No.188
カテゴリ:ホラー
オススメ度4 ★★★★☆☆☆☆☆☆著者:伊藤潤二
出版社: 秋田書店
発売日: 2014/12/19
巻数:1巻完結
「チューチュー吸わせておくれ」
ホラーコミック界の旗手・伊藤潤二先生の連作短編ホラー。
2013年~2014年に発表された伊藤作品の中では新しい作品です。
それがこの「溶解教室」です。
あらすじ
ある日、転校生として街にやってきた兄妹。
悪魔に魅入られた青年・夕馬と、史上最凶の妹・ちずみ。
謎の兄妹が引き起こす身の毛もよだつ怪奇な事件。
おそらく昔から伊藤潤二作品を読んできた方なら、同じような感想を持つはず。
どうしちゃったの?
と思わずにいられない。
ぶっ飛んだ発想。
溶けていく人間のグロい表現。
ブラックコメディ風な作り。
ホラーとギャグ。
この絶妙なバランス感覚が魅力の伊藤作品。
これまでの作風と大きく変わっていないはず。
でも、何かが違う…。
どっちつかずというか…。
何だか、雑。
作画が雑、という意味ではないです。
醸し出す雰囲気。空気感。設定。オチ。
ストーリーのすべて。
以前の作品と比べて、ゾクゾクするような魅力がない。
ちなみに、僕は20年近く伊藤潤二作品を読んできています。
熱烈なファンではありませんが、新作が出ればチェックします。
なので、この作品の違和感は拭えない。
溶解な人たち。
兄・夕馬。
伊藤作品でおなじみの細面のインテリ風なイケメン。
夕馬の謝罪を受けた人は悪魔の電磁波を受け、脳が溶けます。
妹・ちずみ
夕馬の溶かした人間の脳をチューチュー吸います。
恋もします。
ビジュアルのインパクトはすごいですが最凶というほどでも。
兄の凶行を周囲の人に伝えたり、意外といい子。
で。
とにかく溶ける。
みんな溶ける。
兄が謝ると・・・・。
こうなる。
グロし。
溶ける推し。
最終的にすべてを「悪魔のせい」にしているのが安直な気がしてしまいました。
いつもは
「なんだこのオチは?」
「なんでこんな発想ができるんだ?」
と、いい意味で裏切られることが多かった。
そういうエッジの効いた結末ではありません。
とにかく「溶ける」一本で押し通します。
さて、評価は?
前回の記事で星9つで紹介した「潰談」を書きました。
それが2003~2006年発表の作品。
そこから10年。
発表のペースもめっきり遅くなり。
やはりパワーダウンは否めないか…。
いや、そんなことはないはず。
才能の枯渇という言葉でまとめたくはありません。
今作はたまたま。
ということでの【星4つ】。
新たな怪異譚に期待したい!
本作は心理的な怖さはありません。
気持ち悪さや嫌悪感を刺激する作品となっています。
グロさが好きな方はどうぞ。
【その他の伊藤潤二作品】
*伊藤先生の短編集は様々なヴァージョンで刊行されています。
収録内容がかぶる場合もありますので、幾つかは省略しています。
電子書籍化しているものを中心に載せています。
第1巻 富江 上
第2巻 富江 下
第3巻 双一の勝手な呪い
第4巻 死びとの恋わずらい
第5巻 脱走兵のいる家
第6巻 路地裏
第7巻 首のない彫刻
第8巻 うめく排水管(記事を読む)
第9巻 墓標の町
第10巻 フランケンシュタイン
第11巻 潰談(記事を読む)
うずまき 全3巻
(1998〜1999)
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