No.306
カテゴリ:ドラマ・ヒューマン
オススメ度7 ★★★★★★★☆☆☆
著者:魚戸おさむ
出版社: 小学館
発売日:2017/5/30(1巻)
巻数:1巻以下続刊
「穏やかな気持ちで亡くなっていけるといいのになぁ」
先日、フリーアナウンサーの小林麻央さんがお亡くなりになりました。
ステージ4の乳癌と診断され、およそ1年の闘病。
最期はご自宅でご家族に見守られながら息を引き取られました。
そして麻央さんの死は、日本中に「看取ること」の意味を投げかけました。
いかに「穏やかに逝くか」。
にわかに注目を集め始めた終末医療を描いたこの作品。
それがこの「はっぴーえんど」です。
あらすじ
臨終の場に自宅を選んだ患者と向き合う「看取りの医師」天道陽。
人生の締めを前に、人はそれぞれの煌めきを放つ。
天道の目を通して、在宅医療の今を問う――。
人生の最期を自宅で迎えることのできる人。
どれくらいいるか知っていますか?
なんと!
1割しかいないとの統計があります。
8割の人たちが最期は病院で息を引き取っているのです。
これほど「病院で亡くなる人」が多いのは日本しかありません。
それなのに。
「終末期における療養をどこで受けたいか?」
という問いには、6割以上の人が「自宅」と答えているのです。
僕もその6割の一人。
ずっと将来。
もし、治らないような病気になってしまったら。
最期は自宅で迎えたい。
と奥さんに言ってます。
あ、まだ全然元気ですよ。
あくまで遠い未来のお話としてです。
きっと。
中年以上の世代なら。
今回の麻央さんの件で「最期の迎え方」を考えたに違いありません。
これから高齢者がどんどんと増えて行く日本。
病院は一杯でベッドも足りなくなる時代が来ます。
これから直面するであろう医療問題。
病院中心の医療から、生活を中心にした医療へ。
そんな転換が始まっていると、この作品は語りかけます。
正統派だからこそ伝わるストレートな表現。
実に興味深い内容です。
はっぴーえんどな人たち。
天道陽(あさひ)。
「あさひ在宅診療所」の院長。
元は総合病院の優秀な医師だったが、妻の死をきっかけに緩和治療の専門となる。
吉永小百合。
「あさひ在宅診療所」の看護師。
天道理恵。
乳癌で亡くなる。
彼女の最期の姿が、夫である天道陽のその後の医師人生を大きく変えていく。
はっぴーえんど、とは?
看取る側、看取られる側。
家族それぞれの形が「看取りの医師」天道陽の目を通して描かれます。
この作品では奇跡は起きません。
主人公は、死を迎えるであろう患者の、その最期に一瞬の輝きを取り戻すため奔走します。
生かすためではなく。
穏やかに亡くなるため。
ハッピーなエンドを迎えるため。
それを可能にするのは医療ではなく。
家族の絆であると。
そうだよなぁ。
まさに正統派のヒューマンドラマ。
でも、それこそがやはり真実なのかもしれませんね。
余談ですが。
タイトルの「はっぴーえんど」。
ついつい、あの「はっぴぃえんど」を連想してしまいます。
古いバンドですが、あまりにも有名なので若い世代でもご存知の方も多いかと。
表紙に注目してみます。
著者のクレジットの横に小さく「監修」の文字。
「大瀧詠一」って読んでました(笑)
*知らない方のために。
大瀧詠一氏は「はっぴぃえんど」のボーカルです。
そうか!
バンド名をタイトルに使ったから大瀧さんの監修がいるのか!
なんて。
したり顔で「うんうん」言ってた数十分前の自分が恥ずかしすぎるw
ズームイン!!
よく見ると…。
⬆︎ ハイ、ここ。
大津秀一氏。
全然関係ねぇ(笑)
ちょ!!
大瀧詠一
大津秀一
なんか字面が似てるしい。
なんか字が小さいからぁ!
さて、評価は?
「家栽の人」「玄米せんせいの弁当箱」など。
これまでいくつもヒューマンドラマな作品を描いてきた魚戸先生。
今作も安心の優しいタッチ。
とても読みやすく。
専門的な医療漫画ではなく「看取り」をテーマにして家族の絆を描きます。
感動系が好きな方にはどストライクかと。
読むと家族に優しく接したくなるこの作品。
「星7つ」でオススメします!
【その他の魚戸おさむ作品】
玄米せんせいの弁当箱 全10巻
脚本:北原雅紀
(2008〜2011)
イリヤッド~入矢堂見聞録 全15巻
原作:東周斎雅楽
(2002〜2007)