No.388
カテゴリ:ドラマ・サスペンス
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆
著者:鈴木マサカズ
出版社: 日本文芸社
発売日:2017/11/20(1巻)
巻数:1〜2巻以下続刊
「まじで世も末だな」
最新2巻が出ました!
前回に続いて鈴木マサカズ先生の作品をご紹介します。
ドクロが怪しいオーラを放つこの表紙。
ホラーなのか? デスゲーム系か?
いえいえ違います。
薬物犯罪の闇を描いた問題作。
それがこの「マトリズム」です。
あらすじ
覚醒剤、大麻、MDMA…
一度薬物の餌食になった人間は、決して引き返せない道を往く。
あらゆる薬物犯罪を、追って暴いて捕まえる二匹の猟犬。
彼等の職業は麻薬取締官、通称「マトリ」。
草壁と冴貴、二人の捜査を通じて現代社会の深き闇を抉り出す!
麻薬取締官= 通称:麻取(まとり)。
麻取ズム = マトリズム!
上手い造語だなぁ!
ということで、このタイトルからお察しの通り。
麻薬取締官の奮闘を描くストーリー。
と、言いたいところですが!
本作のテーマは麻取の活躍ではありません。
刑事モノのような起承転結のあるエンタメ要素が見どころではなく。
描いているのは。
薬物中毒の怖さ。
それがドクロを表紙にしている理由ではないかと。
ドラッグを売る人間、買う人間。
ストレスから逃れるため…。
すべては、ちょっとしたきっかけ。
市井の中に生きる「フツーの人々」が薬物犯罪に手を染めていく。
その過程をリアリティたっぷりに描いています。
まさに、薬物犯罪ドキュメント。
これは、、、怖い。
マトリズムな人たち。
草壁 圭五郎(くさかべ けいごろう)。
容疑者を平気で殴る、蹴る。
切れ者だが、問題を起こしがちな捜査官。
薬物犯罪を心から憎んでいる。
冴貴 健一(さえき けんいち)。
冷静沈着。草壁を諌める役割。
草壁とコンビを組むのに納得はしていない。
この怖さ、伝わりますか?
薬物犯罪撲滅の啓蒙か?
と思ってしまうほど。
本作から滲み出ているのは、薬物犯罪への警鐘。
そして薬物中毒の怖さ。
その入り口はいたるところに。
驚くほど身近にあります。
ある主婦は。
夫の浮気によるストレスから逃れるため。
![](https://osusume-manga.jp/wp-content/uploads/2018/01/matori_2_1.png)
ママ友に勧められ、始めてしまいます。
数週間もしないうちに中毒へと。
おかしいと気づいても。
わかっていてもやめられない。
![](https://osusume-manga.jp/wp-content/uploads/2018/01/matori_2_2.png)
あるフリーターの男は。
日々の仕事のストレス、そして軽い興味本位から。
![](https://osusume-manga.jp/wp-content/uploads/2018/01/matori_3_3.png)
手軽にネットで買ってしまいます。
普通の人は、覚せい剤を手に入れたとしても。
どうやって使っていいかわかりません。
でも、大丈夫。
やり方だって。必要なものだって。
Google先生がすぐに教えてくれます。
いや、Coogleか。。
そういうことなんだよなぁ!
薬物は、本人が少しの興味を持ってしまえばすぐ、そこに。
手の届く位置に存在してしまっているのです。
このエピソードでは、男は結局、使用しないままに捕まってしまいます。
その時に草壁が男にかける言葉が印象的。
使う前に捕まってしまったこと。
それを心底「幸運だった」と語るのです。
このシーンに、薬物の依存性の怖さが集約されている気がします。
さて、評価は?
売る人、買う人。
前科もち。
薬物から立ち直ろうとしている人。
あらゆる立場の人間のエピソードで構成されています。
それでもまだ物語は序盤といった様相。
これからどんどんとディープになっていく予感。
捜査官、草壁には薬物にまつわる悲しい過去もある様子。
それも今後、明らかになっていくでしょう。
ノンフィクション的なアプローチながら、あくまでも漫画的。
サクサクと読み進めてしまいます。
大げさに描くのではなく。
ただ真摯に、淡々と、リアルに描く。
だからこそ、伝わる怖さがあります。
若い人にこそ読んで欲しい【星8つ】でオススメです。
薬物犯罪への興味を断つであろう、この内容。
高校の図書館に置いてみてはどうだろう?
【その他の 鈴木マサカズ 作品】
「子供を殺してください」という親たち
原作:押川剛
(2017〜)
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