりうる「突然壊される日常」を描いていきます。


ノイズな人たち

泉 圭太。
猪狩町の特産品となった「黒イチヂク」を栽培する農園を経営。
妻と娘とは別居中。

田辺 純。
圭太の農園を手伝う。猟師でもある。

鈴木 睦雄。
圭太の営む農園に働き口を探して訪れる。
かつてストーカー殺人を起こし、出所したばかり。

守屋 真一郎。
城北警察署 巡査。
猪狩町に配属されたばかりの新米警官。

畠山 努。
愛知県警捜査一課の刑事。
かつて睦雄を逮捕した。その出所後の足取りを追う。


嫌悪感がピカイチ。

何というか。

生理的嫌悪感を引き起こす。

その描写がうま過ぎ。

物を奪う、嘘をつく。

そのことに全くの躊躇もない。
良心の呵責も感じない。

一見して人当たりの良さそうに振る舞いますが…。

この細い目の奥…。
目の奥が笑っていない。

そして意に沿わない相手だとわかると、途端にスイッチが入り攻撃的な態度になる。

こういった犯罪者気質を感じるちょっとした描写が秀逸です。

そして、圭太の奥さんを見かけた時のこの反応。

ぞわわわわ。

怖すぎる。

この鈴木睦雄というモンスターに、嫌悪感が湧きっぱなし。


予想外の展開!?

一人の元犯罪者が田舎町に入り込み。
平和な日常をじわじわと侵食していく物語か?

と、思っていたら。

ううん???
予想外の展開きました。

まさかこうなるとは!

書いてしまうとネタばれになるので、書きませぬ。

でもなぁ。

まさかこっちかぁ。

気になる?

気になりますよね?

ハイ、気になる方はぜひ本編でお確かめ下さい。


さて、評価は?

筒井先生の作品は初期短編の頃からずっと読んできています。

一貫してるのはストーリーに「無駄がない」こと。

『マンホール』『予告犯』3巻完結。
『有害都市』2巻完結。

限られた登場人物ながらも、決して物語は小さく終わらない。
でも遠回りはしない。
だらだらともせず、一直線にエンディングまで駆け抜ける。

そして、毎回。
善良な人間が巻き込まれる。

だからこそ。

すっきりとしない読後感を残します(苦笑)

「ああ、面白かった」で終わらないのが素晴らしい。
必ず、何かの爪痕を残していくんですよね。

そういう意味で「心に残りやすい」作風だと思います。

本作は、1巻後半の展開で、やや拙速すぎる感もアリ。
ただ、筒井先生のことなので、きっと上手く着地するはず。

ということで!
期待を込めて追っていきたい。

まずは【星7つ】でオススメ!

予想は、今回も3巻完結です。

1巻から読む
(2018〜)


【その他の 筒井哲也 作品】

有害都市 全2巻
(2015〜2016)

予告犯 全3巻
(2012〜2013)

マンホール 全3巻(新装版は全2巻)
(2005〜2006)

リセット
(2005)

ダズハント
(2005)

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