No.205
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆著者:穂積
出版社: 小学館
発売日:2016/12/19(1巻)
巻数:1巻以下続刊
「俺は生涯お前の友でいよう。」
繊細な表現で透明感ある作品を描き続ける穂積先生の新作が始まりました。
「チェロの音が紡ぐ、天才と凡才の物語 」の煽り文。
気になるに決まってる!
それがこの「僕のジョバンニ」です。
あらすじ
海難事故に遭い、暗い海原を漂い、死の淵にあった郁未。
彼を岸まで導いたのは、鉄雄が弾くチェロの”音色”だった–。
鉄雄の家で暮らすようになった郁未。
鉄雄がチェロを教え始めたことで、少年たちの未来が大きく動き始める…。
穂積作品には油断ができない。
すぐ心を痛くさせてくるから。
今回もそうなりそうな予感がプンプンするぞ。
二人の少年の友情。
執着とも言えるほどの一方的な愛。
壊れそうなガラスのような絆。
でもそれが美しい。
でも。
でもね。
決してBLではない。
こんな登場人物。
鉄雄。
チェロ奏者を志す少年。
東京のコンクールで賞を取るほどの腕前。
郁未。
海難事故に遭い、母親を亡くす。
身寄りがなかったため、鉄雄の家に引き取られることになる。
深いトラウマを抱えながらも、鉄雄にだけは心を開いてゆく。
鉄雄の兄・哲郎。
チェロ奏者を志していたが今は止めている。
何かワケありのご様子。
鉄雄を全面的にバックアップしている。
百合子。
世界的チェリスト。
鉄雄の死んだ祖父の知り合いで鉄雄兄弟のかつての師匠。
鉄雄はなぜか彼女を避けている。
これは友情か、それとも…?
最初にも書きました。
これは決してBL(ボーイズラブ)ではないと。
でも明らかに。
ボーイ・ミーツ・ボーイのお話。
郁未は海で溺れ死地をさまよった時に、鉄雄の弾いていたチェロの音に導かれるように海岸へ辿り着きます。
そして音の主が鉄雄だと知った時から、献身ともとれるほどの友情を鉄雄に捧げます。
鉄雄の大好きな曲がチェロの二挺で弾く曲だと知ると、相手役となるべくチェロの練習を始めます。
ひたすら鉄雄と合わせるためだけに。
そしてメキメキと上達していくわけですが…。
これが後に皮肉な運命を辿りそうです。
本作紹介文に書かれてある「チェロの音が紡ぐ、天才と凡才の物語 」。
おそらく、これ。
天才の方が郁未なんですよね。。
この後二人の関係はどうなってゆくのか?
ジョバンニって誰?
タイトルの「僕のジョバンニ」。
作中に出てくるジョバンニといえば。
鉄雄が神と仰ぐチェロ奏者・ジョバンニ・バッツォーニ。
あたかも実在する人物のように描かれていますが…。
これ、架空の人物です。
世界的なチェロ奏者にジョバンニ・バッツォーニなんて人物はいません。
気になって散々ググってみましたが出てきません。
ジョバンニ・バッツォーニが演奏し、鉄雄が何度もビデオで見たという楽曲。
鉄雄と郁未が二人で弾こうと誓うあの曲。
チェロ奏者二人で奏でる「チェロよ叫べ」。
こんな曲もありません。
でも、実は!
ジョヴァンニ・ソッリマというチェロ奏者は実在します。
そしてその人物が作曲した二挺のチェロ用の楽曲もあります。
タイトルは「チェロよ歌え!」
おそらくこれがモデルではないかと。
じゃぁ、なぜ?
ジョバンニのくだりに架空の名前を使うんだ?
「チェロよ叫べ」も「チェロよ歌え!」のままでもいいんじゃ?
タイトルに「僕のジョバンニ」となっていれば、嫌でもこの「ジョバンニ」は作中のジョバンニ・バッツォーニのことだと考えますよね?
これが実在する人物名だと、あまりに特定されすぎて嫌だったのかも。
だからこそ架空の人物にしておきたいのかな?
う~む…。
どうもミスリードを誘われてる気がする。
毎回「おおっと!」という仕掛けを作中に仕掛けてくる穂積先生のこと。
何か意味があるはず…。
ということで考えました。
あくまで予想です。
このジョバンニの意味。
あの「銀河鉄道の夜」のジョバンニをかけてるんじゃないかと。
宮沢賢治作。
あまりにも有名な作品ですので、細かいあらすじ等は割愛。
色々な解釈のある「銀河鉄道の夜」ですが。
これはジョバンニとカムパネルラの友情と決別を書いたお話でもあります。
悲しい別れを連想させます。
ジョバンニはどっち?
鉄雄と郁未。
どちらがジョバンニで、カムパネルラなんでしょう?
僕の予想は。
鉄雄がジョバンニ。
郁未がカムパネルラ。
実はジョバンニのお父さんは漁師なんです。
ちなみに鉄雄の父も「漁師」という設定。
カムパネルラの母親も亡くなっています。
郁未のお母さんも冒頭で亡くなっています。
この符号の一致、やはり!
ということは…。
カムパネルラの最期は…。
カムパネルラに助けられるザネリ役は…?
う~む。
ここまでにしておきます。
まったく関係がないかもしれません。
外してたらゴメンなさい(笑)
さて、評価は?
まだまだ、物語は始まったばかり。
郁未が天才の片鱗を見せつけ、二人の友情に不穏なさざなみが立ったところで1巻は終わります。
これから二人の友情は?
愛になるのか憎しみとなっていくのか?
目が離せない展開です。
まずはオススメの【星7つ】とさせて頂きます。
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式の前日
(2012)
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