No.305
カテゴリ:ドラマ・サスペンス
オススメ度4 ★★★★☆☆☆☆☆☆
著者:田中 基
出版社: 小学館
発売日:2017/4/19(1巻)
巻数:1巻完結
「さぁもっと堕ちろよ」
おお!
なんとも「そそる」表紙。
内容がとっても気になります。
幻想的で猟奇的な文学ロマンの匂いを感じます。
ということで読んでみました。
それがこの「悪童文庫」です。
あらすじ
ある猟奇小説を執筆したきりその界隈から姿をくらました小説家、鳥羽山真理。
新米編集者・秋里こだまは、ある日、謎の古書店「悪童文庫」にたどり着く。
そこには、あの鳥羽山真理が座っていた。
二人が出会い、物語は再び動き出す…。
ううむ。
ちょっと期待をしすぎたかも。
表紙の怪しさから「江戸川乱歩」や「夢野久作」のような、幻想怪奇小説的な内容を期待して読み始めました。
で、読んでみると。
なんとも薄味。
ビーフシチューを期待していたお腹にお吸い物を出されたような。
うおおおい!!
もっと味の濃いものを!
腹にずっしりくるのを食べたいのにぃ!
みたいな。
わかりにくい例えですみません。
文才ねぇ(笑)
悪童文庫な人たち。
鳥羽山真理。
謎の小説家。ふらりと現れ作品を発表し注目を浴びたが、表舞台から姿を消す。
秋里こだま。
鳥羽山の小説をこよなく愛する新米編集者。
偶然「悪童文庫」を訪れる。
要するにお悩み解決モノ。
すっごく仰々しく描いてますが。
内容はハッキリ言って「お悩み解決モノ」。
主人公の小説家・鳥羽山と編集者・秋里を語り部に、毎回違う闇を抱えた人物が出てくるオムニバスストーリー。
心に悩み(闇)を抱えた者が、主人公の導きによってその内面をさらけ出していく、という展開。
とはいえ。
基本、主人公は誰かの悩みを解決しようとはしていません。
人が悩み、葛藤し、愛し、執着し、憎み、恐れる。
その心の深淵にある様々な感情を覗き見たい。
一人の人間が闇に堕ちてゆく様を見ていたい。
言ってしまえば「小説のネタ」を探しているだけなのです。
それが結果、人助けになりお悩み解決になっていくというオチ。
変な人?
そして主人公の小説家。
モラルの欠如した変人かと思いきや。
意外といい人(笑)
著者の人間性でしょうか。
なんだか精いっぱい真面目に「変な人」を描こうとしている、そんな印象を持ちました。
「うわぁ、この著者頭おかしい!!」
と思うってしまうような、危なさは滲み出ていません。
物語の素材も作画も良いのですが「陰影」がないと言いましょうか。
人間の深淵を描くというには、少し物足りないか。
さて、評価は?
表紙からも推察できるように。
作画はとても雰囲気があります。
最初はシリアス程度だった内容が、中盤以降は、よりダークに舵を切っています。
それでも「おどろどろしい」とまで全く行かない。
なんともライト。
物語の素材としてはいいのになぁ。
作画もいいのになぁ。
なんだか刺激が足りないなぁ、の【星4つ】です。
次回作に期待したい。