No.375
カテゴリ:ドラマ・サスペンス
オススメ度9 ★★★★★★★★★☆
著者:三部けい
出版社: KADOKAWA
発売日:2017/12/4(1巻)
巻数:1巻以下続刊
「見つけたぞ!」
期待値MAXの作品が登場です!
「僕だけがいない街」で一気に大ブレイクした三部けい先生の最新作。
家族を殺された少年が、犯人を追う、ミステリーサスペンス。
それがこの「夢で見たあの子のために」です。
あらすじ
幼少期に家族を惨殺された中條千里。
幼い千里に残されたのは、双子の兄が最後に見た光景だった…!?
千里の、人生の全てを懸けた復讐劇が始まる…。
ザ・復讐劇です!
主人公は復讐に全てを賭ける少年。
そのためにはゆすり、たかり、他人を傷つけることも厭わない。
わかってらっしゃる!
暗黒面を抱えた主人公というのは、復讐劇の鉄板です!
前作「僕だけがいない街」はミステリーの秀作でありながら、主人公が「過去に戻る」という能力を持っていたために、どこかファンタジーな作品となってしまいました。
それが純粋なミステリー、クライムサスペンスを楽しむ者としては、残念だったところも。
今回も主人公は能力持ち。
でも、前作のような反則的なファンタジー要素ではありません。
双子の兄と「視覚、痛覚を共有できる」というもの。
その能力で連れ去られた兄が見た「最後の光景」として誰も知らないはずの犯人の特徴を見ていた、という仕掛け。
「過去に戻る」に比べれば、まだ現実味がありますよね。
夢で見る人たち。
中條千里。
双子の兄と「視覚・痛覚」を共有できる。
事件の日、納戸に隠れていて難を逃れた。
犯人への復讐を決意する。
一登(かずと)。
双子の兄。いつも弟をかばう優しい少年。
事件の夜から消息不明。
琴川 恵南(えなん)。
千里が預けられていた擁護施設での幼馴染。
壮絶な過去を持ちながらも、明るく前向きに生きている。
千里のことを気にかけている。
火の傷の男。
千里一家を殺した犯人。
腕に「火」のような傷跡がある。
今回の能力は?
本作の大前提として。
主人公が双子の兄と「視覚・痛覚を共有する」というのがあります。
殴られた痛み、そしてその時に相手が「見たもの」を共有出来るというもの。
まぁ、これでも。
十分にファンタジー設定ではあります。
13年前の事件の夜。
千里は両親のケンカのとばっちりを避けるため、兄と交代で納戸に隠れています。
その日、明らかにいつもと外の様子が違う。
そして、突然に襲う肩がねじ切られるような痛み。
恐る恐る納戸から出ると、周りは血の海。
兄の一登はいない。
肩の激しい痛みとともに。
一瞬、一登の見ている風景が見えます。
それは雨の中。
無理やり腕に傷のある男に連れ去られていく光景。
ここで、意識は途切れます。
一登は殺されたのか…それとも!?
「火の男」を追う。
復讐を誓った千里。
しかし、犯人の手がかりは一切なく、捜査も手詰まり。
やがて13年後。
たまたま見ていたローカルTVの工場の取材。
あ!?
腕に火の傷のある男を発見します。
なんちゅー偶然!!
ここから物語は展開していきます。
その映像を手がかりに犯人を追い始める千里。
おうおうおう!
オラ、ドキドキしてきたぞ!
ここからは是非、本編でお楽しみください!
さて、評価は?
ヒットした「僕だけがいない街」とテイストは似ています。
前作が好きな人は、ハマるはず。
サスペンスでありながら能力アリの設定を可とするか。
これは人によって意見の分かれるところでしょう。
限定能力も今のところ、大げさなファンタジー要素になっていないので、純粋なミステリー好きの方でも許容範囲ではないかと思われます。
物語の展開は早く、サクサク進みます。
伏線を散りばめながら、どんどんと新たな謎が出てくるという。
三部先生お得意の構成。
さすがに面白い。
前作が大ヒットしただけに。
その新作には期待がかかり、読者のハードルも上がってしまうもの。
著者のプレッシャーたるや、いかばかりかと…なんて想像してしまいます。
でも、そんな心配は杞憂。
見事に唸らせる、上々の滑り出しといえるこの1巻。
右肩あがりに面白くなりそうな予感がプンプン。
ということで、今後が楽しみな【星8つ】でオススメです。
これは結末まで追っかけていきたい。
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