No.345
カテゴリ:ドラマ・サスペンス
オススメ度8 ★★★★★★★★☆☆
著者:押見修造
出版社: 小学館
発売日:2017/9/8(1巻)
巻数:1巻以下続刊
「ママに抱きしめさせて。」
今度のテーマは「毒親」ですと?
これは読まずにおれますまい!
「惡の華」「ハピネス」「ぼくは麻理のなか」など怪作をいくつも送り出し、鬼才と称される押見修造先生の最新作。
それがこの「血の轍」です。
あらすじ
母・静子からたっぷりの愛情を注がれ、平穏な日常を送る中学二年生の長部静一。
しかし、ある夏の日、その穏やかな家庭は激変する…!?
ざわざわするわぁ。
心のひだの気持ち悪い所を。
絶妙に震わせる。
これが、鬼才と称される所以。
人間の持つ二面性、暗く陰鬱な裏側。
そして秘めた静かな狂気。
生々しい「負の感情」を描きます。
何も起こっていない幸せな日常風景のはずなのに。
ふとした1カットに目が釘付けになる。
登場人物の目、表情にぞくりとしてしまう。
さすがだ。
1話目からずっとぞわぞわしっ放し。
何かが起こりそう。
でも起こらない。
幸せな日常の描写。
暗く嫌な予感がじわじわ染み出してくる
でも、まだ。
何も起こらない。
引っ張る。
引っ張る。
何も起こらない。
引っ張って、引っ張って、引っ張って。
1巻の最後にきて。
ええええ!??
やっぱりか。
怖いのは、いつも生身の人間です。
轍(わだち)な人たち。
長部静一。
やや控えめながらも普通の中学二年生男子。
長部静子。
美しい母。過保護ともいえるほど静一に世話を焼く。
しげる。
父方の従兄弟。
静一の家によく遊びに来る。
吹石さん。
静一が密かに好意を寄せるクラスメイト。
静かな狂気。
母・静子というネーミング。
静一という息子の名前。
「静」子の「一」番…!?
深読みしてしまいます。
静かに、深く。
狂気は潜む。
綺麗で美しい母。
少し過保護に見えるものの、息子からすれば自慢できる部類の母となるはず。
しかし、そうじゃない。
息子に向けられる仄暗く淫靡な執着。
じわりじわりと漏れ出してくる。
これは怖いわ。
一見すれば、この上ないほど幸せな家族。
あれ?
でも、そうじゃない!?
読者は。
この家族の虚像の崩壊する様をじっと横で見させられているかのような。
そんな気味悪さと居心地の悪さを感じるはず。
これなんだよなぁ。
そして事件は起こる。
仲の良い親族一同でのハイキング。
祖父母と義姉一家と静一家族。
よくある夏の風景。
な、はずが…。
なんで、こんなに気持ち悪いんだ!?
その息子に若干いじられている息子・静一。
いつも過保護と揶揄する義姉。
そんなメンバーでのハイキング。
もう、不穏な空気がぷんぷん。
悪い予感しかしねぇ。
そして、ついに!!
1巻の巻末で何が起こるのか。
それは是非、本編でお確かめ下さい。
さて、評価は?
「惡の華」「ハピネス」「ぼくは麻理のなか」と押見作品を読んできました。
その中で1巻での「ひきつけられ度」はナンバーワン!
とにかく怖面白い。
今後、どれほど母・静子の狂気、毒親っぷりが描かれるのか。
先が気になります。
傑作の予感がする、この1巻。
まずは【星8つ】でオススメです。
2巻を読んでみた
ますますキモ怖い。
1巻の衝撃のラストから、引き続いてのシーン。
罪を犯した母。
それを目撃しながら、追従した息子。
そこに芽生えた歪な信頼関係。
極力セリフを入れない。
人物の表情だけで読ませます。
まさに顔芸。
その微妙な表情の変化の描写が素晴らしい。
ただ、あまりに顔のアップの大コマが多いため、物語の進行が遅め。
親子の情を超えるのか?
薄々予感はあったものの…。
やっぱり、こっちいくの!?
というのが正直な感想。
もう少し息子の静一には、母に翻弄される常識人としての立ち位置をキープして欲しかった。
あとは淫眉な闇に堕ちていくだけやん。
どこまで描くのだろう。。
相当にキモいです、この2巻。
でも、もう目が離せない。
鳥肌を立てながらも、次巻が待ち遠しい。
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