No.263
カテゴリ:ファンタジー
オススメ度6 ★★★★★★☆☆☆☆
著者:タカハシ マコ
出版社: 講談社
発売日:2017/2/7
巻数:上下巻完結
「やっと出られた」
自殺を決意した少女と、認知症の祖母のストーリー。
いきなりぞわぞわくる、この設定。
どんな内容なんだ!?
ということで読んでみました。
それがこの「脳内アリス」です。
あらすじ
認知症の祖母の介護とアルバイトに人生のすべてを捧げていた少女・灯莉。
自殺を決意した日、祖母の背中から「アリス」と名乗る少女が現れた。
アリスは「私を殺した人」のところへの道案内を灯莉に頼むが…。
なんともはや。
不思議な読後感。
なんだろうこれは?
煙に巻かれる。
脳が????で満たされる。
読者を無視した著者の独りよがりな表現ではなく。
理解(わか)りたいのに、わからない。
ついていきたいのに、置いていかれる。
でも、それが嫌じゃない。
仕掛けられた不思議なストーリーに迷い込んだ気分。
出口がわからない。
わからないうちに物語が終わり、現実に引き戻される。
本当に不思議な空気感を伴った作品です。
これはアリなのか!?
アリスって何?
死を直前に控えた人のみに現れます。
その人の持つ「感傷、感情」が具現化したもの。
本人とは別の意思を持ち、喜んだり悲しんだりする存在。
お迎えに来る存在ではありませんが、死期に現れるというのは「死神」にイメージが近いかもしれません。
アリスな人たち。
宇佐美灯莉(ともり)。
祖母の介護をしている。
母親は出て行ってしまった。
祖母の言いつけを守り、目立たぬようひっそりと生きてきた。
おばあちゃん。
認知症を発症している。
正気の時は清廉さと慎みを過剰に灯莉に求める。
ボケた時は少女に戻る。
アリス。
おばあちゃんの背中から出てきた。
自分を殺した人のところへ案内して、と灯莉に頼む。
テーマは死とメルヘン。
「あとがき」で著者は今作のテーマを「死とメルヘン」と語っています。
なるほど。
この不思議な読後感はこれだったのか。
作画は繊細で綺麗でファンタジーなのに。
ずっと渇いたような、冷たいような。
そんな「無常」とも言える雰囲気があります。
二人が目的地に向かう道中で、出会う「アリス」と共にある人たち。
それはつまり「間も無く死を迎える人」です。
電車で乗り合わせたおばあちゃんとアリス。
砂浜で出会うお母さんとアリス。
死期を悟った、もしくは受け入れた人たちとの交流。
常に漂う死の匂い。
その道中のエピソードが、さらに無常感を演出していきます。
そして迎えるクライマックス。
「アリス」の目的とは何なのか?
灯莉の母はどうなったのか?
全てが繋がるラスト。
上巻での伏線を回収していくのですが、そこで気を抜くと置いていかれます。
アリスの意味。
その解釈。
切り離した感情、感傷、と一つになるとは、どういうことなのか!?
このラストはとても独特な表現だと思います。
さて、評価は?
表紙は原色の濃い、ポップなデザインですが。
中身は繊細なタッチの作画です。
表紙の印象からすると、いい意味で裏切られました。
ラストをどう受け取ればいいのか、読後にもう一度読み返しました。
う~む。。。。
これは読む方の感性も求められそうです。
人によっては「???」がつくかも。
ということで【星6つ】でオススメ。
この不思議なお話をぜひ体感してみてください。
【その他のタカハシ マコ作品】